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2008-06-01 インター・マス・コミュニケーションの時代?

[][][][]インター・マス・コミュニケーションの時代? インター・マス・コミュニケーションの時代?を含むブックマーク


InterCommunication』2008年summer最終号「特集=コミュニケーションの未来」NTT出版ISBN:B00187YSWA)に「コミュニケーションの思想——バベルの塔からバベルの図書館へ」を寄稿した。


この雑誌が1992年に創刊されたとき、私は大学生だった。そこで電子メールやインターネットのファイル共有の仕組み(当時はまだWorld Wide Webは開発中で一般に使われていなかった)に触れて、漠然と新しい波が到来しつつあることを感じながらも、まだなにがどうなるのかよくわからずに、図書館の本を端から読んだり(というとなんだかすさまじいけれど、当時はまだキャンパスができたてで、図書館といってもろくに本がなかったのだ)、プログラムを組んだりしていた。


書きながら思い出したのだけれど、村井純の講義で「インターネットをどう活用したらよいか?」という設問でレポート課題が出たことがある。テッド・ネルソンのザナドゥ計画とミシェル・フーコーの言うアルシーヴが電子的に充実してくれたらうれしいといったことを書いていたのだから、他力本願もよいところだ。


その同じキャンパスでは、小此木啓吾がフロイトを講義し、富永健一が社会学を教え、竹中平蔵が経済を、槇文彦が建築を、藤幡正樹メディアアートを、岡田隆彦が現代美術を、江藤淳が明治の新聞小説を、わが師・赤木昭夫相対性理論量子論を教えていた。世間のことも学問のこともまだよくわからない(いまだってわからないが)学生の目には、それまで縦割りでバラバラであったように思えた諸学が踵を接して、さまざまにリンクしあっている/しあっていない様、百学連環の現状が見えるような気がしてくらくらするような体験だった。


InterCommunicationという雑誌は、そうした環境とも似て、サイエンス、アート、テクノロジー、思想がわかったようなわからないような形で絡み合っている状態を毎号見せてくれていた。やはり先ごろ終刊した『10+1』INAX出版)も、軸足は建築に置いているものの、単に建築や建築学に収まらないなにかを引きよせてつめこんでいたように思う。私の好みを言えば、こうした、複雑に絡み合っているコンピュータのケーブルのような状態のものを、読み手がそれぞれ一本一本選りわけて、「ははぁ、ここはこっちにつながっているんですな」などと言いながら頭の中にマップを作ってゆくように読むものが好きだ。そういう好みからすると、昨今の日本における雑誌は、いささかセグメンテーションが強く、配線がすっきりわかりやすすぎるものが多いような気がしなくもない。


そのInterCommunicationも終刊である。今回は、企画のはやい段階から編集長の柴さんにお声かけをいただいて、編集部の小船井さんともども、何度か企画全体のアイディア出しに参加した。


そのときはよもやこれが最終号とも知らず、無責任なオオブロシキを広げながら、「コミュニケーションを特集するなら、本誌の毎号の特集そのものがコミュニケーションの或る側面を切り取っているのだから、既刊の各号の記事へのリンクを張るようなページも作ってみてはどうだろう」などと思いつきを申し上げた。今にして思えば、なにか幕引きにふさわしい案であったようにも思うけれど、時間の制約上、今回の号では実現できなかった。このとき念頭にあったのは、思想の科学の総索引のように、雑誌の総体をアーカイヴとして再活性化させるためのツールを提供することだった。


一方、私のほうでは「コミュニケーションの思想」という題目で、思想史をコミュニケーションという観点から総さらいしてみようと思ったものの、スタートを切ったのが遅すぎて前々号のエコロジー特集のようなわけにはいかなかった。まったく不十分ながら、今回の原稿にも「関連作品年表」をつけてみたので、この方面での探究のさいには足がかりの一つにしていただけたら幸いだ。この年表は、当初念頭に置いていたものへとヴァージョンアップした形で改めて発表できればと思っている。


バックナンバーには、資料性の高い号や意外な執筆者が寄稿している号もあるので、本号巻末の総目次を一読すると発見があるにちがいない。すでに品切れで入手できないバックナンバーも少なくないので入手はお早めに。


目次


特集 コミュニケーションの未来


◆対談

アレクサンダー・ゲルマン+佐藤雅彦「コミュニケーションが成立するのは、コップが落ちるスレスレのバランス」


長沼毅+佐々木晶「宇宙生命の可能性と、人類と宇宙生命とのコミュニケーションの(不)可能性をめぐって」


菊地成孔後藤繁雄「美食・女・音楽 ―― 快楽のコミュニケーション」


荻上チキ+ドミニク・チェン+濱野智史「コミュニケーションの未来 ―― ゼロ年代のメディアの風景」


◆テキスト

山本貴光「コミュニケーションの思想 ―― バベルの塔からバベルの図書館へ」


フォルカー・グラスムック「インターネット著作権の現在」(小口尚思訳)


山形浩生「クリエイティブクラスって何?」


馬場正尊「サッカーは都市空間のアナロジーたりうるか?」


伊藤高「ある書体の物語 ―― 「Helvetica」以前・以後」


松井勝正「壁に書かれた暗号 ―― バロックのインターフェイス」


安冨歩「友だちのつくり方」


椹木野衣「私説・コミュニケーションの現在 ―― 内藤ルネ、クラウス・ディンガーそして小池一誠」


須田泰成「携帯コメディは、ソーシャル・デザインの夢を見るか?」


西川アサキ「なぜ、モップと語り合えないのか?」


濱野智史「「ニコニコ動画」をめぐる冒険 ―― 「擬似同期型アーキテクチャ≒複製技術 II 」のアーキテクチャ分析」


濱野智史「ソーシャルウェア生態系マップ」


荻上チキ「可能なるネット・リテラシー


◆連載

パラレル・リアリティ 最終回

藤幡正樹「デジタルのパラダイム


片隅の啓蒙 最終回

稲葉振一郎「何でも高い街ニューヨークから」


ICC presents

オープン・スペース2008


「オープン・スペース2008」レヴュー「新しい教育の場の可能性へ」毛利嘉孝


「サイレント・ダイアローグ ―― 見えないコミュニケーション」展 関連イヴェント


ICCオープン・サロン

「STEIM@ICC」レクチャー


ICC開館10周年記念セッション・シリーズ Vol.4

デモ・パーティ「Media Explosion !! 」


ICC開館10周年記念セッション・シリーズ Vol.5

ライヴ「∞(Open End)」


ICCマッシュ・アップ・アート・コンテスト 受賞作品発表


◆季刊『インターコミュニケーション』総目次 0号−65号


NTT出版 > 『InterCommunication

 http://www.nttpub.co.jp/ic/ic001.php


NTT出版 > 『季刊インターコミュニケーション』休刊のお知らせ

 http://www.nttpub.co.jp/information/ic_e.html


【追記】2008/06/01

同号へ寄稿している荻上チキさんと濱野智史さんのエントリーです。


荻上式 > 2008/05/28

 http://d.hatena.ne.jp/seijotcp/20080528


⇒濱野智史の個人ウェブサイト@hatena > 2008/05/27

 http://d.hatena.ne.jp/shamano/20080527/1211905792

mitsurusugayamitsurusugaya 2008/06/02 19:24 山本さま

 このたびは、ご著書をご恵送いただき、ありがとうございました。丁重なお手紙も同封いただき、身に余る光栄です。

 この本に影響を与えたかもしれない『こんにちはマイコン』は、ぼくにとって初めての「学習マンガ」でしたが、この作品以来、ずっと「わかりやすいメディア」としてのマンガにこだわりつづけ、とうとう大学に入り社会人学生として、卒論で学習マンガを扱うところまで来てしまいました。

 老眼にムチうってパソコンに向かい、Excelの画面に展開されたデータと睨めっこしている状態ですが、お送りいただいたご著書とお手紙のおかげで、少し元気が出てきたところです。どうもありがとうございました。

 3年前、大学(早稲田大学人間科学部eスクール)に入学した直後、Javaのプログラミングを受講しましたが、そのとき、この本のような方法で書かれたJavaの入門書があったら良かったのになあ……などと考えていたところです。CPadもJavaのプログラミングでお世話になりましたので、時間がとれたらご著書を参考にC++にもクビを突っ込んでみたいと思います。

 もういちど、ありがとうございました。

  すがやみつる

yakumoizuruyakumoizuru 2008/06/02 21:39 すがやみつる先生、コメントをありがとうございます!

すがや先生のマンガから圧倒的な影響を受けて育ち、果てはゲーム業界で仕事をするに至った身には、これ以上の光栄はございませぬ。

常に新しい挑戦をするすがや先生の姿をサイトなどで拝見しつつ、「つぎはなにをなさるのだろう?」と刮目させていただいておりました。

学習マンガのご研究も、機会がありましたらぜひ拝読したく存じます。

山本貴光

(このたびの拙著を企画するにあたっては、編集担当をしてくださった瀧澤さんともども、かつて多大な恩恵を被ったすがやみつる先生の『こんにちはマイコン』のような書物を作りたいと話し合っていたのでした。これについては、別途エントリに記したいと思います>みなさま)