「週刊朝日」と佐野真一

橋下市長vs朝日の取材拒否問題/経過

 日本維新の会代表の橋下徹大阪市長は20日、「週刊朝日」が自身の出自に関する記事の連載中止を決めたことを受け、17日から拒否していた朝日新聞の取材に応じる意向を明らかにした。ツイッターで「取材拒否問題はノーサイドだ」と投稿した。朝日新聞社の取材拒否問題をめぐる経過は次の通り。

<取材拒否問題をめぐる経過>

 ◆10月16日 「週刊朝日」で日本維新の会橋下徹代表の出自を題材にした「ハシシタ 奴の本性」の連載開始

 ◆17日午前 橋下氏が記事の内容を批判し、朝日新聞社の取材拒否を表明

 ◆17日午後 橋下氏が朝日新聞社の見解を要請

 ◆18日午前 橋下氏が記者会見で「報道の自由はあるにしても、一定のルールを超えている」と批判。朝日記者は説明の要請に応じず

 ◆18日午後 週刊朝日出版元の朝日新聞出版が「記事中に不適切な記述が複数あった」と謝罪コメントを発表

 ◆19日午後 朝日新聞出版が2回目からの掲載中止を発表。朝日新聞社も謝罪コメントを発表

 ◆20日午前 橋下氏が「取材拒否問題はノーサイド」とツイッターに投稿

(共同) [2012年10月20日11時37分]

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山口二郎北海道大学教授が東京新聞の「本音のコラム」で、「週刊朝日」に掲載された佐野眞一の緊急連載「ハシシタ/救世主か衆愚の王か/橋下徹のDNAをさかのぼり本性をあぶり出す」について、「大阪維新の会の主張のいいかげんさが見えてきて、ようやくこの政党に対する冷静な議論が始まろうとしたところに、差別的ルポの出現である。今まで真剣に橋下政治と対決してきた者ほど、これに対して怒っている。『週刊朝日』は傾きかけた大阪維新の会を再び勢いづけるために、この記事を載せたのかと憶測したくなるくらいである」と、本気で怒っているのは当然である。
 佐野と「週刊朝日」が異常であるのは、第1に、すでに十分に政治的な存在である橋下を、「初めに断っておけば、私はこの連載で橋下の政治手法を検証するつもりはない」と言って、政治的レベルで批判することを放棄して、「一番問題にしなければならないのは、敵対者を絶対に認めないこの男の非寛容な人格であり、その厄介な性格の根にある橋下の本性である」と宣言していることである。もちろん、一個の政治家を、その政策や政治手法についてだけではなく資質や人間性において問題にすることはあっておかしくないし、これまでもさんざん行われてきたことである。しかしその“人物論”的探究を、いきなり「橋下徹の両親や、橋下家のルーツについて、できるだけ詳しく調べあげなければならない」というところに落とし込み、父親が被差別部落出身のヤクザでシャブ漬けの挙げ句にガス管をくわえて自殺したという話から書き始めるというのは、ほとんど常軌を逸している。
 もちろん、それは事実であるのかもしれないが、父親が被差別部落出身であるから、あるいはヤクザであるから、あるいはシャブ中毒者であるから、あるいはそれで狂って自殺したような人物であるから、橋下は政治家になってはならず、総理大臣をめざしてはならないということに、どうしてなるのだろうか。「橋下市長の家族や親戚にどんな人物がいようが、またそれらの人が何をしようが、橋下氏の評価には何の関係もない」と山口が言う通りである。
 異常の第2は、その父親を語る部分で、わざわざ出身地の地名を特定して名指していることである。これは致命的とも言っていい誤りで、単に父親や橋下への差別というに止まらず、その地区に住むすべての人々に新たな差別攻撃を誘発させることを意味している─
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高野孟のTHE JOURNAL』より抜粋
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