ユリイカ第37巻第4号、2005年04月号(青土社amazon.co.jp)#0333
☆特集=ブログ作法


いつにも増して身近なテーマであるだけに、手元の雑誌をめくりながら、距離感をはかりかねることしばし。扱われているテーマの端の端とはいえ、その渦中に片足を突っ込んでいるのがこの感じの原因だろうか。


という御託はともかく、いつものように目次を眺め、最初のページから読み始める。本号では、第10回を数える中原中也賞の発表(受賞作は、三角みづ紀『オウバアキル』〔思潮社、2004/11、amazon.co.jp〕)につづき、柏倉康夫「生成するマラルメ 20」、細馬宏道「絵はがきの時代 11」、清水昶「俳句航海日誌百句」、四方田犬彦パレスチナ・スイート——Palestine Suite」、竹西寛子「三月の雪」が掲載されており、四方田さんの詩のとりわけ第三歌が印象に残る。


いつになく長くかろやかな特集巻頭座談「激突!はてな頂上作戦」は、吉田アミさん(id:amiyoshida)、鈴木謙介さん(id:charlie_k)、仲俣暁生さん(id:solar)、栗原裕一郎さん(id:ykurihara)によるもの。各種の用語に註を入れなくて大丈夫かしら、と思ったりもしたのだけれど、よく考えたら他の特集の対談でも専門用語だからとていちいち註がはいることはないのだからこれはこれでよろしいのか、と妙な納得をする。


座談ではインターネット前後のパソコン通信事情などにも言及されている。パソコンにCD-ROMが搭載されはじめ、巷で「マルチメディア」という言葉が喧伝されたのもいまでは懐かしいことで、当時の感覚でも相当胡散臭い——いまみたらなおのこと——絵本ソフト(クリッカブルなグラフィックによる紙芝居風ソフト)が大量につくられていたことを思い出す。ゲーム開発者という仕事柄、そうしたソフトにかなり目を通したのだが、どうしてこげなものがこの価格で流通しているのか? と思うようなものも多々あった(松岡正剛氏が監修したソフトなんてのもありました)。


それはともかく。この座談ならびに特集の記事を読みながら思ったのは、ブログというツールの用途は文字通り十人十色で、そこではあらゆるものがごった煮状に共存しているのだな、というミモフタモナカミモナイことであった。西島大介さんによる表紙イラストは、そんな状況を巧みに表現しているように思う。


それもそのはずで、コンピュータを使って何をするか? ということのうちには、使い手のライフスタイルからものの考え方までがまるごと/部分的に反映されるのと同じで、ブログを開設して何を記すか? ということのうちには、書き手のライフスタイルからものの考え方までがまるごと/部分的に反映されている。日々の出来事を記す者もあれば、作品を提示する者もあり、ニュースを解説する者もあれば、消費生活の内容を開陳する者もある。他人の目を気にする人もあれば、気にしない人もある。要するに何を目指して何を書く(描く・演奏する etc)のかという《表現への意志》みたいなものが自ずとあらわれる次第。


だからもしブログに作法なるものがあるとすれば、この道具を使うさいの心構えをどのように設定するか/しないかという文脈次第で作法もおのずと違ってくるにちがいない。


栗原さんからご指名をいただいて相棒・吉川浩満id:clinamen)とともに、「ブログ・ガイド100@2005」に、「人文系」という文章を寄稿したのだけれど、そのさい上記のようなことを考えた。そこでおおざっぱに「人文系」とくくることができそうなブログをピックアップして、それぞれのブログ作法の特徴で分類を施すという荒業を使ってみたのだった。もちろん、どのブログもきれいに分類できるようなものではないけれど、原稿にも書いたように、たしかに作法の違いがあることが見て取れたのは自分にとって収穫だった。


というのは、拙稿の狭い話。でも、特集全体を眺めわたすと、主題や観点はさまざまだけれど、結局のところ編者のねらいどおり(?)さまざまなブログ作法=表現への意志のカタログになっていて参考になる。「ブログ・ガイド100@2005」はどのジャンルも未チェックのものが多く——というか、自分にとって有益なブログをどう探すかということもなかなか骨の折れる課題なのだ(も少しブログ検索エンジンが発達すると事態は良好になるだろうか?)——ありがたい。これを機にユリイカのレギュラー・コーナーとして「今月のブログ10選」(あるいはウェブサイトでもよいわけだけれど)を立ち上げて目利きにコメントつきで内外のブログを紹介していただくというのはどうだろうか?


好き勝手に使っているユーザーの一人としては、みなさんが何をどう考えてブログを使い込んでいるのか/それを眺めているのか、ということが垣間見えて興味深い特集でありました。次号の特集は「人形愛」。


「作法」シリーズの次回は、そろそろ「モテ作法」でしょうか(嘘)。


青土社 > 『ユリイカ』 > 2005年4月号
 http://www.seidosha.co.jp/eureka/200504/


⇒おまえにハートブレイク☆オーバードライブ > 2005/03/28 > 『ユリイカ』4月号
 http://d.hatena.ne.jp/ykurihara/20050328#1111943820