屋久島プロジェクト現地報告会

屋久島で進めている研究プロジェクトの報告会をかねたシンポジウムを下記の日程で開催する。その打ち合わせのために屋久島に来ている。さきほど、屋久島まるごと保全協会(YOCA)のメンバーとの打ち合わせを終えて、宿に戻ったところである。

学ぼう 話そう 公開シンポジウム
屋久島の森がおかしい
〜増えるシカ、暗くなる森、滅ぶ植物〜
5月30日夜7時〜9時 屋久町総合センターホール(安房)<入場無料>

新聞折込みのちらしには、次のような趣旨説明をつけた。

いま、屋久島の森では、異変が起きています。
林内の植生が減り、場所によっては表土流出が起きています。
屋久島固有種のヤクシマタニイヌワラビは、激減して絶滅寸前の状態です。
このような異変にはヤクシカの増加が関係していると考えられます。
また、屋久島の各地の森で、林内の木が生長して林が暗くなっているようです。
屋久島の森でどのような変化が起きているのか、最新の研究成果を報告します。
どのような対策が必要なのか、みなさんと一緒に考えたいと思います。

プログラムは以下のとおり。

・7:00-7:30
 原生林の林床植物とコケは30年間でどれだけ減ったか?
  矢原徹一(九州大学)
 ※コメント:屋久島のコケ植物の現状
  秋山弘之(兵庫県人と自然の博物館
・7:30-8:20
 ヤクシカはどのように増えているか?
  松田裕之(横浜国立大学
 ※コメント:ヤクシカ管理の可能性と必要性
  立澤史郎(北海道大学
 ※コメント:全国的なシカの増加傾向とシカ管理
  常田邦彦(自然環境研究センター)
・8:20-9:00 あなたは本当にシカのせいだと思いますか?
       意見交換  司会:牧瀬一郎(YOCA)

31日には、環境省屋久自然保護事務所屋久島森林管理署・屋久島森林保全センター・鹿児島県(林務水産部森林保全課・環境生活部環境保護課)などに呼びかけて、行政向けの報告会も開催する。
屋久島では多くの研究プロジェクトが行われてきた。しかし、研究者と島民や行政との連携は、はっきり言って、弱かったと思う。
私が代表をつとめるプロジェクトでは、屋久島の植物相や森林生態系の保全に寄与することを目標に掲げているので、単に研究成果を出すだけでなく、その成果が市民や行政に生かされる仕組みを整備したいと考えている。
とはいえ、私の力不足のために、30日の日程が12日後に迫った時点での現地打ち合わせとなった。秋にも、もういちど公開シンポジウムを実施する予定なので、今後は、屋久島まるごと保全協会の月例会にできるだけ出席し、連絡を密にしたい。
第3期科学技術基本計画でも、「アウトリーチ活動」が重要視されているが、これからの「アウトリーチ活動」は、単なる公開講演会では不十分だと思う。
そもそも、「アウトリーチ活動」などという、一般市民が聞いてすぐにわからない言葉を使うのはいかがなものか。