不安定だからこそ輝かしい、君と響きあう青春の日々 - 「U15's」

自分の好きな作品・作家の単行本は、言わずもがな嬉しい物。
更に、「こんな作品(集)が読んでみたい!」という想いが叶った時の嬉しさは、計り知れない。
その想いが叶った今回は、「U15's」(MATSUDA98)の話。
U15’s (CR COMICS)
U15's」は、「ほのかLv.アップ!」や「鉄道むすめ〜Terminal Memory〜」作者:MATSUDA98初のオリジナル短編集
コミックラッシュ』に掲載された作品を中心に、『コミック百合姫S』,『季刊GELATIN』,同人誌にて発表した作品など合計10編を収録。
タイトル「U15's」(アンダーフィフティーンズ)の通り、ほぼ全編、15歳以下の男女が織り成す青春の一幕!


帯の「U15アンダーフィフティーの少女達が紡ぐ、ピュアラブストーリー……。」の言葉に偽りなし。
一話一話が眩しくて、キラキラで、赤面ニヤニヤ胸キュンが止まらない。
そして、その「ピュアラブストーリー」の源となっているのは、作者の細かなコダワリ思春期故の不安定さだと思った。


例えば、表題作「U15's」&「ラストU15's」では、不安定な想いが繋がっていく
将来のアイドルを数多く排出する高校にて、アイドルの素質を見抜く能力はピカイチの柴。
柴の幼馴染で、既にアイドルとしても活躍中、圧倒的な実力を見せる能登谷ちえ。
しかし、そんな高い能力を有する二人にも、等しくすれ違いや壁は訪れる。
自分がアイドル候補生の写真を撮る理由・原点とは?
自分がアイドルとして活動する理由・原点とは?
“君”を撮る理由
不安定な想いが繋がった時、自ずと答えは見えてくる。


例えば、「HotLine」では、不安定な想いに気付いていく
たまたま興味を持った動画配信を通じて、先輩と後輩のような関係となった同級生二人。
後輩の立場だった真篠杏は、あっという間に北郷を追い越し、人気配信者の仲間入り。
でも、先輩と後輩の関係が終わるに連れ、二人の楽しさは薄れて行く。
“君”との一時
どうして、以前より寂しくて、楽しさも減ってしまったのか?
その答えは凄くシンプルで、あとは本人達が気付くだけ。


例えば、「桃色吐息」では、不安定な想いが溢れ出す
ちどりが好きなあまみ、あまみが自分の事を好いているのを知っているちどり。
皆に優しいなら、自分も皆の中の一人でしかないのか?
自分の想いに気づいているからこそ、程々の距離を保っているのか?
あまみの不安定な想いは積もりに積もり、遂に溢れる事となる。
“君”へ溢れ出す想い
ちひろの本当の想いとは?今後の二人の関係とは?
確かなのは、本気でぶつかるからこそ、返って来る想いもまた本物という事。


子供から大人に移り変わる時期の、不安定さや未熟さ。
でも、だからこそ、“君”との一瞬一瞬がキラキラと輝く。
夢のように甘い雰囲気の中、世界が“君”で満ちていく。
“君”で満ちる世界
この不安定故のきらめきは、作者自身のあとがきでも触れられており、作者のコダワリの一部と言っても過言ではないはず。


ちなみに、作者の細かなコダワリは他にも盛り沢山。
そのコダワリも語られる各話直後のコメントは興味深さ&楽しさ満載。
作品本編を読み終わった後、コメントを読んで、より一層作品を味わえます。
個人的にも、ジュニアアイドルとグラビアアイドルは似て非なる存在だと信じています。


青春の日々は、不安定だからこそ、キラキラ・ドキドキ。
一話一話で赤面ニヤニヤしつつ、忘れかけていた大切な事を思い出した気がしたのでした。