Y日記

空飛ぶ教授のエコロジー日記

 ■ウェブサイト | Gサイト |決断科学大学院プログラム |つぶやき | Facebook | 教育 | 研究 | 業績 | 新キャンパス保全 | 屋久島 | アジア保全生態学ブログ | アジア保全生態学ウェブサイト

 ■スケジュール表 | 矢原のアンテナ | 人気Blogランキング(たまにはクリックして応援してね)

2010-06-21 自宅

[]法人税引き下げ・消費税引き上げへの疑問

参議院選挙に向けて、民主党・自民党が足並みをそろえて、「法人税引き下げ・消費税引き上げ」を公約する事態となった。これでは二大政党制の意味がないではないか、と思っているのは私だけではないだろう。

日経新聞に数日前に掲載された記事によれば、法人税引き下げによって企業の業績が改善する効果はあるが、その結果生じる税収は、法人税引き下げによる税の減収を6割程度しかカバーできないそうだ。6割という推計も、私は過大評価ではないかと思う。法人税を引き下げたからといって、課税対象となる企業の利益がそんなに急に増えるものだろうか。

かりに6割が税の増収でカバーできたとしても、残る4割の減収をカバーする増税がなければ、国家財政が破たんする(すでに破たんしているとも言えるが)。だから消費税増税が必要・・・というのが、消費税引き上げ提案の背景にある事情だ。高齢者福祉のために必要だというような欺瞞的説明を、よもや菅直人首相の口から聞こうとは思わなかった。福祉目的税にすると主張するなら筋はとおるが、その場合には法人税引き下げによる減収をどうやって補填するかをはっきり説明する必要がある。

企業の国際競争力を高めるには欧米並みに法人税を引き下げることが必要だと主張されているが、日本は消費税が欧米よりずっと安いのだから、日本にオフィスを置く企業は、この利点を享受しているはずだ。そのことを言わずに、法人税が高いという点だけを言うのはおかしい。マクドナルドだって、FeDEXだって、日本支社は安い消費税の恩恵を受けている。法人税を引き下げて海外から企業を呼び込む必要があるという説明には、さらに疑問を感じる。日本の市場に魅力を感じる多国籍企業の多くはすでに日本進出を果たしていると思うし、これからの投資先としては、かりに日本で法人税が引き下げられても、中国・インドなど成長著しい国のほうが魅力的だ。日本を「素通り」していると言われる外資を、法人税引き下げによってどれだけ日本に呼び込むことができるだろうか。欧米からの留学生がなかなか日本に来ないのと同じで、「外資の素通り」の背景には、構造的な問題があると思う。法人税引き下げによって状況が大きく変化するとは考えにくい。

私は経済の専門家ではないが、国家財政が破たん寸前の状態で、法人税を引き下げるのは無謀ではないかと思う。

法人税引き下げと消費税増税でバランスをとれば、平均的にはニュートラルだが、個々の企業にとっては、大きなダメージを受けるケースも少なくないだろう。本のように、価格表示を印刷している商品については、表示をすべて印刷しなおすコストがかかる。郵送料のコスト増加も、経済への大きなダメージを与える。財政基盤の弱い中小企業やNPOなどにとって、郵送費増が大きな負担になることは言うまでもない。日本生態学会などの学会にとっても、雑誌の郵送料金がかさむのは、深刻な負担増だ。

法人税引き下げをせずに、消費税増税だけを実施して、国家財政をたてなおすという主張なら、筋は通る。ただし、なぜ所得税・相続税を増税しないのかという疑問が残る。食料品非課税、低所得者層への還付などの緩和策をとったとしても、やはり逆累進性の税である。私は、資本主義社会における税の重要な役割は、所得の再分配に置くべきだと考える。この観点からは、所得税・相続税中心の税体系が望ましい。消費税をやめろとは言わないが、所得税・相続税に手をつけずに、消費税だけを増税するのは、格差拡大につながるので反対だ。

私は、所得税・相続税を段階的に増税するとともに、納税者番号制を導入して、税の捕捉力を高めるのが良いと思う。このような選択肢を含めて、国民的な議論が必要だ。その議論を省略して、二大政党が選挙にあたって法人税引き下げ・消費税引き上げをそろって主張するのは困る。

今回の選挙は、二大政党のどちらも票を減らすという結果に終わるのではないか。

政権交代をしたことは良かった。核密約の存在が明らかになったし、官房機密費が政治家や政治評論家にばらまかれていたことも、オープンになった。事業仕分けで査定しても、民主党マニフェストで主張したほど、財源が出てこないこともわかった。政治の透明性は、格段に高まった。この流れは、もはや止めようがない。

このような政権交代の成果のうえに立って、二大政党は国民に、基本的な選択肢を示す責務がある。菅首相も認めるように、経済学は物理学と違って正解がない学問だ。理論的には、複数の最適解がある場合が多いし、また最適解がちょっとした条件の変化で最適でなくなることもしばしばである。「法人税引き下げ・消費税増税」だけがいまの日本経済を救う最適解だ、などという主張には、根拠がない。いくつもの選択肢があり、どれが最適かを決めるのは、科学的には難しい。だからこそ、政治的決断が必要なのだ。その決断の方向性について、選択できる複数のオプションを提示するのが、二大政党の役割ではないのか。

その役割を放棄し、4年間消費税を上げないという衆院選公約を反故にした民主党の支持率は、一気に下がった。まだ50%程度あるが、40%を割るのもそう遠くないのではないか。

あすな郎あすな郎 2010/12/17 20:59  素人考えで申し訳ないのですが、今回の法人税減税・個人所得税増税は、当期利益の増大に拍車をかけるわけですから、雇用や個人所得がさらに悪化するという問題がありそうですが、実はさらに日本の大手企業も実は大打撃を受ける(そしてこれが本当の狙い)気がするのですがどうなのでしょうか?
 何となくですが、日本の企業流出を止めるという効果ではなく、これで外国資本による日本企業の簒奪・利益の海外への吸い上げが大幅に加速されるような気がするのです。
 経団連あたりはこれが自分に大幅に有利に働くように考えているようですが、これは逆で海外に利益を吸い上げられて上場企業の大きな衰退・大型倒産が続発するように思えるのです。
 素人ですからそんな勘がするだけなのですが、実際のところどうなのでしょうか?