10-01-2009 (Sat) 第二悪魔に取り憑かれています
■[映画]『マルセイユの決着(おとしまえ)(Le Deuxieme Souffle)』(Alain Corneau)[C2007-43]
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今は違うが、以前わたしのケータイのメールアドレスはgangだった。ある日、知らない人からメールが来た。「あなたはギャングなんですか? 僕はギャングです。やっぱギャングだよね。」正確には憶えていないが、こんな内容。なんとなく楽しいので、しばらく保存していた。わたしは残念ながらギャングではないが、やっぱ『ギャング』[C1966-07]だよね。というわけで、今年初めての映画は『ギャング』のリメイク、『マルセイユの決着』(公式)。
『ギャング』は20年前に観て以降、DVD化、テレビ放映、再上映を熱烈に希望している映画である。しかしいまだに叶わない。最近、中華系以外の情報には疎いので、『マルセイユの決着』のことは全く知らなかったが、『ノン子36歳』を観たときに予告編を観て知った。実はこの映画自体よりも、この機会に『ギャング』のDVDが出ることのほうを期待しているのだが、ともかくリメイクは観ておくことにする。しかし、タイトルは『マルセイユの決着』。「決着」と書いて「おとしまえ」と読む。こんなタイトルのフランス映画なんて、ふつう観たいと思わないよね。日本映画だったら観たいけれど。キャストは高倉健、池部良、富司純子でお願いします。
実は『ギャング』の内容はほとんど憶えておらず、リノ・ヴァンチュラが超かっこよく、映画もすごくよかったという印象があるだけである。ところがリメイクの『マルセイユの決着』は、リノ・ヴァンチュラがやったギュ役をダニエル・オートゥイユがやるという。もともと顔が嫌いだが、雰囲気や存在感からしても、どうみたって無理である。万一ということもあると思ったが、やっぱり無理だった。ダメダメである。演技もくどい。ブロ警視がミシェル・ブランというのも冴えない。
結局、お話はとてもおもしろかったけれど、映画としては凡庸だった。大作映画っぽいというか、映像も音楽も色彩も過剰でうっとうしい。アラン・コルノーってもうちょっと淡々とした映画を撮る人だと思っていたのだが。最後まで観ても『ギャング』のストーリーは思い出せなかったけれど、あらすじを読むとほとんど同じ話のようだ。
よかったのは、オルロフ役のジャック・デュトロン(誰かに似ていると思うのだが、思い出せない)。ヴァンチュール役のダニエル・デュヴァルもよかった。いいのは老人ばかりという感じだが、マヌーシュ役のモニカ・ベルッチも悪くない。この人を見るのは実は初めてなのだが、今回はブロンドに染めていることもあり、ネットで写真を見るとけっこう雰囲気が違う。もちろんマヌーシュ役のほうがいいので、いつも60年代風にしていたらいいのに。
■[映画]『サザエさんの新婚家庭(スイートホーム)』(青柳信雄)[C1959-38]
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阿佐ヶ谷へ移動し、適当なパスタ屋で遅い昼ごはんを食べてからラピュタ阿佐ヶ谷へ。今度の映画はがらっと変わって『サザエさんの新婚家庭』。つまり実写版サザエさん。「昭和家族百景」特集の一本。
観ようと思ったのは、マスオさんが小泉博なのに惹かれたからである。マスオさんって、サザエさんみたいな妙な奥さんに、なにデレデレしているんだろうという感じだが、これが小泉博だと全然イヤミがない。タイトルバックからいきなり「うん、サザエ」とか言ってすっかり言いなりなのだが、それも微笑ましい。なかなかすばらしい配役である。江利チエミのサザエさんは、ちょっと過剰だけれど、あの髪型を再現しているだけでよしとする。波平が藤原釜足でフネが清川虹子というのは、アニメのイメージとはかなり異なるが、このほうが人間臭くていいような気もする。
あくまでサザエさん夫婦がメインなので、子供たちの存在感はあまりないが、なんとカツオが白田肇。同年の映画『お早よう』[C1959-06]の幸造(杉村春子の息子)である。しかもマスオさんがテレビを買っちゃったりするのだからおもしろい。
なんだか時代設定が不明なテレビアニメとは違い、1959年という時代が反映されているのが興味深かった。磯野家とフグ田家が家計やごはんが別なのもおもしろい。でも、『お早よう』ではどこもテレビがなかなか買えず、『秋刀魚の味』[C1962-02]では中古のゴルフクラブを月賦で買うのにも大騒ぎなのに、月賦とはいえ、マスオさんが悩みもせずにテレビを買っちゃうのはどうなのか。
■[映画]『貴族の階段』(吉村公三郎)[C1959-39]
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今度は神保町へ移動して、神保町シアターの「男優・森雅之」特集へ行く。映画は吉村公三郎監督の『貴族の階段』。同じく1959年の映画だが、またまたうってかわって今度は二・二六事件もの。二・二六事件を貴族院議長の公爵家を中心に描いたもので、これは今日観たなかでいちばんおもしろかった。
青年将校の側から二・二六事件を描いたものにはあまり興味がもてないが、これは襲われる側から描かれている。理想とか思想とかではなく、不穏な空気が広がっていく時代を、公爵やその子供たちがどのように渡っていこうとするのかというようなところが描かれていて興味深い。
映画は基本的に公爵の娘の視点で語られているので、時代の不穏な空気と並行して、貴族の優雅な暮らしや、良家の令嬢ばかりの女学生(名前は変えてあるけれど学習院)のきらびやかな雰囲気も描かれているのも興味深い。一見、乙女チックなようでいて、女学生のわりに時代や家族を見る目がクールなのがおもしろかった。
半分くらい近衛文麿がモデルと思われる色好みの公爵に森雅之。はまり役。ヘンな宗教にはまっているその妻に細川ちか子。「お父さまには第一悪魔が取り憑いています」等の台詞に爆笑。自分の出自に悩んで軍人になり、青年将校の仲間に加わるナイーヴな長男、義人に本郷功次郎。語り手である長女、氷見子に金田一敦子。森雅之をかつごうとする陸軍大臣に、かなり化けた滝沢修。ちあきなおみが『喝采』を歌いながら下りてきそうな西の丸家のすごい階段(タイトルにもなっている)から転げ落ちたり、森雅之の父の西の丸公(志村喬)から「下品でアタマが悪い」と言われる楽しいキャラクター。望みを叶えるには「貴族ののっぺりした顔が必要」と言う台詞があるが、化けなければ滝沢修のほうが森雅之よりよほどのっぺりしている。その滝沢修の娘で、本郷功次郎と愛し合っていながら森雅之に手をつけられてしまう節子に叶順子。氷見子は節子よりも劣る必要があったのだろうが、金田一敦子よりもう少し魅力的な子だとよかった。
氷見子が節子を「お姉さま」と慕いながら、節子と兄、義人がくっつくことには全面的に賛成している点や、義人が父と節子の関係を知らないまま二・二六を迎えるところなどはちょっと不満。