影なき殺人

影なき殺人 [DVD]

影なき殺人 [DVD]

 1947年製作のエリア・カザンの映画。実話をもとに描く、米国コネチカット州で起きた冤罪事件を描く(検事自身が警察の捜査に疑問を持って無罪を主張したので、冤罪未遂事件かもしれないが)。俳優は、正義を貫く検事にダナ・アンドリュース、警部にリー・J・コッブと、役者を揃えているが、演出はセミ・ドキュメンタリー・タッチ。容疑者に睡眠をとらせず、追及を続け、自供書にサインさせたり、どこの国でも冤罪がつくられる過程は同じなのかもしれない。科学的鑑定の誤りや捜査解決にかかる政治的・社会的圧力などもリアル。容疑者役は、アーサー・ケネディだったのか。痩せていて若くて分からなかった。検事の夫人役は、ジェーン・ワイアット。後年、お母さん役が多い人だったが、この当時は美しい若妻。
 結局、犯人は逮捕されなかったというナレーションがつき、このあたりも日本の冤罪事件と共通するものがある。検事の倫理、正義とは何かを問う映画だが、正義を貫くことがいかに大変か、という話にも読めてしまう。 エリア・カザン自身、この後、ハリウッドの赤狩り旋風の中で、倫理、正義を守ることができなかったのだから、皮肉な話。正義を語ることはできても、貫くことがどれだけ難しいか。それでも貫く気概を持たなければならないのだが。
WOWOWの作品紹介
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