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馬上行動 山田冬樹の部屋

2009-04-01

最近平成21年1月22日最高裁判決を理由に過払金利息を払わない業者が増加中

21:58

訂正

 過払金も返還しなければ、他の債務と同じで、利息が発生する。この場合の利率は年5%と法律で決まっている。例えば、10年前から過払金が発生していれば、過払金のほか、10年間分の利息が積上がっていることになる。

 ところが、最高裁平成21年1月22日判決が出て以降、一時期、取引終了時以降だけ利息を払えばいいという主張が、サラ金の中で大流行となった。しかし最高裁平成21年9月4日第2小法廷判決(平成21年(受)第1192号事件)はこれを否定。過払金発生時から利息が発生するとした。

 なので、サラ金が、H22.1.22判決だ、山口地裁宇部支部判決だとか言ってきたら、次のように書いて反論するだけでいい。

 最高裁平成21年9月4日第2小法廷判決(平成21年(受)第1192号事件)は、過払金発生時から利息が発生するとしている。被告主張は平成21年1月22日判決の解釈を誤ったものであり、独自の見解に過ぎない。(H22.4.14)もっと早く訂正すれば良かったですね。

平成21年1月22日判決

 平成21年1月22日最高裁判決が、消滅時効の起算点を、「取引の終了時」とした。この判決当事者の東日本信販は、過払い金が発生したらその都度10年の時効期間がスタートするので、過去10年分の過払い金しか取れないはず、と主張していた。しかし最高裁判決は、この見解を否定。基本契約がリボ払い方式を定めている場合、いったん過払い金が発生しても、基本契約が継続している間は過払い金請求することはありえず、基本契約が終了してから(判決は取引が終了してから、と言っていますが)時効期間はスタートするとした。そして3月3日、3月6日付最高裁判決も、この結論を踏襲している。

山口地裁宇部支部平成21年2月25日判決

 しかし、この判決は思わぬ副産物を産んだ。山口地裁宇部支部平成21年2月25日付判決である。同判決は1月22日判決を引用し、基本契約が終了しない限り「過払金返還請求権も具体化しておらず、これに対する悪意の受益者としての利息の支払いも発生していない」としたのである。この判決文の該当箇所を以下引用する。

 「過払金返還請求権の消滅時効が、、、継続的金銭消費貸借取引が終了した時点から進行すると解されるのは、過払金充当合意においては、新たな借入金債務の発生が見込まれる限り、過払金を同債務に充当することとし、借主が過払金にかかる不当利得返還請求権(過払金返還請求権)を行使することが通常想定されていないから、一般に過払金充当合意には借主は基本契約に基づく新たな借入金債務の発生が見込まれなくなった時点、すなわち、基本契約に基づく継続的な金銭消費貸借が終了した時点で過払金が存在していれば、その請求権を行使することとし、それまでは過払金が発生してもその都度その返還を請求することはせず、これをそのままその後に発生する新たな借入金債務への充当の用に供するという趣旨が含まれているものと解するのが相当であるとされるからである(前記最高裁判所平成21年1月22日第一小法廷判決参照)。そうすると、基本契約に基づく継続的な金銭消費貸借取引が終了するまでは過払金返還請求権も具体化しておらず、これに対する悪意の受益者としての利息の支払義務も発生していないというべきである。」

 喜んだのは消費者金融各社。プロミス、アコム、CFJとがこぞって、過払い利息の発生は、取引が終了したときと主張し始めた。

 CFJは、再借入時、契約書の書換をしていようと、していまいと取引の分断を主張、さらには悪意の受益者ではないなどという主張まで始めている。

具体的な反論

 こうしたCFJの主張に対して、以下のように反論している。これは一介の一弁護士の主張なので、割り引いて読んでほしい。

第1 被告の主張(個別計算に対する反論)

 原告●、原告●は、被告との間で、それぞれ訴状別紙一覧表「取引開始日」記載の日に、借入限度額の範囲内で自由に借入することができ、返済をリボルビング方式で行うことができる基本契約を締結した。

 同原告らの各取引が、仮にいったんは完済となっても、過払金充当合意のもと、前取引から生じた過払金は、その後の新たな借入金の弁済に充当されることになる(平成21年1月22日最高裁判所第1小法廷判決、同年3月3日最高裁判所第3小法廷判決、3月6日付最高裁判所第2小法廷判決)。

第2 被告の答弁書への反論

一 平成21年1月22日付最高裁判決を前提としても、基本契約継続中は過払利息が発生しないということはない。

  1. 上記宇部支部判決は、「過払金充当合意には基本契約に基づく継続的な金銭消費貸借が終了するまでは過払金が発生してもその都度その返還を請求することはしないという趣旨が含まれている。かかる過払金充当合意の下では、金銭消費貸借取引が終了するまでは過払い金返還請求権も具体化せず、利息の支払い義務も発生しない」とする。しかし上記最高裁判決は、「同取引継続中は過払金充当合意が法律上の障害となるというべきであり、過払金返還請求権の行使を妨げるものと解するのが相当である」とし、取引終了前から、過払金返還請求権という具体的権利は存在し、ただその行使が妨げられるとしているにすぎない。上記宇部支部判決は「取引終了によって初めて権利として具体化する」ことを最高裁が認めているというが、論理の飛躍がある。(09年5月15日訂正)
  2. 704条の利息は、元本に対しての果実との意味合いが強い。元本を悪意で不当利得した者は、元本だけでなく、そこから生じた果実たる利息も返還すべきということで、その返還が求められている。不当利得法は公平の概念に基づいているが、まさに公平の観点からこの果実としての利息の返還が求められているのである。したがって、期限が到来しようと否と、悪意受益者に利息を収受する立場を与えるだけの理由はない。
  3. 704条は「悪意の受益者は、その受けた利益に利息を付して返還しなければならない。」とあり、受益があれば当然に利息が発生するとの解釈が文言上も至当である。
  4. 民法575条1項は下記の通り、果実は元本と運命をともにするという法律の趣旨がみてとれる。となれば元本を返還すべきときは果実もまた返還すべきという原告主張ともつながるものである。「1 まだ引き渡されていない売買の目的物が果実を生じたときは、その果実は、売主に帰属する。」(09.5.15訂正)
  5. また、被告答弁書は9頁(3)で、被告には不法性も不当性もないから損害賠償責任を負ういわれはないとしているが、704条の利息は遅延損害金的なものではないのだから、被告の論拠は意味がない。

二 悪意の受益者

 そもそも被告は善意受益者ではありえない。

 平成17年12月15日最高裁第一小法廷判決は、概ね次のように述べている。

「リボルビング方式の場合に、個々の貸付けの時点での残元利金について、最低返済額及び経過利息を毎月 15日の返済期日に返済する場合の返済期間、返済金額等を 17 条書面に記載することは可能であるから、上告人は、これを確定的な返済期間、返済金額等の記載に準ずるものとして、17 条書面として交付する書面に記載すべき義務があったというべきである。 被告は悪意の受益者でないというのは、仮に、当該貸付に係る契約の性質上、法 17 条1項所定の事項のうち、確定的な記載が不可能な事項があったとしても、貸金業者は、その事項の記載義務を免れるものではなく、その場合には、当該事項に準じた事項を記載すべき義務がある。」

 この観点からみて、原告は17条書面を交付しているとは言えない。

 もっとも、仮に被告が善意受益者であったとしても、最高裁判所第三小法廷昭和38年12月24日付判決(民集第17巻12号1720号)にあるとおり、被告は消費者金融業者として過払金元本から運用利益を得ているのであるから、結局は受領後民事利息相当金を支払うべきである。善意受益者と悪意受益者の違いは、悪意受益者は現存しない元本、利息についても返還しなければならないという点にすぎない。要するに善意受益者であろうと、本来返還請求権者にあるべき元本と同様、そこから生じた果実についても、元本と一緒に返還されるべきなのである。

(従前の準備書面を訂正した個所)

  1. 宇部支部の判決の理解が不十分でした。宇部支部は、取引終了前は「過払い金返還請求権は具体化しない」としたのであって、「過払い金返還請求権の期限が到来した」とは言っていません。私の誤読で、この点誤解があり訂正しました。
  2. これに関連して、昭和38年最高裁が、期限の到来と関係なく利息が発生するとした点に触れる必要がなくなったため、この部分の引用を削除しました。
  3. 民法575条の引用に混乱した部分があったため訂正しました。 
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