厄年日誌

私のライフワークブログです。途中まで学生時代の記事です。

濾布生地の特徴

前回記事のポリエステル生地は遠心分離機の濾布であるが、海外の雑誌*に各濾布生地の特徴が載せてあったので、紹介する。下記の表は酸耐性とアルカリ耐性と推奨上限温度(温度耐性)、柔軟性と摩耗性、特徴を示す。前回記事でポリエステル生地とポリプロピレン生地が出てきたので、それらの内容を見てみる。

ろ布生地の特徴

ポリエステル生地 : 酸化物に高い耐性有。濃縮した硝酸や硫酸を除いて、酸への良い耐性を持つ。溶剤への高い耐性も持つ。加水分解を起こす。

ポリプロピレン生地 : 他全ての生地より低い密度を示す。芳香族炭化水素や塩化炭化水素を除いてアルカリや酸、多くの溶剤に抵抗を持つ。

前回記事のケースだと水酸化ナトリウム水溶液と硫酸を使用しているケースなので、この表からも不適であり、ポリプロピレン生地の方が適している事が分かる。只、ポリプロピレン生地の推奨上限温度がポリエステルより低いので注意が必要である。又、この表からポリプロピレンと似た生地にポリエチレン生地やサラン生地(サランラップと同じポリ塩化ビニリデン)がある事を知った。

 

* : CHEMICAL ENGINEERING March 2022 p44(Engineering Practice)

ポリエステルの分解と分解部

担当の化学工場の反応工程以外の工程で、意図せず精製に使用されるポリエステルの生地が工程液により引き裂かれる事が起きた。

生地の状態を見ると機械的ではなく化学的な要因で裂けている事が分かった。工程液では水酸化ナトリウム水溶液や硫酸を含んだカルボン酸があり、このどちらかが原因となる。この仮説を確認する為実際に両方の液(水酸化ナトリウム水溶液&希硫酸)を用意し、液中にポリエステル生地を浸漬させかつ一定温度で加熱し、生地状態を確認した(実際のテスト写真等の具体的な情報は都合上開示出来ない)。テストの結果、ポリエステル生地は水酸化ナトリウム水溶液内で一定温度をかけると完全に溶解した(跡形なし)。硫酸では、ポリエステル生地は粉々になった(跡形あり)。これらに理屈を与える為、裏付けを与える情報を探した。エステルは一般的に水酸化ナトリウム水溶液で加水分解する事は分かっているが、これはポリエステルでも起こる事であろうか。

下記のリンク先にプラスチックの分解のメカニズムが説明されていたので紹介する。

(1)加水分解
水分によって分解することを加水分解という(図2)。分子鎖にエステル結合または炭酸エステル結合(注2)を有するプラスチック(ポリエステル、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート)は高温水や高温蒸気中では加水分解による劣化が起きる。アルカリ性薬液の存在下では加水分解劣化はさらに促進される。温度が高いほど短時間で加水分解する傾向がある。

図2 加水分解

図2 加水分解

(2)酸化分解
プラスチックは強酸性薬液(強い酸性の薬液のこと)と接すると酸化作用により酸化分解する(図3)。薬液としては濃塩酸、濃硫酸、濃硝酸などがある。温度が高いほど短時間で酸化分解する傾向がある。

図3 酸化分解

https://plabase.com/news/6618

ポリエステル(プラスチックの一種)は水酸化ナトリウム水溶液で加水分解し、硫酸で酸化分解している事が分かった(自分の仮説通り)。加水分解した後、ポリエステルはカルボン酸ナトリウムとなり、水に完全溶解したという事になる。酸化分解はよく理解出来ないが、現象から考察するとポリエステルのエステル結合が強酸により酸化されやすい分子鎖という事になる(=(芳香族含む)炭化水素では酸化分解が起きない)。これは、ポリエステル生地のテストと同じ内容でポリプロピレン生地でも浸漬テストを実施した所(※)酸化分解が全く起きなかった事で、証明される。

(※工程液にポリエステル生地が耐えられない事が想定された為、念の為対策生地案として実施)

自分を見つめてみた2

前回、自分の強みを見極めるクリフトンストレングステストで戦略的思考力に強みがあるという結果となりました。このテストはあくまで始まりなので、自分の強みを他の人と共有しコーチングを受けながらこの強みを日々生かす必要があります。

ここからは私自身の分析となりますので、皆さんがあまり興味を持てない内容となります。良ければお付き合い下さい。私の上位5つの上位資質は、1. 個別化 2. 着想 3. ポジティブ 4. 成長促進 5. 未来志向です。それぞれの資質で卓越している部分を書き出していきます(上位資質の洞察)。

  1. 個別化 : 他人の希望、恐れ、喜び、悲しみへの直感的な理解。人の行動要因の究明。特定の機会、問題、提案された解決策の合理的な推論と論理的な評価での人の支援。
  2. 着想 : 情報、事実、データの客観的な考慮。アイデア、理論、プロセスを最も基本的な要素までそぎ落とした上での洞察(=革新的な思考)。
  3. ポジティブ : 他人の長所を見つける事。楽観的な人生観。人への励まし。聞く姿勢。
  4. 成長促進 : 子供の世話、個性尊重。えこひいきしない。
  5. 未来志向 : 自分のキャリアコントロール。思索にふける事(=自分のアイデアの追究)。自分の特化した能力や知識による問題解決の代替案提案。

ここからはこれら上位資質の成長方法です。

  1. 個別化 : 異なるタイプの集団をまとめ、生産性の高いチーム作り。
  2. 着想 : 一見共通点のない現象に関連性を見出すこと。
  3. ポジティブ : 他人に活気を吹き込み、やる気を起こさせること。
  4. 成長促進 : 子供を含めた他人の可能性を見出し、それを育てること。
  5. 未来志向 : 未来についてのビジョンを語ること。

自分を見つめてみた

転職とか色々自分の将来を考えている内に、クリフトンストレングステストというのがあるとの事より、自分を見つめるために下記リンク先にてクリフトンストレングス34を受けてみた。

クリフトンストレングス・テスト
自分の強みは何かを考えることはやめてそれを知ることから始めます。ギャラップのテストはあなたの生来の才能を特定します。その結果、仕事でのパフォーマンス向上、密接な人間関係の構築、個人としての成長を実現できます。

store.gallup.com

 

結果

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テスト結果は戦略的思考力に強みがあるとの事でした。まとめると、未来を見通す考え方が得意という事の様です。私の仕事は化学工場のプロセス改善なので、新技術導入にこの強みが生かされているのかもしれません。副業的に(化学メーカーを中心とした)株式取引もしているのでそちらの方が生かされている気もしますが。人間関係構築力が次点ですが、これは仕事をやる上で必要であり、今の所出来ているので自分の能力の再確認が出来ました。弱みは社交性でした、これは性格なのでしょうがないですね。

自分の置かれている状況で少し変わるみたいなので、2~3年後また受けてみて自分の本当の強みを見つめてみます。

人生戦略メモ

2022年4月で、所属企業に入社し10年経つので、過去の自分のやりたかった事と得意だった事より私の今後の人生戦略を考えます。なお、全然大層なものではありません。

〈青年時の夢と得意だった事〉

・化学に無限の可能性を感じ、専門に選んだ(原子の組合でどんな素材もできると思った)
・社会課題を解決する事業に携わりたかった/社会に影響がある程度の規模で仕事したかった(○○○億円規模、でも国営/財閥系企業は嫌い←しがらみが多いと思い)
・夫婦が子育てしながら働ける環境を模索したかった(特に女性が働きながら)

●受験科目で物理と化学が得意。その次が数学。英語が苦手。

〈社会人の夢と出来る事〉

・(化学製品/素材の中で)量産化出来ないのを量産したい(プロセス開発)。化学工学が好きだから、出来れば技術者の立場で携わりたい(大学で研究した水処理は既に技術が確立されているのでNG)。

・今後の社会課題を解決する(ビジネスになる)仕事をしたい。起業や研究をやりたい訳ではない(これらは単なる手段)。

●プロセス/機器設計が得意。これらの業務を一通り出来る(プロセス改善出来るレベル)。

<外部環境で気づいた事>

既存の化学分野では世界最先端(博士課程レベル)でなければ、未来は無い。日本は貧しいので予算上大学や研究所で最先端を狙う事は難しく、ニッチな分野に誰よりも早く着手し、予算や特許で圧倒的な差をつけて、事業をするが適。

 

現時点での結論

所属企業の担当化学製品の量産担当が適(量産化技術未確立)。この製品のプロジェクトが遂行されなければ、上記希望を満たす条件の転職を含め、今後の身の振り方を考える。頑張っても自分の人生戦略が未達となる場合、仕事/ビジネスでの活躍を諦め芸術で表現したい事を見つける事とし、コツコツと作品を作っていく(節約生活となる)。水墨画・水彩画のハイブリッド作品が良いかも。

アルコールの縮合重合

担当の化学工場で、反応工程以外の工程で意図せず、カルボン酸ナトリウム塩の存在下で加熱脱水するとアルコールの縮合重合が起こる(エーテルの高分子が出来る)。理由が分からない。

高校の参考書*1に、アルコールと濃硫酸(脱水剤)との反応ではアルコールが過剰で比較的低温ではエーテルが出来る、とある。濃硫酸の様な脱水剤でアルコールからエーテルが出来るのは分かったが、エステルを加水分解した後のカルボン酸ナトリウム塩存在下で出来る理由が分からない。因みに、カルボン酸ナトリウム塩が無い状態だと加熱脱水してもエーテルは出来ていない。

今回色々調べてみても理由は分からなかったが、カルボン酸ナトリウム塩が存在する事でアルコールの縮合重合が起こった事は事実なので、ずっと疑問として持っておこう。いつか理由が分かるかもしれないから。

*1 : 理系大学受験 化学Ⅰ・Ⅱの新研究 卜部吉庸著 2005年第6刷 p503

 

追記

たまたま高校生用の化学グランプリの問題*2を解いていると、濃硫酸によるエタノールの脱水機構の問題と解説があり、解説を読む事で上記の縮合重合現象を理解する事が出来た。解説では、下図の通りエタノールに水素イオンが結合して生成したエチルオキソニウムイオンと他のエタノール分子からの脱水反応により、ジエチルエーテルが生成するとあり、これと似た条件である部分を探すと、エタノールに結合する水素イオンに相当するものがカルボン酸ナトリウム塩のナトリウムイオンであり、脱水反応に相当するのが加熱脱水操作であった。要は、エーテルはアルコールが過剰にある状態で極性の強い陽イオンが存在しながら脱水操作を行うと出来るという事。重合するかはアルコールの種類によるが、エーテル生成のキーとなるのは"アルコールが多い事”と"極性の強い陽イオンの存在"と"脱水操作"である可能性がある事が分かった。

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エタノールの脱水反応機構

 *2 : 化学グランプリ 過去問題集(2017年版) p20-21

drive.google.com

メタンと塩素のラジカル反応

前回まで光化学工業の可能性を探ってきました。勿論すぐに実行できる訳ではないので、出来る事からという事で現在私が担当している化学工場で熱分解反応があるので、それを光化学反応に変えられないかと考えております。その為にはまず現状把握として、熱分解反応を理解したいと思います。ここで熱分解反応は気相ラジカル反応ですので、ラジカル反応についてメモを取ります(ここでの例はメタンと塩素のラジカル反応)。引用元は下記です。

 メタンと塩素の混合気体に光を当てると、置換反応が起こり、CH3Cl、CH2Cl2、CHCl3、CCl4などのメタンの塩素置換体と塩化水素を生成する。塩素分子の結合エネルギーは比較的小さいので、光によりCl-Cl結合が切れ、塩素原子Cl・を生じる(・は電子)。

   

Cl-Cl --(光)→ Cl・ + Cl・   ①

 不対電子をもつ塩素原子は、エネルギーが高く不安定で、非常に大きな反応性を持つ。このような化学種をラジカル(遊離基)といい、ラジカルが関係する反応をラジカル反応という。この塩素ラジカルは、②式のようにCH4分子に衝突すると、H・を引き抜いて容易に安定なHCl分子になるが、そのときメチルラジカル・CH3を生じる。

Cl・ + CH4 --(H・の引抜)→  HCl + ・CH3   ②

 メチルラジカルも非常に反応性に富み、③式のように、Cl2分子と衝突すると、Cl・を引き抜いてクロロメタンCH3Clになる一方、塩素ラジカルCl・が再生産される。このように、最初にCl・が作られると、②式と③式が何回も繰り返される連鎖反応となる。

・CH3 + Cl-Cl --(Cl・の引抜)→ CH3Cl + Cl・   ③

 上記の連鎖反応では、①式を連鎖開始反応、②、③式を連鎖成長反応というが、この連鎖が永久に続くわけではない。ときどき次のようなラジカル同士の反応が起こって、連鎖がストップする事がある。④、⑤、⑥のような反応を連鎖停止反応という。

Cl・ + Cl・ →  Cl2   ④

・CH3 + ・CH3 → CH3CH3   ⑤

・CH3 + ・Cl → CH3Cl   ⑥

 このラジカル置換反応では、1個の塩素ラジカルの生成によって、平均すると②、③式の反応を約5,000回も繰り返して終わる、という事が確かめられている。

引用元 : 理系大学受験 化学Ⅰ・Ⅱの新研究 卜部吉庸著 2005年第6刷 p476