Y日記

空飛ぶ教授のエコロジー日記

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2010-05-28 自宅

[]口蹄疫

昨夜、中国からもどり、今日は両親と実家で夕食をとった。夕食中に、宮崎県での口蹄疫発生に関するNHK特番を見た。大変な事態である。

感染初期の症状が軽かったために、正確な診断が遅れたようだが、どうしてRNA配列による遺伝子診断をしなかったのだろう。番組中でも、RNA配列に関する言及は一切なかった(ちなみに口蹄疫の病原体はRNAウイルスである)。

自宅に戻り、Google Scholorで文献を検索してみた。口蹄疫ウイルスのゲノムはすでに解読されている。

Carrillo C. et al. 2005. Comparative Genomics of Foot-and-Mouth Disease Virus. Journal of Virology, 79, p. 6487-6504. (http://jvi.asm.org/cgi/content/full/79/10/6487)

次の論文では、2001年に英国で流行したウイルスの系統樹が推定されている。

Cottam, E.M. 2006. Molecular Epidemiology of the Foot-and-Mouth Disease Virus Outbreak in the United Kingdom in 2001. Journal of Virology, 80, p. 11274-11282.(http://jvi.asm.org/cgi/content/full/80/22/11274

宮崎県で発生したのと同じO型の系統だ。プライマー配列も公表されている。

なお、Journal of Virologyの論文は、無料で見れる。

2007年の英国流行でも、同様な解析が行われている。

Cottam, E.M. 2008. Transmission Pathways of Foot-and-Mouth Disease Virus in the United Kingdom in 2007.

PLoS Pathog. 2008 April; 4(4): e1000050. (http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2277462/)

この論文も、無料で見れる。

口蹄疫ウイルスはRNAウイルスなので塩基置換速度が速く、どの農家からどの農家に感染が拡大したか、かなり正確に追跡できるようだ。感染経路に関しては次のように考察されている。

Epidemiological investigations suggest that animal movements were not involved in the transmission of virus between premises, but a variety of local spread mechanisms (such as movements of contaminated persons, objects and aerosols) could account for the transmission within each geographic and temporal cluster.

NHK番組では、靴を消毒している様子が報道されていた。もちろん靴の消毒は必要だろうが、それだけで感染拡大を防ぐことは難しいだろう。

上記のような先行研究を参照すれば、感染拡大の経路をリアルタイムで把握しながら対策を打っていくことも可能なのではないだろうか。

Wikipediahttp://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8F%A3%E8%B9%84%E7%96%AB)によれば、「家畜衛生所は拭い液や血液を厳重に梱包し小平市にある動物衛生研究所(NIAH)に直接持参し、RT-PCRで遺伝子診断を行う。遺伝子診断全過程には約半日(行政手続きも含む)かかるが、(最強の伝染力を持つOIEリスト指定の法定家畜伝染病なので)最優先で休日や夜間にも行われる。」とある。拭い液や血液を厳重に梱包してわざわざ小平市まで運ぶのは時代遅れだと思う。拭い液や血液をそのまま運ぶより、RNAlaterのような保存液につけて凍結輸送するほうが安全だろう。また、わざわざ小平市まで運ばなくても、宮崎大学などの施設で十分に分析できるはずだ。

宮崎での流行が、私の研究教育にも影響しはじめた。里山管理のためトカラヤギを飼育していたため、伊都キャンパス生物多様性保全ゾーンには立ち入り禁止措置がとられた。飼育していたトカラヤギは、今日キャンパス外に移されたが、立ち入り禁止措置は当分継続する。毎年9月にえびの高原で行っている実習については、場所を移す検討をはじめた。来週には延岡市での卒業研究生との調査を予定していた。宮崎空港経由、JRでの現地入りを予定していたが、少なくともこの計画は再検討したほうが良いだろう。延期することも含め、至急、関係者と調整する。

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