副題に「
東工大モーレツ天才
助教授の悲劇」。
金融工学のパ
イオニアのひとり、
今野浩・
中央大学教授(元・
東工大教授)が教え子で、42歳で死去した
金融工学の天才、
白川浩・
東工大教授に捧げるレクイエム。愛情に溢れた筆致。大学業界(学会ではなくて、思わずギョーカイと言いたくなってしまう)の中で、ひとりの天才がいかにすり切れてしまったのかを描く。日本だけではなくて、海外でもそうなのかもしれないけど(実際、白川氏をすり潰した一人は欧州の学者だし)、学者が生き抜くには政治家でなければならないのだ。理系と文系の反目というか、文化的対立も描かれる。
金融工学という
経営学、経済学、工学、数学の一種、業際的学問にいたことも白川氏の悲劇だったのかもしれない。しかし、「天才」的行動から数々の敵をつくり、いじめられた白川氏だが、その一方で、この本の著者である今野教授をはじめ、良い先輩たちに恵まれていたとも思う。天才クンが、死の直前とはいえ、教授に駆け上がることができたのは、少数とはいえ、天才を認める先輩たちがいたから。幸せなひとでもあったのだなあ。でも、大学業界、
少子化もあり、競争激化で大変なんだなあ。学者というと、優雅な仕事というイメージがあるけど、それはテレビや映画の話で、実際は民間企業みたいに雑務に追われているんだなあ。そこで、研究に全身全霊を捧げようとすると、白川氏のように生命を削っていくことになってしまうのだろうか。