25-11-2005 (Fri) 東京フィルメックス第七日(参加3日目)
■[映画]『アコード・ファイナル』

今日は有給休暇。まず、東京フィルメックスの『アコード・ファイナル』に行く。今回観る唯一の「映画大国スイス」特集のもの。私はこれまでダグラス・サークの映画を観たことがなく(『人生の幻影』は二回も観たのに)、このことは私の映画人生の汚点のひとつだった。この映画はイグナツィ・ローゼンクランツとの共同監督で、ダグラス・サークはノン・クレジットだが、ともあれ観ることができてめでたい。
映画はスイスを舞台に、アメリカ人の著名なヴァイオリニストが、音楽学校の入口を10番目に入った女性と結婚することを賭けるというもの。マネキンに化けて国境を通過したり、ラジオ放送の途中でレコードから生演奏に変わったり、主人公が偽名で入った音楽学校で本人のコンサートが開かれたりといった、偽者と本物をモチーフに繰り広げられるコメディである。軽快で無駄がなくて、文句なしに楽しめる映画だった。恋もあり、正義もあって、娯楽映画の王道という感じだ。
■[映画]『あひるを背負った少年』
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Meal MUJIで昼ごはんを食べて銀座をあちこちぶらぶらしたあと、再び東京フィルメックスへ。應亮監督の『あひるを背負った少年』を観る。
張國榮(レスリー・チャン)似(といっても美男を想像してはいけない)の少年が、都会へ出稼ぎに行ったまま帰らない父親を探しに行く話。そう聞くと、純朴な少年が旅の途中でいろいろな人に出会って助けられる、ほのぼの系映画を想像する。たしかにいろいろな人に出会って助けれらるのだが、彼らはみんな犯罪に関わっていたり犯罪に巻き込まれたりする。そもそも主人公が短気で暴力的で、ほとんど共感できない。父親を見つけてどうするのかは全然予測しないで観ていたら、少年のとった行動自体も、その描き方も衝撃的だった。父親を見つけるあたりから街に洪水が近づいてきて緊迫感が高まり、豪雨が降りはじめ、少年と父親との間にどんないきさつがあったかはすべて省略されて、いきなり事後のシーンになる。
少年は街へ向かうバスの中で早くも犯罪に出くわし、街での毎日はいつも犯罪や暴力と隣り合わせで、さらに洪水までやってきて、街中が強制避難させられる。それでは農村は平和なのかというとそんなことはなく、農民は借金を抱えて貧しく、工業団地ができるために村全員が移住させらようとしている。江澤民体制から胡錦濤体制への移行を告げるニュースも流れ、このストーリーには多分に象徴的意味があると思われる。
全員素人を使った低予算映画で、言葉はほとんど方言。中国でもこういう映画が増えてきたことは喜ばしい。ロングショットを多用した映像もなかなかよかった。舞台は四川省自貢市。川の中に沈んだ仏像の頭が出てきたが、実在するのなら行ってみたい。ちなみに、タイトルを見てどうやってあひるを背負うんだろうと思ったが、背負っているのは籠で、中にあひるが入っているだけだった。なぁーんだ。
上映後、應亮監督を迎えての質疑応答があり、ぜひとも聞きたかったが、次の時間が迫っていたので泣く泣く帰る。
■[映画]『簪』
![[映画]『簪』のブックマークコメント [映画]『簪』のブックマークコメント](http://r.hatena.ne.jp/images/popup.gif)
ニューキャッスルでカライライスをかきこんで、シネスイッチ銀座へ松竹110周年祭の『簪』を観に行く。『有りがたうさん』『簪』『按摩と女』。これが清水宏監督のベスト3だ。『有りがたうさん』と同様、家ではしょっちゅう見ているが、映画館では二度目。シーンも台詞もほとんど憶えているが、何度観ても面白く、至福の70分であった。
これまでのプリントは部分的に欠落しているので、ニュープリントにわずかな期待を寄せていた。しかし大方の予想どおりなんら変わらず。負傷兵の納村(笠智衆)が歩く練習をしていることを知った恵美(田中絹代)がそのことを話題にするシーンは、
恵美:「毎日ここでお稽古していらっしゃるの?」
納村:「あなたも?」
という意味不明の会話になってしまっているのだが、間に欠落があるとは思えないほど自然につながっているので、何度観てもおかしい。このシーンもそのままだった。本当はどういう会話なのか知りたくもあり、ずっとこのままであってほしくもあり。
ところで、この松竹110周年祭は、「風景」「暮らし」「銀座」といったテーマごとに作品が選ばれている。この『簪』は「着物」の一篇なのだが、どうにも違和感がある。主演の田中絹代が着物を着ているのは最初と最後だけで、途中はずんどう丸出しの洋服だ。川崎弘子の着物姿は艶やかだが、出番は少ない。この映画の見どころは、先生=斎藤達雄と若旦那=日守新一の掛け合いなので、そういうテーマで選択してほしいものだ。そうでなければ「温泉」とか「避暑地」とか。