20-03-2008 (Thu) 三人三色
■[映画]『日本俠客伝 斬り込み』(マキノ雅弘)[C1967-33]
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今日もフィルムセンターで、『日本俠客伝』シリーズ3本立て(しつこいが、料金は別)。結局最初の3本を観なおす暇はなかったが、まあしかたがない。今日の1本目は『日本俠客伝 斬り込み』(映画生活/goo映画)。
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今日上映されるものは、いずれもスクリーンでは初見だが、この『斬り込み』のみ録画で観ている。「テキ屋の話でしょぼい」と記憶していたのだが、これが大間違い。すごくよかった。キャストも豪華だし、シリアスな部分とコミカルな部分がうまく混ざっているのもいい。健さんの命を、最初に親分の石山健二郎が買い、それから娘の藤純子が買う、という形で物語が進行していくのもいい。健さんが逮捕されずにハッピーエンドになるのも変わっていておもしろい。
キャストは、まずヒロインの藤純子がいい。テキ屋の親分の娘であるせいか、しっかりしていて自分の思ったとおりに行動するタイプ。出番も多いし、観ていて気持ちがいい。例によってクサさスレスレのマキノ式メロドラマも、名台詞、名シーン満載。「芸者にもなってみたいと思うからなるだけ」と言うところが好き。脚本の笠原和夫は、脚本を無視してマキノ風の女にさせられているのが大いに不満だったようだが(『昭和の劇 映画脚本家 笠原和夫』[B1097]より)、リアリズムでがさつなおばさんに描かれたら映画にならないと思う。
次に、テキ屋の大親分、花若を演じる大木実が超渋い。『日本俠客伝 白刄の盃』[C1967-32]でもよかったが、出番が少ないなあと思っていたら、今回は出番も多くて大満足。ナンバー1が鶴田浩二か高倉健で、ナンバー2が大木実、みたいな役どころで出てくることも多いが、これだとたいていぱっとしない。体型に貫録があっていちおう二枚目なので、親分とか悪役のほうが引き立つと思う。
内田朝雄に代わって今回いい人になるのは、なんと金子信雄である。しかも、思いっきりコミカルな部分を担っている。天津敏は、顔面神経痛の役でがんばっているが、そのせいで二枚目が台無しで影がうすい。代わりに目立つのが、悪役の親分、渡辺文雄。ヤクザ映画の渡辺文雄を見ると、まるで悪役をやるために生まれてきたかのように見える。松竹時代はどちらかといえば二枚目役で、「長沼です」なんて言っていたのが不思議だ。そうと知っていたら、佐分利信も笠智衆ももっと反対しただろう。
『日本俠客伝 白刄の盃』に続き、子役がよくないのが残念。マキノ監督って子役をやっていたくせに、子役の演出は超おざなりではないですか。
■[映画]『日本俠客伝 絶縁状』(マキノ雅弘)[C1968-37]
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CAFE FREDY(公式)で昼ごはんを食べると、J先生は美容院だの食物映画だのに行ってしまう。わたしはフィルムセンターで、2本目の『日本俠客伝 絶縁状』(映画生活/goo映画)。
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『日本俠客伝』シリーズでは異色の現代もの。警察の取り締まりが厳しくなり、世間からはヤクザ=暴力団と受け止められるようになって、仁侠道を貫くことができなくなった時代が舞台。天盟会という組織の中で、刑務所にいて観念論を説く親分、現実の前に挫折せざるを得ない高倉健、あこぎな金儲けに走る渡辺文雄の対決を描いている。けっこうリアルな設定でなかなかおもしろいのだけれど、いまひとつ散漫な印象。ちょっと図式的すぎるのも気になる。健さんがシマを歩いていると、子分も連れていないのにみんなが怖がって散っていくところなどやりすぎだと思う。
キャストはふたたび地味になり、今回は天津敏も長門裕之も出ていない。健さんの子分が藤山寛美、待田京介、曽根晴美というのは、もしかして豪華かもしれないけれど。悪役は、渡辺文雄と遠藤辰雄。親分が重要な役のはずだが、演じる伊井友三郎(って誰?)はどうもぱっとしない。健さんの義兄に扮する菅原謙二が好演している(でも地味)。
ヒロインは松尾嘉代で、健さんの奥さん役。最初から奥さんがいるという設定は珍しい。女性像としては、いつもの仁侠映画のヒロインの枠を出ていないが、全体のストーリーと同様、リアルな雰囲気なのがおもしろい。現代の話なので、わりとふつうの夫婦という感じであり、藤純子とはずいぶん違う。二人で夜道を歩くシーンが捨てがたい。
■[本]『レスリー・チャンの香港』(松岡環)[B1278]
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今日のお茶はエクセルシオール(公式)。週末にも行こうとして、まずそうなブルーベリーケーキしかなくてやめたのだが、実はそれは『マイ・ブルーベリー・ナイツ』とのコラボ商品だということが判明。いちおう食べておこうと思って来た。しかし、予想どおりあまりおいしくない。ブルーベリーが7個しか載っていないのに400円するのも解せない。食べながら、『レスリー・チャンの香港』読了。
- 作者: 松岡環
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ミーハーっぽいタイトルだが、そのような本ではない。張國榮(レスリー・チャン)のデビューから死までの軌跡を、その間の香港の軌跡に重ね合わせて描いた、なかなか興味深い本である。わたしが張國榮を知ったのは『欲望の翼』[C1990-36]であり(観たのは1992年)、香港芸能に興味をもち始めたのは1993年くらいから。よく知らないそれ以前の香港芸能界の動向が、香港社会の動きとともに描かれている点が興味深かった。
特に嬉しかったのは、張國榮と同時期にアイドルだった陳百強(ダニー・チャン)のことがけっこう書かれていたこと。わたしはもちろん、陳百強をリアルタイムでは知らないが、彼の声が好きで、彼が亡くなったちょっとあとぐらいにCDをいろいろ買い集めていたことがある。だからすごく懐かしく、さっそくiPodに入れようと決めた。
■[映画]『日本俠客伝 花と龍』(マキノ雅弘)[C1969-27]
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お茶のあとの3本目は、『日本俠客伝 花と龍』(映画生活/goo映画)。
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『花と龍』といえば、加藤泰の『花と龍 青雲篇 愛情篇 怒涛篇』[C1973-08]を観ているが、あまりおもしろいとは思わなかった。だいいち玉井金五郎にマンという、登場人物のすごすぎる名前が引っかかる。しかしながら、予想に反してマキノ版はおもしろかった。マキノ版は原作小説の最初の部分で、加藤泰版はもっとあとの部分だと思われる。
『日本俠客伝』シリーズの一本なので、最後は殴り込みで終わるという仁侠映画のスタイルをとっているが、どちらかといえば青春映画というイメージが強い。日露戦争直後の九州が舞台で、石炭産業が元気だったころの時代の空気が感じられ、その時代の若々しさみたいなものが、登場人物たちの若さにうまく重ね合わされている。
キャストはまた少し豪華になっていて、津川雅彦ややまりん(山本麟一)も出演しているし、天津敏が期待通りの悪役をきっちり演じているのが嬉しい。そのほかは、星由里子、二谷英明、高橋とよと、豪華というより異色である。高倉健に二谷英明という組み合わせはどうみてもミスマッチだが、二谷は例によって女を取られて裏切る役なので笑ってしまった。役のイメージで呼ばれたのだろうか。最後に寝返って健さんを助けるのだが、ふつうなら観客を喜ばすこのような設定も、二谷だと信用できなくてどうも喜べない。
高橋とよは女親分で、一声で天津敏をタジタジにするところがさすがは高橋とよである。『日本大俠客』[C1966-32]では鶴田浩二だった吉田磯吉親分が、ここでは若山富三郎に替わっているのが解せない。
ヒロインは星由里子。色気はないが、勝ち気で男と同じように働くマンの役を好演している。マキノも気に入っていたらしいが、東宝で若大将の添え物をしているよりずっといい。星由里子といえば冷風扇だが、最近めっきり見なくなった。やはり売れなかったのだろうか。一方、お色気部分を受け持つのが藤純子。お竜さんをもうちょっと色っぽくしたような壺振り兼彫師役で、ファム・ファタルのごとく健さんの行く先に現れる。健さんもどこか惹かれているのだが、結局なびかないのが健さんらしい。
上映後に、マキノ監督の長女、マキノ佐代子さん(元女優)と山根貞男氏のトーク・イベントがあった。朝は思いのほか観客が少なかったが、だんだん増えてこの回はほぼ満員。客席には、マキノ監督の奥様や澤井信一郎監督の姿もあった。トークの内容はだれかが採録していると思うので詳しくは載せないが、家庭でのマキノ監督について。家はセットで、主演女優はおかあさんで、娘たちは助監督以下のスタッフだった…というような話。なかなか楽しいトークだった。