バンガロールに来ちゃったの(実録亞細亞とキネマと旅鴉) このページをアンテナに追加 RSSフィード Twitter

04-05-2007 (Fri) 奈良旅行第三日(帰省+奈良旅行第六日)

[]奈良→西ノ京→耳成山→今井町→奈良 奈良→西ノ京→耳成山→今井町→奈良を含むブックマーク 奈良→西ノ京→耳成山→今井町→奈良のブックマークコメント

ワシントンホテルプラザも素泊まりなので、朝6時からやっているCaffe Paddingtonという喫茶店で朝ごはん。モーニングにオプションのベーコンとジャムをつけても、1000円でおつりが来た(二人分)。ボリュームもあってけっこう満足。帰りに旧JR奈良駅を見る(写真)。このあたりは中心部からたいして離れていないのに、どこか場末感が漂っている。旧JR奈良駅は今のところ使われていないようだが、うまく再生利用してほしいものだ。

f:id:xiaogang:20070513222455j:image f:id:xiaogang:20070513222454j:image

今日はちょっと遠出をするうえに昼ごはんの予定が決まっているので、計画どおり進行できるか気がかりだ。近鉄に乗って大和西大寺へ行き、駅前のレンタサイクルで自転車を借りる。まずは、歩いても行けるすぐそばの西大寺へ(公式)。観光客も少なく、がらんとした感じが心地よい(写真)。それから本日のメイン・イヴェントのひとつ、県営奈良競輪場をめざす。といっても乏しくなった旅行資金を稼ぐためではない。『小早川家の秋[C1961-04]のロケ地めぐりが目的だ(id:xiaogang:20070504#p2)。今日はレースはなく、大垣競輪の場外となっている。入場無料なのでちょいと入ってみた。まだ発売開始前なので客は少なく、バンク(って言うんですね、競輪では)では選手たちが練習をしている。競馬場ならフランス、香港、マレーシアで入ったことがあるが、競輪場は初めて。まわりには立ち飲み屋があり、駐車場へ誘導する警備員も大勢いて異様な雰囲気。

昼ごはんの予約が11時なので、競輪場見学もそこそこに、秋篠の森(公式)へ自転車を走らせる。レンタサイクルでもらった地図がいいかげんなので、ぐるぐる回ったり遠回りしたりしてやっとたどり着く。愛車(写真←場所はここではない)をお店の駐車場に停め、食の円居なず菜でゆっくりと昼ごはん(id:xiaogang:20070504#p3)。帰りに隣のざっか月草をのぞくと、よさそうな作家ものの器もあるし、鹿サブレにも心が動く。しかし自転車なので買えない。

次は薬師寺へ向かう。少し遠回りしようと思ったらまたしても道に迷い、おかげで思いがけのう平城宮跡も見られた、というより何もない草原の中を走ることに。西ノ京はけっこうアップダウンがあったが、変速もない自転車で堂々と金をとるとは図々しいのと違いますか。西大寺から先は自転車道が整備されており、迷いようもなくすいすい走れるのはいいが、生活の匂いがしなくて味気ない。薬師寺(公式)は、お寺自体ではなく『宗方姉妹』[C1950-07]のロケ地めぐりが目的(id:xiaogang:20070504#p4)。観光客はいっぱいだし、坊主はよくしゃべるし、再建された金堂や西塔はキンキラキンだし、げんなりして早々に退散。たまうさぎのきなこだんごでエネルギーを補給し(id:xiaogang:20070504#p5)、西大寺へ戻って自転車を返す。

f:id:xiaogang:20070513222453j:image f:id:xiaogang:20070513222451j:image

今度は近鉄で大和八木へ移動。もうひとつのメイン・イヴェントは、『麦秋[C1951-02]の最後に出てくる耳成山探訪(id:xiaogang:20070504#p6)。すぐそばまで行ってから隣の耳成駅へ引き返すと、ホームからも耳成山がよく見えた。近鉄で八木西口までちょっと移動し、ついでに古い街並みの残る今井町へ。奈良市の中心部にも趣のある古い家はたくさんあるが、隣は新しい家だったりして街並みごと揃っているところはほとんどない。その点ここ今井町は、豪商の立派な屋敷(写真)も多いが、傾いた長屋なども残っており、古い家の続く美しい街並みである。内部の見学などができるのは5時ごろまでなので、どこも閉まっていて閑散としていた。またゆっくりと見に来たい。

奈良に戻り、Chez Noix(公式)という洋食屋でハンバーグなどを食べる。さすがに疲労困憊した今日の歩数は23433歩。このうち6000歩くらいは自転車をこいでいるときにカウントされたもの。夜、大和八木駅で買ったレモンという店のプリンを食べて疲労回復。「プリンはカスタードに限るって」と思っている私だが、ベイリーズプリンがほろ苦くておいしかった。

[]『小早川家の秋[C1961-04]の県営奈良競輪場 『小早川家の秋』[C1961-04]の県営奈良競輪場を含むブックマーク 『小早川家の秋』[C1961-04]の県営奈良競輪場のブックマークコメント

『小早川家の秋』の小早川家はどこにあるのか。脚本にも書いてないし、はっきりとは明示されていないようだ。モデルになった酒屋が伏見だということで、ロケ地ページ(LINK)には「舞台は伏見」と書いているが、関西の方から「絶対に伏見ではない。灘だ」というメールをいただいたこともある。しかし『京都 絵になる風景 - 銀幕の舞台をたずねる』[B1220]によれば、ロケは伏見で行われたようだし、私が不審に思っていた「京都へ行く」という表現も、昔から伏見では使われているらしい。そういうわけで、舞台は伏見ということに落ち着きそうだ。

しかし、映画の中に「西大寺道」という道標が出てくることもあり、もしかしたら舞台は奈良かもと思い、少し調べたりしていた。そこでわかったのは、この「西大寺道」のショットのあとに出てくる競輪場が、県営奈良競輪場だということである。一度倒れて回復した中村雁治郎が、イサムちゃん(ここでは正夫)をだまくらかして家を抜け出し、浪花千栄子と落ち合うところだ。昔なじみのふたりは、たしか競輪場で再会したという設定だったはず。この競輪場がどこかなんて考えてみたこともなかったが、京都や奈良には競輪場などないと思い込んでいたような気がする。雁治郎の「大阪行こう」という台詞とは矛盾するけれど、どこか大阪のあたりだとなんとなく考えていた。

現在の県営奈良競輪場は建て替えられていて、『小早川家の秋』に出てくるものを見ることはできない。奈良競輪場は1950年に開設されたらしいが、いつ建て替えられたかという情報は見つけることができなかった。現在の建物もすでにかなり古びていて、映画とあまり変わらない雰囲気が感じられる。スタンドもこぎたなくて、造り酒屋の大旦那と旅館の女将がいい着物を着て観戦するには、ふさわしくなさそうな場所だった。

f:id:xiaogang:20070513223615j:image f:id:xiaogang:20070513223614j:image

「西大寺道」の道標も探してみたが、これは見つからなかった。あちこちに、「歴史の道」というもう少し小ぶりの道標が建てられているが、このどれかに替えられたのかもしれない。

[]食の円居 なず菜のランチ 食の円居 なず菜のランチを含むブックマーク 食の円居 なず菜のランチのブックマークコメント

昼ごはんは、秋篠の森(公式)にある食の円居なず菜。すべり込みで予約をとったので当然満席。おばさんやマダムだらけの店かと危惧したが、休日のせいかそれほどでもない。

f:id:xiaogang:20070513225316j:image f:id:xiaogang:20070513225315j:image

2940円のランチコースは、冷たい三輪の葛こんにゃく、甘煮あなごの山椒入り蒸しおこわ、筍と大和まなの三輪うどんパスタ(写真)、たたきオクラと順才の土佐酢ジュレ、あげもの(奈良産朝採りアスパラ、いかの一夜干しと茗荷のかき揚げ(写真)、春蓮根、新茶の芽、海老真丈の大和麩ころも揚げ)。これにごはん、みそ汁、香の物、それにやわらか杏仁豆腐。海老真丈の大和麩ころも揚げがおいしかったが、これは写真がボケてしまった。季節の野菜と地元の素材にこだわった、最近はやりのタイプのレストラン。接客が丁寧すぎるのが気になったが、なかなかおいしかった。機会があったらまた来たいけれど、レンタサイクルじゃないと来にくい場所なのが難点だ(平城駅からなら徒歩30分くらいで行けそうだけど)。

[]『宗方姉妹』[C1950-07]薬師寺 『宗方姉妹』[C1950-07]の薬師寺を含むブックマーク 『宗方姉妹』[C1950-07]の薬師寺のブックマークコメント

薬師寺は、『宗方姉妹』で田中絹代高峰秀子が訪れるところだ。ふたりは金堂の前の石段に腰かけてお弁当を食べている。最初のショットで東塔(左写真)の上部が、ふたりを斜め後ろから撮ったショットで東塔の下部が見えている。映画に出てくる金堂は1600年に再建されたものだと思われるが、現在あるのは1976年に再建されたものだ(右写真)。『宗方姉妹』の金堂はシンプルで、落ち着いたたたずまいを見せている。ふぞろいな感じに木が植わっていて、ほかに観光客もなくのどかな雰囲気だ。ところが新しい金堂はハデハデで、木はなくなってしまっている。デコちゃんが手をかけてくるっと回った石灯籠は、デザインは似ているが、金属製の灯籠に替わっている。あたりは観光客で溢れていて、デコちゃんごっこもままならない。

f:id:xiaogang:20070516231640j:image f:id:xiaogang:20070516231638j:image

ここは田中絹代がかつて上原謙と一緒に来たところという想定だ。田中絹代にとっては、懐しく、ロマンティックな想い出をもつ場所でもある。映画の中の落ち着いたたたずまいは、そんな雰囲気を感じさせるけれど、現在は全然違う。このような内容の小説や映画がいまつくられるとしたら、決して薬師寺を舞台にはしないだろう。

[]たまうさぎのきなこだんご たまうさぎのきなこだんごを含むブックマーク たまうさぎのきなこだんごのブックマークコメント

おやつは、尼ヶ辻駅前のたまうさぎで、きなこだんごを2本ずつ食べる。お茶はタダ、ひとり126円でこの満足感。テイクアウトの女の子の列が途切れない店である。

f:id:xiaogang:20070513225657j:image

[]『麦秋[C1951-02]の耳成山 『麦秋』[C1951-02]の耳成山を含むブックマーク 『麦秋』[C1951-02]の耳成山のブックマークコメント

『麦秋』のラストシーンは、菅井一郎と東山千栄子が隠居した大和である。ただ「大和」と言われるだけなのでどのあたりかわからないし、麦畑の中に山がぽこっと存在する風景も、どこにでもありそうなものに思われる。50年以上も経っており、わかるわけないと思っていたが、[奈良にゆかりの映画情報](LINK)というサイトに、この山が耳成山だと書いてあった。天香具山、畝傍山と並ぶ大和三山のひとつらしい。

最寄り駅は近鉄大阪線の耳成だが、隣の大和八木からも歩けそうなので、ここで降りる。近鉄百貨店もある大和八木駅前はけっこう都会で(奈良市中心部にはデパートがないのに…)、すぐ近くに山があるようには思われないが、それらしき山を見つけてそれに向かって歩く。しばらく歩いて、やっと山の全貌が見えたところが左写真。たしかにそれっぽい形をしている。

f:id:xiaogang:20070516232216j:image f:id:xiaogang:20070516232215j:image

山の周囲をぐるっとまわっている道路まで来る。来る前は、「ひとまわりして『麦秋』のアングルを見つけるぞ」という意気込みだったが、ここまで来ると近すぎて山の形がわからない。「コムタ下暗し」ということわざがあるが(ないよ、そんなの)、それと同じだ。山の形がわかるところを一周するとなるとかなり大変だし、もう夕方である。なんとなくこっち側っぽいということで、耳成駅のほうに向かって引き返す。山の形がわかるあたりまで戻っても、建物に邪魔されてなかなか全貌が見えないが、だいたいこのあたりかというのが右写真。

『麦秋』では、一面の麦畑の中に山があって、そのふもとに家がちょこっとあるという感じだが、すっかり開発されてしまってほとんど面影はない。当時からあったであろう古い家が、たまに見つかる程度である。映画ではすごく田舎に見えるが、そのころには近鉄の橿原線も大阪線もとっくに通っていたようだ。麦畑の中を線路が通っていたのだろうか。菅井一郎も東山千栄子も高堂国典も、その気になればすぐに奈良に出られる、けっこう便利な暮らしだったのかもしれない。