Campaign_Otaku RSSフィード

2015-02-05

人を見て読ませるか読ませないか判断する本

f:id:y_sequi:20150205233108j:image

"Don't judge a book by its cover"(本は見た目で選んじゃダメ!)...欧米にはこんな言い伝えがあるそうなんだけど、ならば逆に"本自身が読み手を判断する本"を作ろうというプロジェクトが"The Cover That Judges You"。ブックカバーにカメラが内臓されており、顔認識技術を使って、読み手の顔の表情からカバーにかかった鍵を開けるかどうか本自身が決定する。因みに、過度にエキサイトしていたり、表情が薄すぎる場合はオープンしない設定になっているとのこと。

D

このシステムは"オランダ・アートディレクターズクラブ"の年鑑に採用されるようだ。

f:id:y_sequi:20150205233130j:image

洒落が利いていて面白い取組み。漫画や映画の世界でやっと発見した宝物が発見主によっては、その人を地獄に落とす...というのがありますが、こんな感じでIoTが使われるのも愉快かも知れません。

2015-01-01

村上隆、新作のコンセプトを語る。

f:id:y_sequi:20150101012438j:image

村上隆は大震災以降、様々な自然災害を乗り越えて生き続けてきた日本美術を探求し、絵巻物や屏風といったストーリーテリングの手法に辿り着き、アニメ文化と融合させ、西洋が生み出した現代美術の中に取り入れた...その作品展が現在"Gagosian Gallery"(NYC)で1月17日まで開催されている"In the Land of the Dead, Stepping on the Tail of a Rainbow"。

f:id:y_sequi:20150101012637j:image

そのゲートには56トン!の山門が配置されている。

f:id:y_sequi:20150101011428j:image

これは金剛力士像をイメージしているのだろうか。

f:id:y_sequi:20141110195604j:image

村上隆、語る。

D

引き付けられるアートには引き付けられる文脈がある。

2014-10-27

広告のメッカでアートが人々を魅了する

f:id:y_sequi:20141027045935j:image

"The Times Square Advertising Coalition","Times Square Arts"という2団体が広告のメッカ"Times Square"をデジタルアートで占拠する"Midnight Moment"が2012年の4月より、開催されている。これは、アーティストが月替わりで毎日23時57分から作品を披露するという試みだ。世界の屋外広告の総本山と言える場所でアートというのも不思議な感じがしますが、気になった作品を紹介します。

2014.3: Zach Nader"optional features shown"

自動車のCMから自動車だけを取り除いたイメージ。広告のメッカで商品だけ取り除き、それがホラー仕上げになっているということに色々な含みがありそうだ。

2014.8:Alfredo Jaar"A Logo for America"

アメリカのロゴだけを表示するという...これは愛国心の象徴としてTimes Squareを捉えているのか、アメリカ的消費文化への皮肉を消費文化の象徴的場所で行っているのか。

D

2014.10: Ryoji IKeda"Test Pattern"

上の2つがTimes Squareという場所を意識して、社会テーマを回収しようとしているのに対し、Times Squareの空間的特徴を活かしたビジュアル表現として追求されている感じだ。

D

"Test Pattern"なるこの作品、原型はフロア展開のようです。

Ryoji IKedaについて少し調べてみると、超音波や周波数などに焦点を当て、物理的・数学的アプローチを多用するアーティストとのことで、この"Superposition"というパフォーマンスを発見したのですが、非常に難解。量子力学や量子情報理論を美学的な視点から解釈している作品らしいですが、全く理解できません。ただ、高度な科学と音楽を融合させたアートというのが興味深いです。

Times Squareのアート企画から始まって、個別のアーティストの話へと飛びましたが...Ryoji IKedaはフランス拠点で世界各地を巡ってパフォーマンスしているようで、ついていけないような気がしますが、一度ライブなど行ってみたいです。

2014-10-02

広告はダメでアートは良い

f:id:y_sequi:20141002162701j:image

平日平均で550万人を運ぶNYCの地下鉄は世界7位にして北米最大の規模の地下鉄。そして、そこで囚われの身となる人たちは格好の広告ターゲットとなる。これまで、それを拒否しようと数々のアーティストがゲリラ活動を試みたが、依然として広告に囲まれる状況に変わりは無い。

そんな中、アンチ広告活動の決定版としてリリースされたApp"NO AD"。AR技術を駆使し、NYC地下鉄の広告枠をスキャンするとアート作品が広告フレームに合わせて現れ、タップすると別のアートに変わる。この"NO AD"の共同ファウンダーであるJordan Seiler(元ストリートアーティスト)が100名のアーティストに呼びかけ、広告に代わって現れるアートを供給している。現在"NO AD"はNYC地下鉄内の100カ所の広告スペースに対応しているようだ。

NYC地下鉄に許可をとっていることは無いと思いますので、マーカー無しで読み取る技術が使われているのだと思います。今後は他の地下鉄網への適用を検討しているようです。

この手のプロジェクトで広告の代変えとなるのは常にアート。この夏行われた"Art Everywhere US"では全米500カ所の屋外広告スペースが著名なアート作品に置き換えられた(こちらは"NO AD"のようなゲリラ的プロジェクトではないですが)。

f:id:y_sequi:20141002162741j:image

f:id:y_sequi:20141002162740j:image

広告は嫌われ、アートは好かれています。好かれる広告、喜んで見てもらえる広告を考えなければなりません。

2014-10-01

アートと広告の境界線

f:id:y_sequi:20141001160110j:image

ラグジュアリブランドのショップは世界のメガシティの目抜き通りに出店するというのが定跡形だけど、この"Prada Marfa"は人口2,000人ほどのテキサスの小さなアートの町"Marfa"から更に60km離れたHighway90沿いの果てしない荒野の中にある。

"Prada Marfa"はElmgreen & Dragset(北欧のアーティスト)によってつくられたアート作品であり、2005年にオープンした。店内には芸術を支援するPRADAから提供された2005年モデルの高級靴やバッグがディスプレイされており、通常のPRADAショップ同様にロゴマークもある。ただ店員がおらず、常時施錠されており、客が中に入れないだけだ。

この建物はこのまま朽ち果てて廃墟になるまで放置されるというコンセプトでつくられており、現代の消費主義社会に対する皮肉的イメージになっている。尚、この作品はBallroom Marfa及びArt Production Fundが100,000ドルの資金を提供し、実現した。

f:id:y_sequi:20141001160556j:image

f:id:y_sequi:20141001160555j:image

f:id:y_sequi:20141001160553j:image

f:id:y_sequi:20141001160728j:image

このPrada Marfaを一目見ようと、多くの観光客がやって来る訳ですが、落書きや破壊行為、盗難などの被害に遭うこともあり、その都度修復された。"朽ち果てて廃墟になるまで..."というコンセプトの実現はかなり難かしそうだ。それまでに何度修復を...。

f:id:y_sequi:20141001161009j:image

そして年月を経て、2013年末、PLAYBOY Magazineが同じ道路沿いにRichard Phillipsによるアート作品を突如立ち上げた。しかし、"Texas Department of Transportation"(TxDOT)はそれを広告であると判断し、撤去を命令した。因みに撤去されたPLAYBOY Marfaは"Dallas Museum of Art"に移設された。アートで無い烙印を押された作品が美術館に引き取られるというのはどういう意味だろうか。

f:id:y_sequi:20141001161120j:image

このPLAYBOYの件をきっかけに"TxDOT"は"Prada Marfa"も広告であるとの判断を下し、撤去指令を発動したが、Marfaの人たちを中心に激しい反対運動が起こった。

f:id:y_sequi:20141001164808p:image

そんな騒動に影響を受けたかどうかわからないが、今年の4月、1人のアクティビストがPrada Marfaの壁を青いスプレーで塗り、Toms Shoesの靴を置くという事件が起こった。彼はそれを"Toms Marfa"と名づけ、"Prada Marfa"のことを"ナルシズムと非倫理的な快楽主義であり、それは将来の不幸を予言する黙示録のようだ"と罵った。

f:id:y_sequi:20141001161649j:image

f:id:y_sequi:20141001161648j:image

このような事件の中でも"アートか否か"問題についての抗議は継続され、約1年の時を経て9月中旬"Prada Marfa"が遂にアートとして認定され、今後も保存していくことが確認された。今後は"Prada Marfa"を運営している"Ballroom Marfa"が敷地をリースする形式となる。

何がアートで何が広告か...という問題は非常に難しく、この場合はファンがいるかどうか、多くの人がアートとして認識しているかどうか、みたいなことが分かれ目となった。しかし、実際、アートと広告の境界はどこにあるのだろうか?

例えばJeff Koonsの"Luxury and degradation"は洋酒の広告を油性インクでキャンバスにプリントしてあるというだけで見た目は全く同じだ。

f:id:y_sequi:20141001162134j:image

これは現代美術の父・Marcel Duchampが日常的にあるありふれたもののなかに美的なものを発見する"レディメイド"という概念(便器などをそのまま展示するようなこともあった)に少なからず影響されており、このような広告に隠された人種やセクシャリティの問題、更には消費主義の問題などのメタファーと考えられている。Koonsの作品ではないが、別のアーティストによる引用問題が訴訟に発展することもあった。

Prada MarfaもPLAYBOY Marfaも共にアーティストと呼ばれる人の作品であり、撤去されたPLAYBOYの作品も現在は美術館に移設されている正真正銘のアートであるが、正反対の結果となった。アートの正体みたいなことを考えると迷宮に入りそうです。

※追記:"Prada Marfa"はAndreas Gurskyの"Prada"を回収しているとの指摘を受けました。確かにそうですね。

f:id:y_sequi:20141002195828j:image

また、PLAYBOYの作品について個人的に考えてみたのですが、そもそもは広告だったが、"TxDOT"に否定された瞬間に"役所的エゴイズム"などの意味が発生し、アートになったのではないかと思いました。聞くところによると、Marcel Duchampの"便器"も最初はアート界から否定されたことによってコンテクストが生まれてアートになったという複雑な経緯があったようです。

f:id:y_sequi:20141002200434j:image