実録 亞細亞とキネマと旅鴉 このページをアンテナに追加 RSSフィード Twitter

24-11-2008 (Mon) 今日は千恵蔵特集

[]『昭和残俠伝 人斬り唐獅子』(山下耕作)[C1969-28] 『昭和残俠伝 人斬り唐獅子』(山下耕作)[C1969-28]を含むブックマーク 『昭和残俠伝 人斬り唐獅子』(山下耕作)[C1969-28]のブックマークコメント

この三連休は所用で帰省しており、お昼ごろ羽田に到着した。午後は山下将軍に捧げると決めたはずなのに、J先生勝手神保町へいづみさまを観に行ってしまう。わたしはキャリーケースを引きずり、コインロッカーを求めて品川へ、目黒へ、そして阿佐ヶ谷へと流れる。今日は死ぬほど寒いうえに荷物で身動きがとれないので、阿佐ヶ谷駅でやっとコインロッカーの空きを見つけるまでに気持ちがささくれ立つ。キャリーケースを殺してわたしも死のうとか、「コインロッカーが空いていない」という理由で国鉄総裁(古い)を襲おうかとか、いろいろ考える。世の中を騒がす犯罪だって、こういう些細なきっかけから生まれるのだ、きっと。かなり時間をロスしたので、焦って2プログラム分のチケットを買いにラピュタ阿佐ヶ谷へ行ったが、ぜんぜん余裕の整理番号。

1本めは、『昭和残俠伝 人斬り唐獅子』。昭和残俠伝シリーズで、唯一山下耕作監督したもの。のはずだったが、始まったのは『日本俠客伝 昇り龍』。すぐに気づいて変えられたが、上映時間が少しばかり延びたということで、帰りに招待券をくれる。ラピュタ太っ腹。

昭和残侠伝 人斬り唐獅子 [DVD]

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仁侠映画には基本的なモチーフがあり、たいていの映画はそのうちのいくつかを組み合わせて作られている。ところがこの映画は、すべてのモチーフを総動員したかのようである。兄弟分のために引き受ける本当はやりたくない殺し、兄弟分のいる悪い親分の組との対立、立派な親分の正妻になってしまった昔の女、立派な親分と不甲斐ない息子との葛藤……とてんこ盛り。いろいろ入っているぶん、どうしてもひとつひとつはうすくなってしまう。

昭和残俠伝なので、もちろん主役は高倉健だが、この映画の健さんは冴えない。健さんに比べて、圧倒的にいいのは池部良。出番も多いし、これは池部良を堪能する映画だと思う。それから、いつも健さんを助ける親分を演じる片岡千恵蔵。千恵蔵が出る仁侠映画ってあまり観たことがない気がするが、やっぱり画面が締まる。どうしようもなく悪い親分を須賀不二男が演じているのも楽しい。めずらしいところでは葉山良二も出ていた。

ヒロイン小山明子で、悪くはないけどちょっと印象がうすい。最初に健さんが、渡世の義理彼女の夫の大木実を斬ったとき、「人殺し」って言うところはすごくいいが、そのあと簡単に未練たっぷりなふうになってしまって残念。「山下耕作といえば花」というのは先日初めて知ったが、小山明子イメージは菊。でも、菊の登場のしかたがけっこうわざとらしくて(『続花と龍 洞海湾の決斗』でもそう思った)、わたしはあんまり感心しない。

健さんはその小山明子にすごくつれないのだが、健さんと小山明子の関係と、健さんと池部良の関係がリンクしていないのが残念。健さんは止める小山明子を、「そんなにしなくても」と思うほど冷たく振り切って殴り込みに出かけるが、その時点では池部良が組を破門になったことを知らない。だから、小山明子を捨てて池部良を取る、という感じにはなっていない。途中で待っていた池部良が説明する、というのもちょっとぱっとしない展開。山下耕作は体系的に観ていないのでよくわからないが、彼の映画にはあまりホモエロティックな雰囲気はないように思う。ふたりの道行きのシーンから雪になるというのも、絵にはなるけれど、菊の季節の東京ということからするとちょっと不自然な感じも否めない。

[]『日本俠客伝 昇り龍』(山下耕作)[C1970-18] 『日本俠客伝 昇り龍』(山下耕作)[C1970-18]を含むブックマーク 『日本俠客伝 昇り龍』(山下耕作)[C1970-18]のブックマークコメント

2本めは、今度は本当に『日本俠客伝 昇り龍』。これまた日本俠客伝シリーズで唯一山下耕作監督したもの。

日本侠客伝 昇り龍 [DVD]

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『花と龍』の映画化であり、シリーズ中では『日本俠客伝 花と龍』[C1969-27]に続くものなので、当然続編だと思っていたがそういうわけでもない。『日本俠客伝 花と龍』が金五郎とマンを中心とした物語だとすれば、こちらは金五郎とお京が中心。金五郎に高倉健、お京に藤純子キャスティングは前作と同じ。

この映画は、その藤純子がたいへん美しい映画といわれている。たしかに美しいことは美しいが、妙におんなおんなしているのがどうも好きになれなかった。お京は彫師であり壺振りでもあるので、もう少し凛としたところを見せてほしい。一方のマンは、中村玉緒に替わっていてがっくり。玉井金五郎の妻であることの苦労は、勝新の妻であることの苦労に通じるのかもしれないが、「なんで中村玉緒?」と首をかしげる。どうしていつもそんなに目を見開いてびっくりしたような顔をしてるんだとか、そんなことばかり思って観ていた。これでは金五郎がお京さんを好きになっても全く同情がわかない。

ストーリーは、原作では金五郎の中年時代のエピソードであるものを、まだ若い金五郎の話として持ってきている。『日本俠客伝 花と龍』は、無理やりラストを殴り込みシーンにしていたが、こちらはそうではない。その代わり、少し前の友田喜造(天津敏)との対決シーンを無理やり殴り込みにしている。しかし典型的な仁侠映画パターンにしないのであれば、ここも原作どおり一対一の対決にしたほうがよかったのではないか。原作ではいちばんの見どころのひとつなので、そのまま映像化してほしかった。

知らずに観に行ったら鶴田浩二が出ていたのが拾い物。片岡千恵蔵またまた出ていて、これは吉田磯吉役。意外なところではどてら婆さんが荒木道子。これが案外合っていたが、最初出てきたときは浪花千栄子かと思ってびっくりした。

先生と合流し、とんきでひれかつを食べて帰る。お天気のせいかとんきもすいていた。

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