新宿・蠍座の「ゴダール・マニフェスト」。そして吉田喜重、田原総一朗+清水邦夫のATG作品

 1970年前後の新宿アートカルチャーの名所のひとつ、新宿文化地下の「アンダーグラウンド蠍座」のジャン=リュク・ゴダール映画特集企画「ゴダールマニフェスト」のチラシ。ゴダール映画といっても、「勝手にしやがれ」でも「気狂いピエロ」でもなく、既に商業映画を否定し、「ジガ・ヴェルトフ集団」を名乗っていた頃の作品群。商業映画時代をアンナ・カリーナ時代というのならば、この時代はアンヌ・ヴィアゼムスキー時代というのだろうか。2つ折りのチラシで、表紙はこんな感じ。

 ウィキペディアによると、「プラウダ(真実)」と「ブリティッシュ・サウンズ」はともに1971年(昭和46年)の日本公開となっている。全共闘運動など反体制機運で、まだ新宿が熱かった時代に(70年安保も終わり、余熱だったかもしれないが)、やはり革命に燃えていたゴダールがつくった映画が公開されたということだろうか。チラシを開くと、見開きで映画の内容が紹介される。

 下に出てくる「イタリアにおける闘争」もジガ・ヴェルトフ集団の映画で、こちらも日本公開は1971年(昭和46年)。もうチラシと言うよりも、ビラと言いたくなるようなものだが、この2つ折りチラシの裏表紙が面白い。

 裏は蠍座ではなくて、「アートシアター新宿文化」の宣伝で、右側の「1972年新春ロードショウ」と謳われているのは、吉田喜重監督の「告白的女優論」。ATG(アート・シアター・ギルド)が日本のアート系映画を牽引していた時代だったのです。で、それよりも面白いのが、左側の「あらかじめ失われた恋人たちよ」。タイトルの右肩に入っている白抜き文字に「田原総一朗清水邦夫共同作品」!。つまり田原、清水の共同脚本・監督作品。いまはジャーナリストの田原総一朗さん、1970年代には新進気鋭のアート系映画作家だったのだ。
 で、ジガ・ヴェルトフ集団時代のゴダール作品はDVDにはないのだろうな、と思っていたら、DVD-BOXとブルーレイBOXが、この5月に発売されるとのことで、アマゾンでは予約が始まっている。

ジャン=リュック・ゴダール+ジガ・ヴェルトフ集団 Blu-ray BOX (初回限定生産)

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 ただ、収録されているのは、「ウィークエンド」や「東風」などの劇映画が中心で、さすがに「プラウダ」や「ブリティッシュ・サウンズ」のような革命アジテーション映画は収録されていないようだった(アマゾンの商品紹介を読んだ限りでは、ないようだった)。だいたい、フィルムは残っているのだろうか。フランスは映画の保存に熱心だから、シネマテークにはあるのかな。

プラウダ (真実) - Wikipedia => http://bit.ly/HtWYMp
★ブリティッシュ・サウンズ - Wikipedia => http://bit.ly/HtWZQ
★イタリアにおける闘争 - Wikipedia => http://bit.ly/HtX46G

 一方、ATG系の作品は、「告白的女優論」も「あらかじめ失われた恋人たちよ」もDVDになっていた。映画史として保存されているのだな。それとも、ATG映画は団塊世代に根強い需要があるのだろうか。

★告白的女優論 - goo 映画 => http://bit.ly/HtXeet

告白的女優論 [DVD]

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★あらかじめ失われた恋人たちよ - goo 映画 http://bit.ly/HtXav9
あらかじめ失われた恋人たちよ [DVD]

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