予算1割減は愚策

この機会に書いておきたい。大学の予算もふくめて、各省の概算要求を一律一割減に決めた政府の方針は愚策中の愚策。菅内閣がここまで愚かだとは予想しなかった。はっきりいって、あほだ。
一割というのはとんでもない数字だ。人件費の比率が高い大学の運営交付金の場合、一割削られれば、人件費以外で吸収するのは難しい。単純に考えれば、一割の人員を削減せざるを得ない。一割削減とは、1000人の教員がいる大学で、100人を減らすということだ。わが九大理学部生物学科の場合、12の研究室があるので、少なくとも1研究室は廃止するということだ。
こうして削った予算を使って、政策コンテストをして、成長分野に投資するという話は、さらにばかばかしい。そもそも政府が成長戦略に大型予算を投入するという発想に、私は賛成できない。
家計にたとえれば、子供の教育費を一割削って、もうかる保障のない新しい商売を始めようという話だ。
経済成長をけん引するイノベーションを、政府の投資で短期に実現するのは、はっきり言って困難だ。そんな投資は、バクチにもならない。
長期的な成長をまじめに考えるなら、教育こそ投資すべき領域だ。その教育予算を一割削って、「成長戦略」に使うなどという発想は、いったい誰が考えたのだろうか。財務省がそこまで愚かだとは考えにくいので、政府の発想なのだろう。これが「政治主導」なら、そんな政治はすぐにやめてほしいものだ。
ともかく、一律一割減について、大学関係者は声をあげて反対すべきだ。