白豚饅頭日記

2017-05-13 名前はカッコイイんだが・・・

[]イギリスミサイル

GW連休明けから激務で全く更新できませんでしたが、今日と明日はお休みなので、今日は少し前から書きたいなぁってボンヤリ練っていたネタを。毎度の英国ミリネタで、今回はミサイル編。

まずは空対空ミサイルから。

空対空ミサイルの元祖はナチス・ドイツが第2次世界大戦時に開発したルールシュタールX-4と言われていますが、イギリス空軍(及び海軍航空隊)が開発を始めたのは戦後の1949年、次第に脅威を増していったソ連空軍の大型爆撃機ソ連領に不時着したアメリカ戦略爆撃機B-29をコピーしたTu-4)迎撃を企図した物で、アメリカAIM-7スパローAIM-9サイドワインダーより4年遅れの開発スタートでした。

一番最初に実用化した空対空ミサイルフェアリー社が開発した

「ファイアフラッシュ」

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です。「え?ナニこの変なミサイル」って思わないように!ミサイル本体の両端に取り付けられているのが推進用のブースターで、ミサイル本体には推進能力はありません。理由は当時の電子技術では母機からの誘導の際にロケットモーターの噴煙で誘導電波が届かなくなるのではないか?と考えられていたからで、司令電波の受信部をモーターから切り離した方が良いだろうと言う判断から。でも、実際にはそんな事はなく、かえって2つのブースターのどちらかが故障したら誘導できないとか、空気抵抗が多すぎて速度が遅いとか問題山積みになってしまいました。誘導方式はビームライディング方式と呼ばれるレーダーからの誘導用ガイドビームに乗って飛翔する方式で、誘導そのものをレーダーに大きく依存している為、ガイドビームから外れると誘導不能となったり、母機側も誘導が難しい(敵機が機動する度にガイドビームを調整しなければならない為、より高速の物体を捕捉し続ける事は不可能に近い)事、命中精度が悪い(遠い距離の目標となれば電波拡散してしまい目標から逸れてしまう可能性が高い)事、何より整備性が最悪レベルで悪い事から「高速で飛行するジェット爆撃機の迎撃は不可能」と判断され、調達は短期打ち切りというトホホな事に。

より現実的な設計で本格採用されたのがデ・ハビラント社が開発した

「ファイアストリーク

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になります。誘導方式は手堅い赤外線探知方式、近接信管は光学式を採用する事で、目標を確実に撃破する事を念頭に開発されました。特徴的な八角錐型ノーズコーンに赤外線探知装置(いわゆるシーカー)が備えられており、探知能力を上げる為に無水アンモニアでシーカー内を冷却するようになっています。サイドワインダーと比べて直径は太く、全長も長い割に重量が重いので、射程はそれほど大きな差はありませんが、弾頭に榴弾が装填されているので破壊力は高かったと思われます。これは大型爆撃機迎撃を主務とした為でしょう。1955年空軍が採用を決めて1年後には海軍も採用、イギリス戦闘機の主力武装として配備されます。

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写真はファイアストリークを装備した空軍ライトニング海軍ではシーヴィクセンが主要装備として採用しています。ファイアストリークは誘導部を改良したMk.2、主翼を改良し機動性を改善したMk.3と発展しました。ただ、推進剤に猛毒の素材を使った為に整備が大変だった事と、シーカーの能力に問題があって雲の中では使用できなかった

「そしてイギリスの冬に晴れた日など1日もないという事」

が最大の問題点でした。ファイアストリークは攻撃方向が限定(ほぼ相手の真後ろ)されていたので、より幅広い攻撃が可能な様に改良されたのが

「レッドトップ」

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になります。誘導方式はファイアストリークと同じ赤外線探知方式ですが、目標捕捉時にレーダーと連動することで射角を広く取る事が可能となり、限定的ではありますが全方位攻撃能力を取得していました。これはアメリカAIM-9Lより一歩先んじて採用された技術ですが、悪名高き「1957国防白書」の影響で予算削減となり完全な全方位攻撃を得る事はできずに開発終了となっています。空軍ではライトニング海軍ではシーヴィクセンが引き続いて装備していますが、やはり赤外線探知方式では十分な目標捕捉能力や射程に限界がある為、誘導方式をセミ・アクティブレーダー誘導に変更したMk.2の開発が行われました。しかし、レーダーとシーカーを連動させる事が上手くいかずに開発中止、ここで一旦「イギリス純正の空対空ミサイル」の系譜は途絶える事になります。

ライトニングやシーヴィクセンの後継機として採用されたアメリカ製のファントムデフォルトで強力なミサイルが装備されていました。AIM-7スパローAIM-9サイドワインダーです。サイドワインダーは極めて簡便な構造と軽量で整備性も良好な事から、シミターやバッカニアやハリアーなどの攻撃機では自衛用に以前から採用されていましたが、戦闘機用としてはファントムから採用されました。スパローイギリスが喉から手が出る程欲しかったレーダー誘導式中射程ミサイルでしたが、誘導方式の問題(セミアクティブレーダー誘導方式は、母機のレーダーが発するレーダー波の反射を目標としてシーカーが探知するが、母機側は常にレーダー波を目標に向かって照射し続けなければならず、回避機動などが難しかった)があり、その改良が常に問題化していました。イギリスではシーカーの受信部を改良する事で母機側の負担を少なくし、妨害にも比較的強い改良型を独自開発します。それが

「スカイフラッシュ」

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空対空ミサイル。シーカーを逆モノパルス受信型に変更した事で、母機側はロックオン時のみ継続波(レーダー波には大まかに捜索用の探知波と照準用の継続波の2つがあり、必要に応じて切り替えながら照射する)を照射し、誘導中は探知波だけで誘導可能になった事で機動の制限が大幅に緩和されています。また、低空目標に対して(特に巡航ミサイル)の攻撃能力も向上しました。これらの改良は本家アメリカでも行われますが、イギリスの方が一歩先に改良を行っていますね。

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写真はイギリス空軍ファントムFGR.2。スカイフラッシュを胴体下面に4発半埋め込み式で装備、主翼にはサイドワインダーを4発、胴体センターには機関砲ポッドとフル装備状態。

スカイフラッシュはファントムと、その後継のトーネードF.3にも装備された他、スウェーデン空軍の迎撃戦闘機ビゲン」の中射程ミサイルとしても採用され輸出も行われました。性能的に優秀だった事から、シーカーをアクティブレーダー誘導方式に変えて「打ちっぱなし能力」を持たせる「アクティブ・スカイフラッシュ」計画も検討されましたが、アメリカが最新の中射程ミサイルAMRAAM」の供与を始めた事で開発中止となっています。トーネードF.3やその後継のタイフーンFGR.4は次世代ミサイルまでの「中継ぎ」としてAMRAAMを採用。その次世代ミサイル

ミーティア

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ヨーロッパの主要国(イギリスドイツフランスイタリア)が共同開発したミサイルで、誘導はアクティブレーダー誘導方式、推進系にはダクテッド・ロケット(空気取り入れ口付ロケットエンジン)を採用しマッハ4以上で飛翔、AMRAAMの3倍を誇る回避不能ゾーン(言い換えるなら絶対必中領域)を持ち、最新型ミサイルの標準ともいうべき「発射後ロックオン(発射した後で目標をロックオンして追尾する機能)」も当然備えています。このミーティアをベースに日本とイギリスF-35用に共同開発しているのが「JNAAM」で、昨年には第1次研究が成功し現在は第2次研究に移行。この計画が突破口となって、次世代戦闘機研究も日英共同で現在行われています。

また「R-73(AA-11「アーチャー」)ショック」を受けて近接格闘専用ミサイルとして開発された「ASRAAM」がありますが、これはまああんまりパッとしないので今回は省略。

空対地ミサイルでもなかなかイカすネーミングのモノがありますので少しだけ紹介

「ブルースティール」

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核弾頭を内蔵した空対地巡行ミサイルで、バルカンビクターの2大爆撃機が装備しました。燃料がチョーヤバく、漏れ出すと簡単に引火するデンジャラスな代物だったので、ポラリス潜水艦発射弾道ミサイルアメリカから導入される事が決まるとすぐに退役しています。

「ストームシャドウ」

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イギリス最新の空中発射型巡行ミサイルで、フランスとの共同開発。核弾頭は搭載していませんが、滑走路破壊用爆弾や大型弾頭などスタンドオフで攻撃できる点が特徴。戦闘機サイズでも運用可能なコンパクトな巡行ミサイルで、イギリス空軍ではタイフーンFGR.4やトーネードGR.4で使用中。

どうです、イギリス人名前のセンスはなかなかイカすでしょう?

中身がトホホなモノも多々ありますが、そこがまた「英国面」の素晴らしさだったりします♪

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