実録 亞細亞とキネマと旅鴉 このページをアンテナに追加 RSSフィード

17-12-2005 (Sat) 阿佐ヶ谷→原宿→京橋→上野広小路

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沢村貞子が超クールな必見作」とJ先生が言うので、『結婚相談』を観に朝からラピュタ阿佐ヶ谷へ。中平康監督芦川いづみ主演。開演30分前からチケット売り場は長蛇の列で、立ち見まで出て開演が遅れるほどの盛況ぶり。清純派スター、芦川いづみ娼婦になってしまうという「成人映画」のためか、中平康レトロスペクティブでも上映されなかったレアものであるためか、はたまた沢村貞子人気のためか(まさか)…。

冒頭、美顔器具を頬に当てる芦川いづみのアップに、「私もとうとう、30になってしまったわ」のモノローグが強烈。30歳の未婚女性結婚をあせるというのは、当時はかなりリアリティがあっただろうが、芦川いづみくらい綺麗な人が紹介される人誰とでも結婚を望み、簡単にじいさんと寝てしまうというのは、今観ると全くリアリティがない。一方、この設定には、男性スターの相手役を中心にやっていた美人女優が、30歳をすぎて女優としてこれからどうするのかという問題が重ねられているように見える。こちらのほうは現在も女優にとって大きな課題であり、芦川いづみもこの後数年で結婚引退してしまったことを考えると、かなりリアリティがある。

沢村貞子は、あらかじめわかっていて観るとそれほど怖くなかった。芦川いづみに対して強く出てみたり同情するふりをしたりしながらハメていく手口を、客観的に楽しませてもらった。絶妙のタイミングで美顔器具の宣伝カーが通り、「あなただけはと信じたの〜♪」という歌が流れるのが笑えた(例によって歌が一日頭から離れなくて困った)。

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時間がないので阿佐ヶ谷駅前で急いでラーメンを食べ、原宿へ移動。NHKアジアフィルムフェスティバルで、Royston Tan(ロイストン・タン)監督シンガポール映画(邱金海(エリック・クー)監督が製作に関わっている)、『4:30(フォーサーティ)』を観る。原題が“4:30”のこの映画、邦題には「フォーサーティ」という読み仮名がついているが、これは間違っている。シンガポールでは「フォーサーティ」とは読まない。「フォータッティ」と読む。

「4:30」は因縁の時間である。1999年シンガポールへ行ったとき泊まったホテルで、早朝の飛行機に乗るために、4時にタクシーを呼んでくれるよう頼んだ。部屋に帰ると間もなく電話が鳴り、J先生がしばらく英語で話していたが、「What is フォータッティ?」と聞いたあと、フロントへ行くと言って電話を切った。自分が当事者でこれを聞いたらわからなかったかもしれないが、傍で聞いていたら電話の内容が瞬時に推測できた。つまり、「タクシーは4時ではなくて4時半に来るけど、いいよね?」ということである。J先生にそう言ったら、ショックを受けてフロントに行ったが、はたして内容は推測どおりだった。フロントのおねえさんに「Did you say フォーサーティ?」と聞いたら「Yes, フォータッティ」と答えたらしい。

映画は、同じ家に暮らす、小学6年生くらいの少年と、その母親韓国人ボーイフレンド物語。共に母親に放っておかれていて、言葉も通じず、同じ家にいながら別々に暮らしている。でも少年韓国人男性に興味を持っていて、最初は知られないようにいろいろ探っているが、だんだん彼の生活の中に自分の痕跡を残し始める。でも二人が初めて心を通わせるような出来事があったとき、男性はすでに母親にふられていて、突然姿を消してしまう、という話。孤独な登場人物や、部屋に忍び込むところや、テーマ曲の交換(少年テーマは“千言萬語”である)など、蔡明亮(ツァイ・ミンリャン)の映画や『恋する惑星』を連想させもする。この男の子は、ある見方をすれば、かなりひねくれた性格で、コミュニケーション能力に欠けていて、奇行を繰り返す問題児である。でも別の見方をすれば、自分の考えた遊びに夢中になったり、自分だけの秘密を大切に貯めていたり、あの年齢の子供としてありがちで、その気持ちや行動はすごくよくわかる。台詞はほとんどなく、キャメラはあまり動かず、午後イチで観て眠くならないと言ったら嘘になる。でも、アジア的喧騒とは違う、だけどよく言われるように清潔で無機的なだけではない、シンガポール独特の空気や、地味なのに強い印象を残す少年の顔とあいまって、映像物語も、見終わったあとでずっと心に残る。

ところで、主人公を演じた少年の名前はシャオ・リーユアン(蕭力源)。シンガポール北京語読みの名前は珍しい。シンガポールでは「方言はやめて華語を話しましょう」という運動をずっと前からしているが、まさか最近は名前までそういう傾向にあるのだろうか。それとも、例えば大陸からの移住者とかそういった背景の人なのだろうか。

小さい会場だったが、けっこうすいていた。シンガポール映画は立派な中華映画なのに、中華映画ファンの多くはチェックしていないように思われる(東京国際映画祭でやった『一緒にいて』もすごくいい映画だったのに、観ている人が少なくて残念だった)。シンガポール映画なんて存在そのものが絶滅危惧種なので、ぜひ機会を逃さずに観てほしいと思う。

上映前にRoyston Tan監督と蕭力源くんの舞台挨拶があり、上映後にはQ&Aがあったが、残念ながら時間がなくてQ&Aには参加できなかった。

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フィルムセンターの「韓国リアリズム映画の開拓者 兪賢穆監督特集」の一本、『金薬局の娘たち』を観るため、急いで京橋へ移動。この特集は、初日の『誤発弾』を観るつもりだったが、仕事が終わらなくて行けなかった。それで「もうこの特集は行かなくていいや」と投げやりな気分になっていたところ、金曜日にSomeCameRunningを見たら「『終電で来た客たち』がもっとも印象深かった」と書かれていて(id:SomeCameRunning:20051212#p1)、「今日は何をやっているかな?」と思ったらちょうどその『終電で来た客たち』。「行くぞ」と決心したが、やはり仕事が終わらなくて行けず。意を決して今日、『4:30』のQ&Aを聞かずに『金薬局の娘たち』に行くことにした。

兪賢穆(ユ・ヒョンモク)監督の代表作と言われるこの映画は、日帝時代の統営を舞台に、砒素自殺した祖母のたたりだとかで美人四姉妹にふりかかる悲劇を描いたもの。これでもかこれでもかと際限なくふりかかる悲劇(思わず朝観た『結婚相談』を連想)がすごい。「アイゴー」を連発しながらいかにも韓国映画風に大仰に嘆きつつ、娘たちの間をやたらとうろうろした揚げ句に無残に殺されてしまうお母さんが圧巻だが、もう少し娘たちを中心に描いてもよかったのでは。最後は一応救いのようなものがあって、どうやら近代化や教育や抵抗やキリスト教に救いがあるようなのだが、悲劇づくしで救いもなく終わったほうが映画としては面白そうだ。兪賢穆監督がどういう監督かほとんど知らないので何とも言えないが、これが代表作というのはどうなのか。とりあえずほかの映画も観てみたいが、今回の特集はもう行けそうにない。

あまり混んでいなかった客席を見ての勝手感想だけど、どうも「韓流ブーム」なるものはこういう特集とは全然関係がないらしい。60〜70年代香港映画台湾映画が上映されたら中華映画好きの人はかなり行くのに、そういう雰囲気は全然なくて、いつもの客層からじーさんばーさんを抜いたような感じ。なんとなく寂しいですね。ところで今後フィルムセンターには、李晩煕(イ・マニ)監督の特集などやってほしい。

久しぶりに銀座方面に来たので、夕食は上野広小路へ移動して蓬莱屋でひれかつ(ちょうど今週のぴあの最後のページに写真が載っていて、もう我慢ができなかったのだ)。

SomeCameRunningSomeCameRunning 2005/12/21 09:30 はじめまして。トラックバックありがとうございます。兪賢穆監督ですが、土曜日に『金薬局の娘たち』は私も見ておりました(あの作品で、すべて見終えることができました)。ほかに『殉教者』『人間の子』が面白かったです。宗教の問題を扱った重厚な作品ですが、ミステリーとしても充分に堪能できると思います。

xiaogangxiaogang 2005/12/22 21:03 SomeCameRunningさま、はじめまして。『サイコ』をヴィデオでしか観ていない者ですが、コメントどうもありがとうございます。『殉教者』も観ようと思っていたのですが、長いので挫折してしまいました。

akamakuraakamakura 2007/11/25 01:36 Be With Meを今日観ました。あれ、三つの話を一つにしない方がよかったんじゃないかと思いました。

xiaogangxiaogang 2007/11/29 23:01 akamakuraさま、はじめまして。
わたしは三つの話の絡ませ具合がなかなか絶妙でよいと思ったのですが。
ところで“Be With Me”のDVDはどこで買えるのでしょうか?