で、ダラダラと休んだので

半ば恒例の様に、本日の更新では書評の追加でも書こうかと思っておりまして。
と、ゆーワケで。本日の書評では、買ったばかり・読んだばかりということもあるので、先日から何度か触れている、菊池勇生氏の 「螺旋に回転する世界―He said,“LUV U 4 EVER.”」 を取り上げてみようかと思いまっす。螺旋に回転する世界―He said,“LUV U 4 EVER.”

見えぬ波が繋ぐ、似て非なる2つの世界

ある冬の寒い日に憲二の下に掛かって来た一本の電話。それは、約半年前に何者かによる連続殺人の被害者として殺害された筈の妻・響子からの電話だった。
だが、その響子の話を詳しく聞くうちに、この電話を掛けて来ている響子のいる世界と憲二のいる世界は微妙に異なる世界、いわば一種のパラレルワールドであることが判明する。しかしこの2つの世界には共通点も多く、このままでは、もう一人の響子もまた数日後には何者かによって殺害されるかも知れないことが分かる。
何としてでも、今度こそは響子の死を食い止めようと、憲二は小鳥遊司という名探偵に助力を仰ぎ、そして響子の方もまた、彼女がいる世界の憲二と共に、彼女なりの捜査を進めて行く。そして捜査を進めるに従い、一連の連続殺人の裏にある事情が明らかとなって行くのだが……。

……というのが、この作品の設定及び粗筋なんですが。
えーと、まぁこれは上の粗筋をお読みになればある程度は推測が付いてしまうかとは思うんですが……実はこの作品って、本の帯には 「ミステリー史震撼」 とか 「ドーピング探偵、降臨」 などと書いてあるものの、実際には、ミステリというよりかはSFの色が強い作品であるように私には思えましたねー。
とは言っても、だからと言ってミステリの要素が無いかと言えば、勿論そんなことは無く、サスペンスというよりは “ミステリ” というのが相応しいであろうと思われるような手法で捜査が進んだりはしてますし、この連続殺人が行われた理由等についても、非常にミステリっぽさが出てるように思えました。
また、これは作品そのものの面白さとは少し違うんですが、作中のセリフで、講談社ノベルス等のミステリを結構読んでる人とかならば、ついニヤリとしてしまうような人名や単語とかが時折出て来るあたりなんかは、ある意味 「これは “ミステリ” か否か」 という問題自体を皮肉っているようで、個人的にはついつい苦笑しつつも面白いなぁ、とも思ってしまったり。


ただねー……。
まぁ、わざわざ書評で取り上げた作品の難点を挙げるなんてのは、我ながらあまり良い趣味ではないよなぁ、とは思うんですが……それにしても、どーにもこの作品ってば、惜しいというか少々不満が残ってしまう点がチラホラと何点かあったりしまして。
まず最初に、帯にも書かれている “ドーピング探偵” の小鳥遊についてなんですが、まぁこれは今回のストーリーとの兼ね合い・相性の問題なのかも知れないんですが、これだけ派手に前面に押し出されているにも関わらず、どーにもその活躍が地味な感じがしまして。
これは、我ながらホントに悪趣味だなぁ、とは思うんですが、悪魔絵師金子一馬氏のカバーイラストと共に、帯の “ドーピング探偵” という言葉に惹かれて手を出した身としては、もうちょっと彼には活躍してほしかったなー、とか思ったり。
また、まぁこれはあまり書いてしまうとネタバレになってしまうんですが、最後のオチの付け方やパラレルワールドの設定について等、どーにも消化不良というか説明不足に思える点が多いというのも、個人的には結構不満だったりしましたねー。
パラレルワールドでも同じ事件が起きているという設定や、それぞれで連続殺人が起きている理由等、そういった部分に関しては非常に興味深いと思えただけに、このオチや設定説明の部分が不足しているというのがどーにも残念極まりないって感じでして。
ホントに贅沢だとは思うんですが、願わくば、あともうちょっと何とかしてページを増やすなどして、こういった設定等にまで踏み込んで欲しかったですかねぇ……。


まぁそんなこんなで、この作品に対する現時点での自分の評価としては、細かい部分については説明が不足しているものの、パラレルワールドでの共通の事件という基本的な設定や文章の読みやすさ等については、かなり良い出来であるし、人にオススメも出来るだけのものになっているように思えました。
ただその一方で、オチの付け方や設定の説明が不足している点に関しては、これが他の人にオススメするとなると、正直かなりキツイかなー……というのが本音のところでして。あるいはこれが、この作品の続刊等が今後発行されて、そこで十分な説明が行われるとかいうのであれば、特に問題は無いのかも知れないですけどね。
というコトで、とりあえずの評価としては、「基本設定の妙や、途中の描写及び文章の面白さなどに主観をおいて読むのであれば、特に問題は無し。ただし、世界観の設定に細かく拘ったり、オチの付け方の好みがうるさい方に対しては、手を出すか否かは今後の展開を待って判断することをオススメします」 ……ってなところですかねぇ、ハイ。


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