海水魚と淡水魚

海水魚は海水にしか住めないし、淡水魚は淡水にしか住めないと思っていたのだが、どうも違うらしい。

どうやら、こやつらは一緒の水槽で暮らせる、つまり同じ濃度の食塩水のなかで生きていけるらしいのだ。

なぜ共存できるのか。それは、淡水魚といえども一定濃度の食塩水で生きていけるし、他方で海水魚も、海水よりも薄い食塩濃度で生きていけるから。さらに言えば、両者の体液の食塩濃度は同じである。

では、淡水魚と海水魚では何が違うかと言えば、それは体内の塩分濃度の調節機構が違う。淡水魚は体内から塩分が逃げないようにする機構を持ち、海水魚は体内から塩分を排出する機構(エラ)を持っている。それぞれ、一方向の調整機構しか持っていない。

だから、淡水魚にとっては体液よりも濃い海水は致命的であり、海水魚にとっては体液よりも薄い淡水は致命的なのだ。

このへんの話は下のサイトに書いてあります。このサイトは、水ビジネスの科学的誤りへの批判を行なっているところですが、まあそっちの話は今回はおいときます。

http://atom11.phys.ocha.ac.jp/wwatch/appendix/faq2.html

で、インターネットをもうちょっと調べたら、水族館では淡水魚と海水魚を共存させるのはポピュラーな出し物のようです。あっちこちの水族館がやっている。まあ確かに、タイとコイがいっしょにいたら衝撃的だよなあ。

そうそう、この話をするのなら、海と川を行き来する鮭についても触れないわけにはいかない。

まず、サケ科にはサケ・マス・イワナなどと呼ばれる魚たちが属しているのだが、これらはもともと淡水魚に分類される。たぶん淡水で生まれるから。これらのなかには、一生淡水で暮らすもの(陸封型)と、海に出て大きく成長し川に戻ってくるもの(降海型)がいる。陸封型と降海型とでは、同じ魚種でも呼び名が異なっているらしい。たとえば、ヒメマス(湖)とベニサケ(海)は同じ魚だそうな。

ヒメマスとベニサケでは、成体の大きさはけっこう違って、ベニサケのほうがずっと大きい。海に出ると魚は大きくなる。しかし、両者は基本的に同じ種で、環境変異をしているだけなので(もはや遺伝的な差異も多少あるようだが)、ヒメマスの稚魚をベニサケの生まれるところに放流すると、当然生きていけるし、一部は海に降り、海に下ったヒメマスの稚魚はベニサケと同じように成長するらしい。

http://www.salmon.affrc.go.jp/kankobutu/srhsh/data/srhsh349.htm

ちなみに、サケ科のなかでも本格的に淡水と海水の往復に適応したものと、ハンパにしか適応していないものがいる。ギンザケは完全に適応していて、浸透圧調節機能を持っているため、ギンザケには陸封型がいないらしい。

ただ、サケは海水と淡水を行き来することはできるのだが、両者の差はサケにとってもそれなりに負担らしい。まず、淡水のなかで成魚になってしまうと、海水に適応するのは不可能のようだ。また、
鮭の養殖をするときには、まず淡水のなかで孵化させ成長させたあと、徐々に塩分を増やしていく作業が必要で(海水馴致と言う)、しかる後に海での養殖を開始するようだ。

http://www.marinepal.com/brand/ginzake.html

まとめると、だいたい以下のようになるだろう。
(1)淡水魚と海水魚が生存可能な塩分濃度には幅があり、その幅には重なる部分があるので、両者は共存可能である
(2)サケは生存可能な塩分幅が広いが、やはり無理しているので、それなりの馴れが必要である