オバマ 中国の輸出拡大にNO! けどそんなゴーマンかましてよかですか?

オバマ中国の輸出にNO

 オバマは09年1月30日、中国の胡錦濤国家主席との電話会談で、世界の貿易不均衡を是正する必要性を強調した。また、世界的な経済危機に対処するため、クレジット市場の機能回復が必要との認識で両首脳は一致した、という。
 オバマは中国にNOを言ってやったぜ、と米国民にアピールしたことになる。 

しかし、そんなゴーマンかまして本当にいいの

 中国と米国。全世界の中で一番ホットの関係かもしれない。それは両者が相思相愛ということではなく、同床異夢と言って良いかもしれない。矛盾する愛情を互いに抱いているともいえる。
 米国は景気対策でいくらお金があっても足りない状態だ。当然諸外国に米国債を買ってほしい。国際の一番の得意先が中国だ。中国の貿易黒字が増えれば増えるほど、外貨準備高が増える。中国にとって外貨準備高は米ドル。それは米国債という形で中国の国庫に積み上げられてきた。中国からすれば、だったら外貨は稼げなくなるけど、米国債を買えなくなってもいいの、ということにならないのだろうか。
 現在中国は、ドル基軸通貨体制の維持を表明している。少なくとも公式には。しかし、欧州はそんな中国にもユーロ機軸通貨体制にしないかと秋波を寄せている。98年10月に訪中したサンテールEU委員長に対して、当時の中国首相朱鎔基は、外貨準備のドルを半分、ユーロに切替えると意志があると表明しているのである(10月31日ブログ「欧州対米国 経済的覇権を巡る争いが勃発か」)。その遺産が今になって生きている。
 08年のG20、金融サミットで、サルコジが盛んにユーロを基軸通貨にと訴え、結局袖にされたが、中国は完全に拒否したわけではないだろう。政治大国中国からすると「おいおいそんな話を真昼間からするなよ。そういう話はこっそりするもんだろう。」ということのはずだ。会社の中で不倫カップルがこっそり階段で「じゃあ今夜例の店で」というのと同じだ。中国は、元を基軸通貨の一画にできないかとずっと虎視眈々とねらっている。実はその気ありありだろう。
 続きは今日付のもう一つのブログ「中国がEUと急接近 ドル基軸通貨はどうなる」で。
※10月31日付「欧州対米国 経済的覇権を巡る争いが勃発か」
 http://d.hatena.ne.jp/yamada-home/20081031/1225450260

中国はEUと接近か ドル基軸通貨はどうなる

ヨーロッパと中国が接近

 サルコジは、08年のG20、金融サミットで、ブレストン・ウッズ体制は終わった、基軸通貨はドルからユーロに移る、と訴えていた。しかし中国はこれに乗らなかった。胡錦濤はドル機軸通貨を支持するとしたのだ。中国の発言価値は飛躍的に高くなっている。ひょっとしたら、オバマの一言より、胡錦濤の一言のほうが、重いかもしれない。中国がドルの基軸通貨に異論を唱えれば、大きな流れが置きかねない。しかし中国は巨額の米国債を抱えているので、ドル暴落につながる基軸通貨の多極化の話に載れるはずがない。米国がヘリコプターマネーをできるのも、双子の赤字で生きながらえてるのも、ドルが基軸通貨だからだ。ドルが基軸通貨通貨でなくなる、ないし多角化した機軸通貨の一つに過ぎなくなれば、米国債は暴落してしまう。
 しかし中国は二つの矛盾する外交をし、その両者の成り行きを見ながら、一方を切り捨てることもできる国である。日本の米国ポチ外交とはレベルが違う。中国は本音では機軸通貨を多極化し人民元をその多極化した機軸通貨の一画にしたいと考えている。98年10月に訪中したサンテールEU委員長に対して、当時の中国首相朱鎔基は、外貨準備のドルを半分、ユーロに切替えると意志があると表明しているのである(10月31日ブログ「欧州対米国 経済的覇権を巡る争いが勃発か」)。心のそこでは、EUと付き合いたいのは山々なのだが、今の交際相手の米国とも二股をかけたい。両方とつきあって、米国からのお手当てが少なくなれば、金の切れ目は縁の切れ目でEUと付き合ってもいいかな。これが中国の本音ではないか。
 そんな中国がEUと4月にEU議長国であるチェコで首脳会談を行うことで合意した。4月2日にロンドンで開催されるG20首脳会合(金融サミット)後に行われる。金融サミットでの合意内容を踏まえて協議を行うことで一致したことを明らかにした。これはロイターの特ダネだ。1月30日EUの外交筋が明らかにしたという。
 EUの08年の議長国はフランス。サルコジはG20後にダライラマと会談したため、中国の逆鱗を買い、肝心な話をするきっかけを失ってしまった。対中国で、チベットは絶対触れてはならない話題だ。そのことは人民元札を見れば分かる。人民元の最高額札の100元の裏には人民大会堂が描かれ、次の50元の裏にはチベット・ラサのポタラ宮が描かれている。中国は面子を重視する。面子を汚されたとなれば、サルコジとの対話は不可能だ。しかしサルコジは08年のEUの議長国、09年の議長国はチェコだ。そのため対話再開のきっかけが現れた。
 EUと中国が何を話し合うのか。会談後、会談の表向きの結果は明らかにされるだろう。しかし、裏の会談結果は明らかにされないだろう。そしてその裏の会談結果が、世界を動かし、アメリカの命運も決まってくるのではないか。 

日本はどうする

 日本が当面直面するのは、今後為替介入するかどうか。円高是正ということになれば、ドルを買わなければならない。それは通常イコール米国債を買うことである。しかし、基軸通貨の威光を背景にしてのオバマのドルばら撒きはドルをいつ暴落させるか分からない。これ以上米国債を怖くて買えない、という声は与野党の中から出ている。民主党ネクストキャビネット財相の中川正春も、為替介入は行うが米国債は買わないといっていた(どういう方法を使うのかは分からないが)。与党議員からも同じ声を聞いたことがある。
※中国はIMFのSDRを基軸通貨にしようと提言(2009.3.26)
http://d.hatena.ne.jp/yamada-home/20090326/1238029993
※08年11月19日「夜の金融サミット」にも寄り道してください。
http://d.hatena.ne.jp/yamada-home/20081119/1227079455

個人宅配業者の嘆き

個人宅配業者の嘆き

 先日大分県の宅配業者の方から借金の相談があった。彼いわく、08年前半は前年比からしても売上が上がって喜んでいたが、後半になってがたっと売上が下がったという。引越しする人がいない。同一社内での宅配便が、節約のため社内便に切り替わり、3月の引越シーズンまでの資金繰りに頭を悩ませているという。
 大分県といえば、キャノン大分工場が派遣切りして有名になったところだ。キャノンだけでなく、大分県は優遇措置をとって企業誘致を進めてきた。誘致された企業は殆どが輸出産業。今回の世界的不況、円高の一番の影響を受ける。
(ところで、住民も大変だが、自治体財政も歳入が激減するはずだ。自治体は国と違って赤字公債を発行できないから、歳出を減らすしかない。)

軽油・ガソリンの価格格差問題

 以上は消費停滞からする売り上げ減だが、運送業者を苦しめるもう一つの問題がある。軽油とガソリンの価格格差がほとんどなくなっていることだ。
 石油情報センターによる最新の09年1月26日調べではレギュラーが107.4円、軽油が102.2円で価格差が5.2円しかない。さらに価格比較サイトで最安値のスタンドであるセルフ水元公園では、レギュラーが102円、軽油が100円で、たった2円しか違わないのだ。
 かつてはこうではなかった。20円近く違った。しかも、軽油引取税は、1リットル32.1円。ガソリン税は1リットル48.6円。これらの税抜価格でいうと、全国平均値で軽油は70.1円、ガソリンは58.8円。軽油のほうがガソリンより11.3円も高いという、価格の逆転が起きている。

これはなぜなのか

 価格差がここまで縮まってしまったのは、市場経済の宿命だ。ガソリンを利用するのは一般ユーザ。ガソリンが高くなれば、買い控えが起こる。そのためどうしても価格を下げなければならない。しかし軽油は事業者がほとんど。事業者は軽油価格が高くても買わざるを得ない。軽油を下げて売ろうというインセンティブが働かないのである。結果ガソリン価格は下がるが、軽油価格は下げ圧力が少ない分価格が高止まりする。価格差が全国平均では5.2円あるのに、最安値スタンドでは2円しかないというのもここに理由がある。

中国大学生大就職難 党中央は求職学生に地方に帰れと支持

中国の大学バブル

中国の近年の大学創立ラッシュは凄まじかった。大学卒業者数は97年には82万人だったが、2004年には239万人、そして09年には611万人である。いくら中国経済が好調だったにしてもこれは異常である。まだ景気が良かった04年時点で既に、9月時点(中国では新学期が始まる月)での就職率は73%だった(中国教育省発表)。それだだけで
今年8月卒業する大学生は611万人、04年の2.5倍に大卒者が増えているし、去年就職できなかった就職浪人も相当数いるだろうから、ただでさえ就職戦線は厳しいものがある。
中国では、9月が新学期だから、2月というのは日本の就職シーズンで言えば9月に相当する。中国では、例年この時期の大学生の就職率は50%を超えているそうだが、今年は20%にも満たないという。

党中央 学生に帰郷を指示

 東京新聞09年1月30日朝刊によると、党中央は国内メディアに「学生の就職難を強調せず、建設的な記事を書く」ようにと通達を出したばかりか、党学生組織である共青同を通じ休職中の学生団員に帰郷を指示しているという。
 中央がおそれているのは、職を失った都市労働者と、就職できない大学生の不満が結びつき、暴動が起きることだろう。中国で就職活動する大学生は、都市部のそれ専用のホテルに泊まって就職活動している。節約のために8人一部屋で泊まり、就職活動に励んでいるという。一方春節で故郷に帰っている農民工春節が終われば都市部に戻ってくる。これらの人々に仕事を与えることができないとなると、不満は一気に爆発しかねない。89年の天安門事件は学生だけの突出で終わり、これに加わる市民が多くなく、失敗に終わったが、今は違うかもしれない。今年は天安門事件20周年にあたる。仕事がなくあぶれている農民工らがこれに加われば、暴動は燎原に火がつくように広がっていく可能性がある。これは党中央にとって悪夢である。ことに北京、上海で暴動が起きれば、海外マスコミが大きく取り上げる。党中央が学生に帰郷を指示するのはこうしたことが背景になっているのだろう。

GDP8%も危うい

党中央は4兆元の景気拡大策を発表したが、本当に内需拡大に結びつくかは疑問がある。
(1月18日ブログhttp://d.hatena.ne.jp/yamada-home/20090117/1232212988
 中国政府はGDP成長率8%を目標にしている。これが達成できても雇用創出は800万人で、大卒求職者の全てを就職させることはできない。しかしこの8%の達成は危ぶまれている。IMFのスカロカーン専務理事は08年12月15日、中国の経済成長率が今年の9.7%から、来年09年は半分の5%台に急減する可能性があるとの見方を示した(東京新聞06年12月16日)。世銀は7%、英ロイヤル・バンク・オブ・スコットランドは5%という見通しを立てている。
(1月6日付ブログhttp://d.hatena.ne.jp/yamada-home/20090106/1231244720
中国国家統計局が09年1月22日発表した08年10〜12月のGDP実質成長率は前年同期比6.8%で8%を割ってしまった。
(1月22日付ブログhttp://d.hatena.ne.jp/yamada-home/20090122/1232612157

学生は地方に戻らないほうが良い

 党中央は大学生に帰省を勧めているが、いったん戻ったらしばらくは帰ってこれないのではないか。都市部で暴れてもらっては困るし、地方に置いておいたほうが、十分監視ができる。帰省した農民工も都市流入が規制されないだろうか。