21-07-2008 (Mon) 人生の幻影
■[映画]『風と共に散る(Written on the Wind)』(Douglas Sirk)[C1956-32]
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今日はぴあフィルムフェスティバル(公式)のダグラス・サーク特集で、渋谷東急へ行く。PFFに行くのはかなり久しぶりで、王小帥(ワン・シャオシュアイ)以来かもしれない。指定席ではなく整理券順入場なのがうっとおしかったが、キャンセル待ち当日券を用意するなど、一人でも多くの観客に観てもらおうとしている姿勢に好感がもてる。見習えよ、東京国際映画祭。
『人生の幻影』[C1984-20]を観て以来、ずっと気になっていたダグラス・サーク。その後観ることができたのはスイスで撮った『アコード・ファイナル』[C1938-14]のみ。今回PFFで特集上映されるということで、残念ながら今日しか観られないけれど、メロドラマ3本に駆けつける。その一本めは『風と共に散る』(映画生活/goo映画)。
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まず、人気のない道路を黄色いスポーツカーが爆走するオープニングに目を奪われる。異様なほど風が吹いていて、車の主が屋敷に到着して玄関のドアを開けると、ざざざっーと枯葉が家の中に入っていって舞っているのにも。
石油成金の御曹司であるロバート・スタック(Robert Stack)、その「ご学友」として望まれ、一緒に育ったロック・ハドソン(Rock Hudson)。ロバート・スタックに見初められて妻になるローレン・バコール(Lauren Bacall)。ロバート・スタックの妹でロック・ハドソンに憧れるドロシー・マローン(Dorothy Malone)。この4人が織りなすメロドラマ。『アコード・ファイナル』でも感じたけれど、全く無駄がなくてよくできている。
優秀で社長の信頼も厚い親友への羨望や嫉妬、プレッシャーから逃れるためのアルコール依存や自殺願望、子供ができないことに単を発した絶望と疑念。メロドラマ的外観のなかに、個人が抱える様々な問題がうまくからみあっており、特殊な背景や異なる時代にもかかわらず、それらはほとんどそのまま現代にも通じる。健全で屈託がないように見えたロック・ハドソンもまた、屈折を抱えていることが次第に明らかになり、それが最後にうまく生かされている。思えば、石油成金一家に支配されているといっていい小さな街の、何かあればみんなが一家の側についてしまう歪んだ雰囲気が、最初から映画に不安な影を落としている。
この映画で特筆すべきはやはりローレン・バコール。アメリカの女優ではローレン・バコールがいちばん好きだ。『三つ数えろ』[C1946-01]から10年。さすがにあの神秘的な美しさはもうなく、30過ぎで独身〜新妻という想定は多少苦しくもあるが、やっぱりかっこいい。キャリアウーマンからお金持ちの奥様へ、すーっと移行してしまうシックさも、最初のほうで足だけ見えるところも。スチルでは何度も見た、ローレン・バコールが手で顔を覆うショットの本物をやっと観られて満足だ。
■[映画]『翼に賭ける命(The Tarnished Angels)』(Douglas Sirk)[C1957-32]
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映画祭ディレクターの挨拶が長かったせいか、昼ごはんの時間がほとんどなく、同じビルのスタバでサンドイッチを詰め込む。ダグラス・サーク二本めは『翼に賭ける命』(映画生活/goo映画)。モノクロ、シネスコ。
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飛行機レースの話で、飛行機レースのパイロットがロバート・スタック(Robert Stack)、その妻がドロシー・マローン(Dorothy Malone)、彼らを取材する記者がロック・ハドソン(Rock Hudson)。『風と共に散る』とほぼ同じキャストである。
第二次世界大戦の英雄だったロバート・スタックは、今は飛行機レースのパイロットだが、見た目の華やかさや死と隣り合わせの危険(自動車レースなどの比ではない)のわりには報酬も小さく、旅芸人のような暮らしをしている。戦争から10年経ち、かつての英雄を見る目が確実に変化しているさまがなにげにリアルである。なかば忘れられた存在の彼は、最初からレースで命を落とすように運命づけられていて、映画はとにかくそこに向かって動いていき、全体をやりきれない空気が覆っている。さらに、死と向き合うために家族を顧みない彼に対し、美貌の妻には常に男の噂がつきまとっていて、これが冒頭から映画に暗い影を落としている。そして、レースの前に妻への愛を初めて口にしたロバート・スタックは、まるで「最後の仕事」に向かった殺し屋が必ず殺されるように、レースで命を落とすことになる。
3人ともこれまで特に気にしたことのない俳優で、ルックス的にも別に好みではない。ところが『風と共に散る』を観ただけですっかり見る目が変わり、「安心できるキャスト」と感じてしまう。特にドロシー・マローンがよかった。顔が個性的というか作りが大ざっぱな感じなので、カラーで派手なドレスよりもモノクロで地味な服のほうが美しく感じられたし、報われない感じがにじみ出ていてよかった。
ラストショットをはじめ、市松模様のパイロンがかっこいい。タンタンのロケットを連想させるので、すっかり赤と白の市松模様だと思って観ていたが、ほんとうは何色なのだろう?
■[映画]『悲しみは空の彼方に(Imitation of Life)』(Douglas Sirk)[C1958-29]
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晩ごはんをちゃんと食べたいという理由で『天が許し給うすべて』を買わなかったのを少し後悔している。まあいまさらしかたがないので、お茶を飲んだり買い物をしたりひげちょう丼を食べたりする。ダグラス・サーク三本めは『悲しみは空の彼方に』(映画生活/goo映画)。“Imitation of Life”というなかなか秀逸なタイトルが、なんで『悲しみは空の彼方に』になっちゃうの?
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女優のラナ・ターナー(Lana Turner)とその娘のサンドラ・ディー(Sandra Dee)、ラナ・ターナーの家で住み込みで働く黒人のファニタ・ムーア(Juanita Moore)と混血の娘のスーザン・コーナー(Susan Kohner)という二組の親子と、ラナ・ターナーの恋人、ジョン・ギャビン(John Gavin)の10年(の最初と最後)を描いた大メロドラマ。
オープニングは真夏の由比ヶ浜海岸。というのはウソだけど、「なんか最近見た光景」と一瞬思ったのは事実である。実際はニューヨークのコニー・アイランド(鎌倉には観覧車はないな)。ここでいきなり5人が一堂に会する。つまりラナ・ターナーは、その後大事な伴侶となる二人、ジョン・ギャビンとファニタ・ムーアに、同じ日に同じ場所で会ってしまうのである。まさしくメロドラマ。この映画で不吉な役割を担うのは、ぱっと見が白人であるため自分を白人だと思い込もうとして黒人を毛嫌いするスーザン・コーナー。子供時代の冒頭からその激しさは突出していて、それはエスカレートしながら物語を動かしていく。
ラナ・ターナーが女優として成功すると、舞台は10年後に移る。こういった時間経過をどう表すかが映画の出来を左右することも多いが、ラナ・ターナーが主演した舞台の看板で10年の経過を表したところはなかなかよかった。子供たち以外、10年経ってもほとんど変わっていなかったのがすごい。
家族の話のなかに、夢の追求と現実、仕事と家庭、親と子、白人と黒人といった様々な問題が織り込まれていて、これまた無駄がなくてよくできている。ただし125分もあってちょっと大作すぎるかも。前の二作とはキャストも変わり、個人的には全然馴染みがなかった。いかにも善人っぽいファニタ・ムーアの演技がちょっと過剰に感じたのと、サンドラ・ディーがあまりにパキパキしていて魅力が感じられないのが気になった。
今日観たのは全部、どちらかというと家族メロドラマだったので、『心のともしび』とか『天が許し給うすべて』とか、男女のメロドラマも観たい。しかたがないからDVD-BOXでも買うか。
「いつも明日がある」はご覧になっていませんか? すばらしいですよ。
『いつも明日がある』は観てないです。DVDも出ていないのでなかなか観られませんね。PFFでもっと観とくんだったとちょっと後悔しています。