漁港に人だかりができていて、近づいてみると深海魚があがったと騒ぎになっている。深海魚と呼ばれているものは、2メートルほどの丈があり、形はシイタケそっくりだ。キノコでいうひだの裏の部分がエラになっているらしい。

もう1匹あがった深海魚は、どうみても老人にしかみえない。角刈りの白髪で、杉原輝雄によく似ている。
その深海魚(と呼ばれているが、私は人だろうと思っている)はぐったりとしていたが、よろけながら立ち上がり、タクシーをつかまえて乗りこみどこかへ行ってしまった。