セクハラ労災新基準

厚労省セクハラの労災基準改定

 厚労省は6月23日、セクシュアルハラスメント(セクハラ)による精神疾患を労災認定に結びつけやすくするよう、認定基準を見直す方針を決めた。同日、厚労省有識者検討会が見直し案をまとめた。

職場における心理的不可評価表

 同省は「職場における心理的負荷評価表」というものを作り、労働基準監督署がこれを基準に労災認定することになっている。心理的負荷の程度によって、1から3の3段階に分かれており、最上級の「3」に認定されないと、なかなか労災認定はしてもらえない。この表で「3」とされているのは、重度の病気やけがをした、重大な人身事故を起こした、重大な労災事故に関与した、会社の経営に影響するなどの重大な仕事上のミスをおかした、退職を強要された、ひどい嫌がらせ、いじめ、又は暴行を受けたの5つしかない。
 http://www.mhlw.go.jp/houdou/2009/04/dl/h0406-2a.pdf
 「退職を強要された、ひどい嫌がらせ、いじめ、又は暴行を受けた」は「3」なのに、セクハラに関しては一律「2」とされていた。このため年内にも基準を見直し、「ちゃんづけで呼んだ」などの軽い事案を「1」とする一方で、悪質事例は最も強い「3」とするよう改める。

労災が認められるセクハラ5類型

 今回の見直しで「3」とされるセクハラは以下の

  • 強姦や本人の意思を抑圧してのわいせつ行為
  • 胸や腰などへの身体接触を含むセクハラが継続して行われた
  • 身体接触を含むセクハラで、継続していないが会社に相談しても適切な対応がなく、改善されなかった。または会社へ相談後、職場の人間関係が悪化した
  • 性的な発言のみだが、人格を否定するような内容を含み、かつ継続してなされた
  • 性的な発言が継続してなされ、かつ会社がセクハラを把握しても対応がなく、改善されなかった
これまでのセクハラの労災認定実績

 厚労省によると、10年度に各都道府県の労働局に寄せられた2万3000件超の相談の過半数がセクハラに関するもので、11年連続最多。一方、09年度の労災申請のうちセクハラがあったとするものは16件で、実際に労災認定されたのは4件。05年度からの5年間でも、認定は21件にとどまる。

焼肉酒家食中毒事件 厚労省にも責任

焼肉酒家えびす食中毒事件 第三の加害者

 今日放送の文化放送「邦丸ジャパン」で、食中毒の話をした。話が少し古くなるが「焼肉酒家えびす」で、ユッケをたべた客100人以上が病原性大腸菌O111、O157で食中毒になり、4人が死亡したという事件があって、それを下敷きになっている。ちなみにこの事件、焼肉酒家えびす」の方は、「食肉業者からはユッケ用ということで購入した。出荷前には2度にわたりアルコール消毒している、との説明を受けた」と主張。他方、食肉業者大和屋商店は「うちは加熱調理用、すなわち、熱を通して調理する必要のある肉として卸していた。それを生で出した方が悪い。」と主張。泥仕合の様相だが、加害者はもう一人いる。それは厚労省だ。

加熱調理用の牛肉しか流通していないのにユッケがメニューに載る不思議

 この事件、加熱調理用の肉を、生でお客さんに出したことが問題なように言われている。しかし、「生食用」として流通しているのは馬肉と馬レバーだけ。牛肉や鶏肉は、少なくとも2008年から2009年度にかけて、全てが加熱調理用として出荷されており、「生食用」として出荷された肉は全くないのである(5/4読売)。
 インタビューに答えてある食肉業者が、「出荷してないのに、なんでユッケがメニューにあるのか、いつも不思議に思っていた」と話していた。「焼肉酒家えびす」の事件はほかの焼肉屋でいつ起ってもおかしくなかったと言えるかもしれない。

厚労省の通達

 そもそも加熱調理用の肉を生で食べてはいけないなどという規定は、食品衛生法にはない。13年前に厚生労働省が出した「生食用食肉等の安全性確保について」という通達があるだけ。そこでは、と畜場では「レバーより先に胃や腸を取り出す場合は、破れないようにし、もし破れた場合はそのレバーは生食用にしない」とか、「生食用レバーと他の内臓(生食用でないレバーを含む)は、別の場所で取り扱う。洗浄、消毒は専用の設備を使う」などされ、食肉処理場、飲食店、それぞれでの取り扱いが詳細に定められている。
 牛肉や鶏肉については加熱調理用の肉が出回らなかったのも、理由はここにある。この規定通りに食肉を製造していてはコストがかかってしょうがないからだ。
 だから食肉業者は、焼肉店が生食に使うと分かっていても、加熱調理用の肉を卸していたし、焼肉店としては、そもそも加熱調理用の肉しか流通していないから、これを買って生肉として客に提供していたのである。

通達では不足

 しかし、単なる通達で法律ではないため、この通達の基準が守られているかを立ち入り検査をして調べることはできない。食中毒事故が起きたあとで、「業務上過失致死傷」で立件されたり、損害賠償を求められることはあっても、それは事故があってからのことになる。

和歌山では生肉に適切な処理をしている飲食店はゼロ軒

 6月14日の厚労省の発表では、飲食店で「大腸菌の検査をしていない店」が87.4%、「器具の洗浄水に高温のお湯を使っていない」が50.8%と、ちゃんと処理していない店の方が多いというのが実態だった(6/15読売)。何と和歌山県では調査対象の飲食店171店全てで衛生基準を守っていなかった(6/15読売)。

厚労省の責任

 ところで厚労省は、この自体をどのように眺めていたのだろうか。先の食肉業者と同様「加熱調理用の肉しか流通していないのに、なんでユッケがメニューにあるのか、いつも不思議に思っていた」とでも言うのだろうか。もう一人の悪人が厚労省だと言うのはこれが理由だ。
 焼肉酒家えびすを運営するフーズ・フォーラス社は6月27日付で、食材の仕入れ先などの取引先に対し、7月11日に金沢市内で債権者説明会を開くことを通知した。通知書では、「社会的責任を全うするためにも、被害者への弁償を最優先に行いたい」として、取引先に債権カットへの協力を求めているが、破たんとなったら被害者が優先されるというような法的根拠は無い。もし破たんということになれば、請求は食肉業者に行くであろうが、食肉業者も素直には責任を認めない筈。生肉提供を黙認していた国も責任を負うべきではなかろうか。