実録 亞細亞とキネマと旅鴉 このページをアンテナに追加 RSSフィード Twitter

15-07-2007 (Sun) 後ずさる爆弾小僧

[]『子供四季』(清水宏)[C1939-17] 『子供の四季』(清水宏)[C1939-17]を含むブックマーク 『子供の四季』(清水宏)[C1939-17]のブックマークコメント

台風の大雨の中、朝からシネマヴェーラ渋谷の「清水宏大復活!」(LINK)へ。ふつうの映画なら出京をみあわせそうな天気だが、『子供四季』が今日だけモーニングショーで上映されるとなれば、行かないわけにはいかない。同じ考えの人はたくさんいるとみえてほぼ満席だが、まるで格闘技映画のように男性ばかりなのはどうしたことか。

善太(葉山正雄)、三平(爆弾小僧)の兄弟を中心に、両親と祖父母との和解、父の死とそれに伴う引っ越しや転校、祖父の会社の乗っ取りの陰謀、進学問題といった一年間の出来事を、季節とともに描いている。大人の世界の出来事が子供たちに暗い影を落としつつ、時に子供たちはそれに強く抵抗し、大人の世界に影響を及ぼしていく。原作者が同じで出演者も重なるため、『風の中の子供[C1937-11]との共通点が多い。フィルムの状態が悪く、台詞がよく聞き取れないうえに、画面がかなり暗かった。

野外の撮影がいつものようにすばらしく、春夏篇の舞台である農村もいいが、繰り返し写される橋や蔵のある風景など、秋冬篇の舞台の町がとりわけよかった。フィルムの状態がよかったらどんなにかすばらしいだろうと思うと残念でならない。出演者では、爆弾小僧がとりわけすばらしく、戦前の子役といえば突貫小僧より爆弾小僧だと思う。この映画では、ある場所を去るときにすぐに向きを変えるのではなく、正面を向いたまま数歩後ずさってから、くるりと後ろを向いて去って行くのが印象的だった。なお、河村黎吉と日守新一が揃って出ていながら、全く笑わせてくれなかったのは少し残念。

後半、老獪(西村青児)による会社乗っ取りの陰謀物語の中心となるが、いずれその陰謀が失敗し、ハッピーエンドになることははじめから予見されている。しかしそれがどういう形になるかは全くわからないうちに、老獪は目を痛め、それがだんだんひどくなっていくさまが、何の説明もないまま映し出される。それはまるで、彼の陰謀が失敗する以前にすでに罰を受けているかのようである。ついに黒い眼鏡をかけて現れるシーンで彼は失脚するのだが、そこまでの成り行きは異様に不吉な雰囲気を醸し出していた。

[]『大学の若旦那』(清水宏)[C1933-11] 『大学の若旦那』(清水宏)[C1933-11]を含むブックマーク 『大学の若旦那』(清水宏)[C1933-11]のブックマークコメント

モーニングショーのあとは、『蜂の巣の子供たち』[C1948-13]と『大学の若旦那』の二本立て。『蜂の巣の子供たち』は観ているのでパスして(観てもいいのだが、ごはんも食べないといけないからね)、東急本店のタントタントで昼ごはん。それからシネマヴェーラ渋谷に戻って『大学の若旦那』を観る。サイレント・サウンド版で英語字幕付きだったが、画面いっぱいに書かれているサイレント日本語字幕の下半分くらいに英語字幕が入っていて、日本語字幕がよく読めなかった。英語字幕を入れる余地がないのならば、たとえば字幕の画面ではなくて、本来その台詞が言われるべきところに入れるとか、なんとか工夫してくれないと困る。

大学ラグビー選手である若旦那を主人公にした、軽いタッチ楽しい映画。退部させられたお気楽なバカ旦那はますます素行が悪くなるが、いろいろあって改心して最後の試合で活躍するというお話。清水宏の場合、シリアス映画だとクライマックス道徳的に盛り上がってしまうことが多くてイヤなのだが、これはそんなでもない。全体がシリアスではないということもあるが、サイレントなので、道徳的な台詞があっても登場人物が叫んだりしないのがいいのかもしれない。

主人公が藤井貢というのが全然萌えないのだが、ほかの出演者は豪華。番頭が徳大寺伸で、着物姿がすごくかっこいいし、藤井貢の妹の女学生は水久保澄子。大旦那であるお父さんは、若旦那はロクでもないので、徳大寺伸と水久保澄子を結婚させて店を継がせたいと考えている。私もお父さんの意見に賛成だが、どうもそうはならないようだ。三井秀男は先輩にこき使われるフレッシュマンで、いい役。日守新一は全然笑わせてくれず、がっかりさせておいて最後の試合でノビてくれた。ちゃんと実況で「ノビてしまいました」と言ってくれるので、ごく一部で大ウケ。突貫小僧もご出演。

藤井貢は、元慶應ラグビー選手らしい。体型と試合での活躍は納得。となるとA大は慶應なのか、とも思ったが、大山健二をはじめ誰一人慶應には見えない。やはりA大とB大は、早稲田明治なんだろうか。

[]『街のあかり(Laitakaupungin valot)』(Aki Kaurismaki)[C2006-32] 『街のあかり(Laitakaupungin valot)』(Aki Kaurismaki)[C2006-32]を含むブックマーク 『街のあかり(Laitakaupungin valot)』(Aki Kaurismaki)[C2006-32]のブックマークコメント

大学の若旦那』[C1933-11]が終わって15分後、下の階のユーロスペースアキ・カウリスマキ(Aki Kaurismaki)の新作『街のあかり』(公式/映画生活/goo映画)を観る。カウリスマキも、私が観る数少ない西洋人監督の一人だ。

街のあかりがとてもきれいねヨコハマブルーライトヨコハマ♪という歌のイメージとは全然違って、孤独夜勤ガードマンのコイスティネン(ヤンネ・フーティアイネン)が、ギャングボスの綿貫氏(イルッカ・コイヴラ)に見込まれて、イジメぬかれるお話。持たざる者はどこまでも収奪される、今の日本のような世界だ。カウリスマキ空気感に包まれてはいても、かなり暗いお話。コイスティネンは敗者というよりも、「俺のルール」で生きている人のように見える。ボスはそれさえも利用して、さらなる収奪をしようとしている。だからソーセージ屋の女性(マリア・ヘイスカネン)から手を差し伸べられても、それは別の次元の話で、救いにはならないような気がする。そもそも彼女からの救いの手は、結局最後までずっと、一方的に差し出されるままに終わっているように思うのだが。

『浮き雲』[C1996-40](asin:B000065VTT)、『白い花びら』[C1998-38](asin:B000065VTU)、『過去のない男[C2002-20](asin:B00008IXGB)と、最近カウリスマキはずっとお気に入りだったけれど、これはちょっとそこまで行かなかったかも。主演のヤンネ・フーティアイネンは、なかなかいい雰囲気だったのだけれど。

今週もとんかつ、と思ったが、なぜかあまりおなかがすいていないので、魯肉飯を食べて帰る。値上がりしていたのがショックだ。

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