Y日記

空飛ぶ教授のエコロジー日記

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2017-09-20 生物多様性観測のこれから

[]生物多様性観測のこれから

ハノイで開催された第10回GEOSS-APシンポジウムの3日間の日程を終えました。昨日は、生物多様性・生態系のセッションの議長を終日つとめ、今日は全体会議で2回ステージに登壇し、一度目は昨日のレポート、二度目はパネラーをつとめました。

今回は、中国が国をあげて推進するAOGROSSとの調整という課題と、生物多様性観測体制を実質的に拡充するためのLTERとの連携強化という大きな課題がありました。中国はもうすこしアグレッシブに成果を出してくるものと期待していたのですが、資金とマンパワーを投入し、衛星を使ってできることをひととおりやっているという印象を受けました。生物多様性・生態系の観測に関しては、はっきり言って、衛星でわかることはかなり限られるます。もちろん、衛星の強みはあり、それを生かすことはとても大事ですが、これからの生物多様性観測研究にイノベーションをもたらすのは、私は衛星観測ではないと考えています。

中国の科学は、いまや日本よりお金もマンパワーもあって、その点では勢いがあります。でも現状では、アイデアで勝負すれば日本に強みがある領域は多いように思います。いずれは、中国のぶあつい研究者層の中から、すごいアイデアを出してくる人材が生まれるでしょうから、そのときは本当に(良い意味で)脅威になると思います。

石川智士さんのエリア・ケイパビリティに関する実践をかねた研究の話は、とても魅力的でした。プロジェクトの初期にお話をうかがったことがありますが、その後研究と実践が進み、ローカルな漁業者の収入を増やし、コンフリクトを解消しながら、モニタリングを実施するというすばらしい成果が出ています。これは日本ならではの、とてもオリジナルな研究ですね。英語の論文になっていないので、早く論文を書いてくださいとお願いしました。本を出すことに時間を割いてきたので、論文が遅れたとのことでした。

に本が紹介されています。読んでみようと思います。

Future Earthが重視するtrans-disciplinary研究のひとつの新しい形だと思いました。

ホテルに戻ってから、GEOBON本部かが届いたコンセプト論文の原稿を読んでコメントしました。生物多様性観測のこれからについて書いた論文の原稿です。遺伝的多様性のセクションについては、不正確な記述にもとづいて現状批判が書かれており、まったく納得がいきません。ひとまずコメントを戻しました。全面改訂して良ければ書き直すよ、と書いておきました。また、国別の生物多様性観測ネットワークを立ち上げるうえでの標準的なプロセスが提案されているのですが、上から枠をはめる提案で、まったく納得がいきません。We need more flexible, more participatory, and more careful approaches to develop agreements with stakeholdersというコメントを送りました。

明日から、ハノイ近郊にあるBavi国立公園に移動して、植物多様性のトランセクト調査をやります。楽しみです。

2017-09-03 熱帯雨林ではなぜ葉が大きいか?

[]熱帯雨林ではなぜ葉が大きいか?

この問題について調べた論文が、サイエンス誌に発表されました。

葉の大きさの世界的傾向を分析した論文。私が学生のころにGivnishが先鞭をつけた研究が、世界規模のデータ解析で実を結びました。でも、地域内の葉の大きさのばらつきの方が、地域間よりも大きいんですよね。とくに熱帯雨林では、巨大な葉の樹木から、小型の葉の樹木まで、多様性が高い。なぜ同じ地域でこれほど葉の大きさがばらくつのかについては、未解明。おそらく食害と関係しているのだと思います。

2017-09-02 九州大学共創学部

[]九州大学共創学部がめざすもの

で紹介されているとおり、文部科学省の大学設置・学校審議会による審査の結果、九州大「共創学部」の設置が認められました。

えっ? 「共創学部」って何?

と思われた方も少なくないでしょう。私は決断科学大学院プログラムのコーディネータとして忙しくしているので、「共創学部」設置に向けてのWGには加わりませんでしたが、構想段階で提案をしたことがあります。その提案とは、Future Earthという新しい科学を軸に据え、持続可能な開発目標(SDGs)達成をになうグローバル人材を養成する学部にしてはどうかというものです。私は「地球未来学部」という名前のほうが、英語にしたときに国際的にアピールできて良いと思ったのですが、説明を受けた文部科学省の担当官が、えっ? Future Earthって何? と言ったとか言わなかったとか、その事の真偽は問わないことにして、ともかくまだFuture Earthの知名度が低く、SDGsも今ほど知られていなかったという状況の中で設置準備が進みました。その結果、「共創学部」という学部名になったのですが、「共創」は、Future Earthが重視しているCo-designの訳です。科学者が社会のさまざまなステークホルダーと協力して、社会的問題解決に貢献する新しい科学を発展させようというFuture Earthのビジョンをあらわした表現です。

上にリンクした九州大学ウェブページには、

「大規模地球変動、生物多様性の減少、宗教・民族対立など、人類は今、地球的・人類的とも言える諸課題に直面しています。こうした問題の多くは、種々の要因が複雑に絡まりあって生じているために、一つの学問体系だけでは、根本的な解決に結びつけることが困難です。」

と書かれています。この文章は、Future Earthの状況認識そのものです。「生物多様性の減少」も入っていて、まるで私が書いた文章のようですね。

というわけで、私の理解では、「共創学部」がめざすビジョンは、上記の私の提案にかなり近いものだと思います。

「共創学部」は、九大全学のさまざまな学部の協力で作られるので、強いビジョンを前面に出すというのはむつかしく、そのために「共創学部」というややあいまいな学部名になったのだと思いますが、その「建学の精神」は、Future Earthや持続可能な開発目標(SDGs)に深く関係しています。

実際に学部の教育が動き出すと、この性格はさらに鮮明になっていくだろうと予想しています。

というわけで、「共創学部」に関心をお持ちの方には、その背景にある文理融合型の新しい科学について知るために、3月に私が出版した「決断科学のすすめ 持続可能な未来に向けて社会をどうすれば変えられるか?」を一読されることをお勧めします。高校生にも読めるように、わかりやすく書きました。コラムでスター・ウォーズももクロをとりあげていますが、スター・ウォーズの話は5.3でとりあげる神話学研究の伏線ですし、ももクロの話題は、6.2 どうすればリーダーはメンバーを幸せにできるか? に関係しています。ぜひご一読ください。

第一部 人間の科学:人間とはどんな動物なのか?

第1章 進化的思考−人間と社会の理解の礎

1.1 生命の進化に学ぶイノベーションの原理

1.2 人類はどうやって暴力を減らしてきたのか

1.3 人類はどうやって自由を手にいれたのか

1.4 今の日本には「遊び」が足りない!

1.5 学力の意味−試験は何を選んでいるか?

コラム1:誰もがスター・ウォーズに心奪われる必然的理由 魅せる物語の共通点

第2章 リーダーシップ

2.1 「優れたリーダー」はなぜ少ないのか?

2.2 リーダーのあなたにビジョンと情熱はあるか?

2.3 「リーダー脳」は手抜きしない! 科学的思考の鍛え方

2.4 答えを導く「発想力」を手に入れる!

2.5 リーダーに必要な本当の思考力 正解のない問題を考える力とは?

コラム2:王道プロジェクトマネジメントが実を結んだももクロ主演『幕が上がる』

第3章 決断を科学する

3.1 運が左右する世界で成功する秘訣とは?

3.2 なぜ男性は美女の誘惑に弱いのか? 決断を支える理性と直感の役割

3.3 悲しみを喜びに、失敗を成功に変える方法

3.4 予測可能な失敗はどうすれば防げるか? 日本陸軍の失敗に学ぶ

3.5 日本が取り組むべき最優先課題は何か? 首相のリーダーシップと決断力 

コラム3:みんな、いつか個性に代わる欠点を持っている

第二部 社会の科学:私たちはどこから来て、どこへ行くのか?

第4章 私たちはどこから来て、どこへ行くのか?

4.1 6万年前に人類が手に入れた脅威の能力とは?

4.2 過去6万年間、人類の進化は加速した

4.3 ヨーロッパの人たちはなぜ近代化の先駆者になれたのか?

4.4 一目瞭然!この200年で世界はどう変わったのか

4.5 政治的対立をどうすれば乗り越えられるか? 

コラム4:SEALDsが浮き彫りにした「個」と「忠誠」の相克

第5章 持続可能な社会へ

5.1 日本人こそ知っておくべき熱帯林消失の現状

5.2 シカの増殖を抑えていたのはオオカミではなく人間だった

5.3 神話なき時代:近代の苦悩を私たちはどう乗り越えるか 

5.4 地球の危機が生み出した国際協力 

5.5 地球の未来をかけた科学者たちの挑戦 

コラム5:日本とメキシコが歩んだ正反対の150年

第6章 社会をどうすれば変えられるか

6.1 どうすれば対立を乗り越えられるか? 

6.2 どうすればリーダーはメンバーを幸せにできるか? 

6.3  EU分裂の危機は、人間の生物学的宿命なのか?

6.4  社会主義はなぜ失敗したか? 日本国憲法のルーツをたどる

6.5 どうすれば社会的ジレンマを克服できるか? 社会は災害を超えて逞しくなる

違いを認め合う社会へ

2017-08-19 第9回GEOSSAPシンポジウム

[]第9回GEOSSAPシンポジウム

9月18-20日にハノイで開催される第9回GEOSSアジア太平洋シンポジウムで生物多様性観測ネットワークWGの共同議長をつとめます。先ほど、アジェンダの最終案を作って他の共同議長に送りました。メールを確認したら、前回の連絡からすでに12日も経っていました。ToDoリストの優先順位順に粛々と仕事をしてきたのですが、引き受けている仕事が多すぎて・・・。

[]日タイ修好130年記念学術交流シンポジウム

月曜日にはバンコクに飛び、23日の午前中に以下のシンポジウムで基調講演をします。大学院時代に3ヶ月滞在したタイと日本の学術交流のお手伝いをする機会をいただき、光栄です。Where are we from and where are we going?

Perspectives for a Sustainable Society

というタイトルで1時間の講演をします。

[]クリオダイナミクス(歴史動力学)

Peter Turchinが作ったこのサイトを知らずにいた。彼の研究の足取りを追うのに役立つ。

2017-05-14 人間を理解するための教科書の構想

[]人間を理解するための教科書の構想

昨夜から屋久島に来ています。久しぶりに自分の時間が持てたので、この間少しずつ温めてきた教科書の構想を目次案にまとめてみました。これだけの内容を一人で書いていると数年かかるので、分担執筆するのが現実的です。

非常に幅広い内容を扱うことになりますが、『決断科学のすすめ 持続可能な未来に向けて社会をどうすれば変えられるか?』で書いたおかげで、全体をしっかり見通せるようになりました。分担で原稿を書いても、私が全体を見て編集すれば、首尾一貫した本になると思います。

この目次を見て、「読みたい」と思った方は、まず、『決断科学のすすめ 持続可能な未来に向けて社会をどうすれば変えられるか?』をご一読ください。7割くらいのテーマについては、この本ですでに基本的な内容を書いています(関連図書へのブックガイドも充実しています)。

『人間の行動と社会 持続可能な社会のための基礎知識』

第一部 人間の基本行動

  • 第1章 食事
  • 第2章 睡眠
  • 第3章 意思決定(直観と理性)
  • 第4章 恋愛と結婚
  • 第5章 仕事
  • 第6章 遊び
  • 第7章 学習
  • 第8章 人間の行動を規定する性格因子

第二部 人間の協力行動

  • 第9章 人間と他の動物の違い
  • 第10章 言語とコミュニケーション
  • 第11章 子育てと教育
  • 第12章 交易
  • 第13章 戦争
  • 第14章 災害の下での助け合い
  • 第15章 宗教
  • 第16章 科学

第三部 社会制度

  • 第17章 法律と国家
  • 第18章 警察と軍隊
  • 第19章 学校
  • 第20章 税と社会福祉
  • 第21章 都市計画
  • 第22章 貨幣と金融
  • 第23章 市場と企業
  • 第24章 選挙と民主主義
  • 第25章 社会制度の進歩
  • 第26章 条約と同盟−国家間の協力制度

第四部 グローバル化

  • 第27章 アフリカにおける人間の進化
  • 第28章 アフリカから世界へ
  • 第29章 農業のひろがり
  • 第30章 帝国の盛衰と文明の交流
  • 第31章 産業革命
  • 第32章 領土の分割と世界大戦
  • 第33章 長い平和と権利革命
  • 第34章 地球環境問題
  • 第35章 人口増加社会から人口減少社会へ

第五部 人間の多様性

  • 第36章 ヒトゲノムの多様化
  • 第37章 病気と健康
  • 第38章 性格の多様性
  • 第39章 価値観・道徳の多様性
  • 第40章 多様性を認め合う社会へ

今日はこれから屋久島学ソサエティの理事会に出て、午後の船で屋久島を離れます。父を亡くした母が不安をかかえているので、フィールドには出ずに福岡に戻ります。