20120206 Mon
20120201 Wed
■[生活]I Just Wasn't Made for These Times.
昼まで透析。朝ちょっとした用事でバタバタしたので焦ったが、まあまあ順調に時間通り終了。帰宅してから床屋に行って毛先揃えて顔をあたってもらった。
一息つきながらネットを確認していると、朝出掛けたあとに増田まもる先生から受賞者は打ち合わせがあるので開場より三十分早く来るべしとメールが入っているのを発見。贈賞式ではろくに何も食べられまいと予想していたので何か食べていこうと思っていたのだがわたわたして即出発、さらに表参道で降りてから軽く方向を迷ったりしたので、結局少し遅れ気味でホテルに辿り着いたのだった。もうそこからはダメな国からダメダメを布教に来たダメの伝道師みたいな状態だった。
控え室では瀬名秀明SF作家クラブ会長と、事務局長の増田先生、それに受賞仲間の忍澤勉さん夫妻がいらっしゃられ、増田先生はとても忙しくされて席を温める暇もない感じだったので、主に瀬名会長にいろいろと優しくしてもらったりしていると、同時開催の著作刊行三百冊記念という途方もないお祝いの主賓であられる田中光二さんがお越しになり、そのダンディなたたずまいにもう頭の中は幻覚の地平線や我が赴くは青き大地なんかが走馬灯のように過ぎ去っていく。いろいろなお話を窺い、忍澤さんが車の雑誌の編集者時代に田中さんをアウディに乗せて運転したことがあるという思い出話を披露されて、おおみんな業界人!と素朴にミーハーしていたのだった。田中光二さんもとても優しい方で私たち二人の書いた評論についてもいろいろ聞いて下さった。
で、開場。そのあいだのドサクサに新城カズマさんに挨拶する。「G+では何度か……」「ええ、リアルでははじめましてというやつですか」などとラフに言葉を交していただいて非常にありがたかった。SFマガジンの清水編集長とも挨拶、および掲載のための改稿のスケジュールなどについてお話を窺う。控え室でその話になったとき、四月売りの六月号ではないかということだったのだが、編集長は三月売りの五月号を予定しているとのこと。そういうことでお願いし、後ほど担当氏と打ち合わせして下さいと言われる。
そんなこんなでともかくまあ一応頼りないが主賓ということになるので(もちろん頼りないのは私だけ)、関係者席の前のほうにどんどん案内されて言われるがままに家人、忍澤さん夫妻と並んで座る。そのうち田中光二さんも着席されて、ややざわつきながらもスタート。
最初に瀬名会長による挨拶と式次第の説明、さらには評論賞の選考委員の交代が告げられ、選考委員長の荒巻義雄さんは健康状態が優れず次回からは辞退されるので是非贈賞式に参加したかったのだが、北海道からくるのがどうしても難しく断念したと語られ、あと小谷真理さんと瀬名秀明さんが今回で任期終了。代りに委員長に川又千秋さん、選考委員に図子慧さんが加わると発表された。続いて新城カズマさんによる選評。基本的にコメントスピーチは短めに、という申し渡しがあって、やや急ぎ足で三つの候補作について述べられる。
そんでもって、賞状の授与、さらに受賞スピーチ、となるのだが、なにせダメ人間なのであがりまくりとちりまくり、惨憺たる醜態を晒して壇上を降りたのだった。まあ喋った内容は、アポロが月に行った年に生まれ、小松左京さんがプロデュースした大阪万博に赤ん坊で行った私は、いわば無意識からSFにどっぷり浸かってきた人間であり、そういう私にとってSFの最大の醍醐味は、自明だと思えたものの枠組みが解体される、価値観の転倒とそれによって齎される自由の感覚にこそある。上田早夕里さんの『華竜の宮』という作品で印象的な台詞に、これまで地球上のさまざまな生物が絶滅してきたのに、人間だけが生きのびようなんて虫のいい話だ」というような認識が語られる場面があり、私はこれぞSFというものだと思い、そのことをストレートに書いた。受賞してとっても嬉しいありがとうございました。というようなものである(もっとぐだぐだになってたが)。
一応「五分は喋って」と言われていたにもかかわらずおそらくは三分ほどで壇上から降りてしまった私の煽りを食らい、忍澤さんも緊張されてしまったのか逆に用意してきた紙を読みながら少し話が長くなって、田中光二さんから「10分くらい経ったんじゃないか」などと軽口に仰られてそれが聞こえたのか最後は駆け足で終られていて、ちょっと迷惑をかけてしまったかなあと反省した。
その後、ふたたび壇上に招かれ上田早夕里さんから届いた祝辞が読み上げられる。大変素晴らしい立派な内容で、ちょっとぐだぐだな雰囲気が一気に引き締まった。これはご期待に少しでも添えるようにがんばらなければならないなあと襟を正す思いであったことでした。花束の授与の後、田中光二さんのお祝いに移ってようやくお役御免かと思ったら、区切りのいいところで三人で写真を、と言われてまたも壇上に。なぜああもみな写真が好きなのか。魂が吸い取られる気分だった。
ともかく式は歓談に移り、瀬名会長に「誰か紹介してほしい人はいる?」と聞かれたので筒井康隆先生に……とお願いすると快諾されて忍澤さんと連れ立ってご挨拶に窺う。筒井康隆先生は本当に筒井康隆先生の顔で、声で、喋り方で、いいしれない感動に襲われた。「君はどれくらいから読んだのかね」と御下問あったので、リアルタイムでは『旅のラゴス』だが、最初に読んだのは星新一の文庫の解説だったこと、そこから東海道戦争を始め、完結したばかりの新潮社の全集もすべて読んだことなどを緊張しまくりながら話させていただいた。筒井康隆先生は、かたわらの編集者のIさんに「上田早夕里(さん)はけしからんやつだな、上京しないし、スピーチでぜんぶ美味しいとこを攫っていきおって」と楽しそうに、まさに筒井康隆!という感じで仰られ、感動のあまり眩暈がしそうになった。そうしているうちにどなたかが記念写真を撮ろうと仰られ、隣に誰がいるかもわからない舞い上がった状態で写していただいた。
よろよろ、と軽くその場を離れると、評論賞チームの先輩である宮野由梨香さんと、次回から選考委員を務められることがさきほど発表された図子慧さんが声をかけて下さって、いろいろと楽しくお話を窺う。
それから放置してしまっていたお祝いに来てくれたAこと安藤魚晴、東條槇生さん、そして間瀬純子さんと挨拶。間瀬さんは小松左京マガジンの乙部順子さんをご紹介下さって、乙部さんからは小松左京マガジンの第44号をいただいた上、「是非書いて下さいね」とお言葉をいただいた。他にも科学魔界の立花眞奈美さんから「S-Fファンジン」をいただく。続いて非常に疲れた様子の岡和田晃さんが、何故かすでに家人などと歓談しているのに後から加わり、連載第二回が掲載されている「未来」の二月号をいただく。それと、岡和田さんからイラストレーターで小説も執筆されているという小珠泰之介さんにご紹介いただく。大変ありがたいことにネットでの私の活動をご存知でいらっしゃってその上好意的なコメントまで下さったので感激する。岡和田さんはなかなかハードな状況が続いているようでわりとやさぐれた印象。もっとも、未来での連載他乗りに乗ってる感じもするので、あまり心配はしない。
ふと見ると人影の向うに永井豪先生がいらっしゃられ、あーあーと声にならない声を出していると「ファンですっていってくりゃいいじゃん」という無責任な安藤の声に煽られ、すたたたたと近づいて、「あの、子供の頃から大ファンなんです!」と馬鹿みたいに言うと、ああ、それはありがとう、とすっと掌を差し出されて、握手していただいた。とても柔らかい、繊細な表情の掌で、なるほどこの指からあれらの作品が生み出されたのかと胸がいっぱいになって、作品のことなど一言も言えずに挨拶を終えてしまい、すぐお隣にいらしたのが山田正紀さんで、うわあうわあと思いながらご挨拶し、先日の北海道SF大全で短いエッセーを書かせていただきましたと申し述べると、ああそう、読むよ、ありがとうと軽い調子でお答えになって下さって、弥勒戦争2は本当に執筆されるんですか?というやや不躾な質問にも快く「書きたいと思ってます」と頷かれたのだった。
他にも有名人と言うか、憧れの作家さんがたがいっぱいいて半ば呆然としていると、堀晃さんがわざわざ声をかけて下さり、同時代の日本人作家についてきちんと論じたいという話を聞いていただいた。堀さんに限らず、この日挨拶させていただいた作家、批評家の先生がたはみな一様に私がこれから何を書こうと思っているかという話に興味を向けて下さって、思っていた以上にいろいろなことを嬉しがって話してしまったのだが、いやあ優しくしてくれて本当にありがとうございましたという感じである。
壇上では筒井康隆さんのスピーチ。あのお声で例によって芝居がかった飄々とした口調で、同世代の作家がどんどん亡くなっていく。井上ひさしや小松左京、残っているのは純文学では大江健三郎と古井由吉くらいで、SFでは第一世代がまだ少し残っている。が、亡くなったものはみな何かを教訓として残していってくれる。星新一さんは睡眠薬とウィスキーを一緒に飲んじゃいけないと教えてくれた。小松左京さんは煙草を吸い過ぎると命を縮めると教えて、まあいまでも私は吸っていますがね、まっそれはともかくみなさんこれ以上死なないでいただきたい。特に第二世代はもっとどんどんがんばってほしい、とのブラック・ユーモアたっぷりのスピーチをなされ、その後壇上に上がる川又千秋さんや夢枕獏さんなどがみな「生きのびよう!」と言い合うという面白い流れができていた。
堀さんの後から谷甲州さんが現れ、掘さんに話しかけられて、私もご挨拶を、と思うもののきっかけがつかめずに壇上に行かれてしまい、ふう、とためいきをついていると新井素子さんに声をかけていただき、中学生の頃から「素子姫」は憧れでしたと積年の想いを伝えることができた。
それからG+で何度もコメントを下さった林譲治さんにもご挨拶いただく。作品のイメージからもっとずっとガタイのいい人を想像していたので、意外と飄然としたたたずまいでやや戸惑ってしまった。もっときちんとお話しできたら良かったのだが、そう、この頃もうすでに立ちっぱがきつくなっていたのだった。
そんなこんなで、二次会。
二次会では、奥のほうで間瀬さん、家人、東條さん、安藤君と一緒のボックスにつく。反対側の隣にひかわ玲子さんがいらっしゃられて、いろいろとお話を窺う、というか質問されたのだが、どうもうまく反応できず何度もきょとんとさせてしまい申し訳なかった。
間瀬さんと席を移動し、評論チームやNEOのメンバーなど、お互いに知っている人に紹介しあっていろんな人とお喋りしているうちに、あっという間に時間は過ぎて、お開きと相成り、地下鉄で十二時前に帰路についた。
いやあ醜態が晒したことはともかくまったくもって夢のような時間ではあった。
みなさまどうもありがとうございました。
