------------  耐震偽装判決・・・偽証罪?


マンション耐震偽装事件で姉歯建築士の判決がでて、この問題に幕が引かれそうです。懲役5年・罰金180万円の量刑はともかくとして、判決要旨の中で、「議員証言法違反(偽証罪)」が問われた事は、釈然としませんでした。判決文には、木村建設姉歯被告の偽証の被害者であるかの様な記述さえあり、「木村建設の圧力があったとする姉歯被告の証言は偽証である」と断じた事は、即ち、この事件を、姉歯被告個人の犯罪と位置づけました。
捜査の過程で姉歯被告自らが、国会での証言は偽証であったと認めたそうですが、姉歯被告の国会での証言が偽証であると断じるに足る根拠、ヒューザー(マンション販売会社)木村建設(マンション設計・施工会社)総研(ホテルコンサルタント)等の関係者の不当な圧力があったか、無かったかは十分に検証されたのでしょうか?この点には、未だ少なからぬ方が疑問を持っていると思います。他の関係者は、虚偽申告やマンション販売上の詐欺などで裁かれてはいても、耐震偽装が行われるに至った本質的な容疑には問われていません。既に、半年程前、捜査は打ち切られています。
建物の安全の盾となるべき建築士の職責に背いた姉歯被告に弁解の余地はありませんが、構造計算を偽装した姉歯被告がいなければ、この事件がおきなかったのと同じように、建築設計の水上からの「理不尽な要望や条件」が無かったら、耐震偽装事件がおきなかったであろう事は想像できます。しかし、この判決によりその因果関係には蓋がされました。私も設計する際に、クライアントから経済設計に努めるように求められますし、どの程度のどの様な圧力が犯罪として成立するかの判断は難しいでしょう。しかし、販売会社・建設会社・ホテルコンサルタント・確認審査機関の責任も深く検証することが、問題の本質であった事には違いありません。本当に姉歯被告個人の犯罪だったのでしょうか?あるいは組織的な犯罪として立件するのが難しかったのでしょうか?とにかく今回の判決は、姉歯被告個人の犯罪という司法の判断でした。

耐震偽装問題を姉歯被告個人の犯罪とし、姉歯被告以外の関係者の責任が明らかにならなかった事は、結果的に、被害者救済の道を狭めてしまった様にも思えます。民事上の被害者救済では、この判決に依らず、耐震偽装問題を建築生産システム全体の問題と捉え、販売会社・建設会社・ホテルコンサルタント・検査機関を含めての責任をあらためて問い直すべきでしょう。耐震偽装問題は、姉歯被告個人の犯罪として、これで幕引きにすべき問題ではないと思います。
これに関連して、建築士法も改正されましたが、建築生産システムの法改正はなされていません。確認申請や建築の保証制度、設計と施工の完全分離など、更に多くの議論が必要です。