平日の記録



誕生日恒例のディズニーリゾートはシーの方へ。数日前から雨の予報に気を揉んでいたのが一日もった。写真は入った時と出た時、イースターの飾りの前でと、至る所でキャストが振っていた35周年の旗を持たせてもらって。


まずはこれまた恒例のS.S.コロンビア・ダイニングルームでランチ。スパークリングワインに、35周年のスペシャルセットは見慣れたメニューにクスクスのサラダやオマール海老の柚子風味焼きなどが加わったもの。35とのロゴが付いたグラスデザートのプレートを誕生日仕様にしてくれた。


夜のショーを待つのに入ったザザンビーニ・ブラザーズ・リストランテで、白ワインにティラミスロールケーキ。明治提供のお店だけあってか、クリームなどなかなか美味。
帰り際にはマンマ・ビスコティーズ・ベーカリーで、翌日の朝用にアップルカスタードデニッシュとブルーベリーデニッシュ。同居人がポップコーンのバケットに入れて持ち帰ってくれたおかげで崩れずに済んだ(笑)

ファントム・スレッド



冒頭、屋敷の窓を開け照明を点け「皆さん」に挨拶して回るシリル(レズリー・マンヴィル)と、身支度をし一人一人の名を呼び降りて行くレイノルズ・ウッドコック(ダニエル・デイ=ルイス)で「ハウス」はいわば両の縁から満ち満ち、二人以外の何者かが入る余地は無いだろうと思わせられる。まさか「I live here」と言い続ける女が現れようとは。


朝食の場面を締めるシリルの真正面からの顔は、ハウスに招き入れた亡霊候補を覚悟の上できちんと見るそれだ(対してハウスの外の存在であるヘンリエッタを迎える時には目を伏せる)。彼女が帳面に書き留める「アルマ」の文字が私には始まりだった。ある女が亡霊候補に加わった瞬間。


続く物語はさしずめ「ウッドコック氏の大冒険」とでも言ったところか。シンプルな話である。女達を亡霊にしてきた彼が母親のそれを消し去る場面のぞっとさせられること。翌朝彼がアルマ(ヴィッキー・クリープス)の足元で結婚を申し込む部屋の、陽の光に晒されたウェディングドレスは何とも平凡に感じられ、冒険に乗り出した彼が力を失ったことが分かる。代わりに得たのは例えば大晦日のような狂騒である。


「クライマックス」は勿論、アルマがエプロンを外す艶めかしい姿からの、ウッドコックが大嫌いな匂いをしっかり嗅いでからの(あの被虐!)咀嚼である。冒頭の朝食の席で、前任の女がウッドコックに甘いパンを勧めて疎まれるが、「私ほど長く立っていられる女はいない」アルマはあの干渉を意識的にやってのけ、発展させ、愛の営みにまで持って行くことができる。俗な言い方をすれば、本を手にする姿を見せるのが前戯なわけだ。


映画は耳障りな音に始まったものだ。他人と暮らすとは自分のじゃない音がするということ(ウッドコックは自身では平気で大きな音を立てる)。シリルの「私と口論しても勝てない、徹底的に批判して叩きのめす」に表れているのは、「わずらわされたくないが女を置いておきたい」との勝手を前にした当人と姉との高低差である(彼女は普段、それを用いる気はさらさら無いが)。だから「された事実は消えない」に対して「頑張ることね」なんて言えるのだ。


「ハウス」を外から金で支える(ことのできる)ヘンリエッタやバーバラの場面がやけに心に残り、さすがと思う反面、彼女達が幸福そうには描かれていないところに、ポール・トーマス・アンダーソンって、いや今回の映画に表れた彼って私は好きになれないなと思った(笑)そもそもさじ加減が絶妙だから目立たないけれど、えーまた女の方が色々すんの?めんどくさ!って話だし。続く「シック」の時代をウッドコックはどう生きたろうか、何らかの面倒に耐えたろうか。