『少年少女昭和ミステリ美術館』(森英俊・野村宏平/編著)

タイトル通り、昭和の児童向けミステリの書影をコレクションした本です。定番の乱歩・ルパン・ホームズからカバヤ文庫まで、取り上げる本は多岐にわたっています。トラウマ本として名高い生頼範義の乱歩選集(首吊り死体や首に短剣の刺さった男の死体が画面いっぱいに……!)も、カラーで収録されています。表紙だけで悪書であることが一目瞭然、このおどろおどろしさがたまりません。ぜひ同種の企画で、SFやホラーを集めた本も出してもらいたいです。
この本は、美術資料としてだけでなく、大衆児童文学史をふりかえる資料としても興味深いです。たとえば、児童書がテレビやまんがに押され始めた昭和40年代に、朝日ソノラマがアニメやまんがとの共存の姿勢を打ち出した「サンヤング・シリーズ」をスタートさせたことに触れ、その中で辻真先の『仮題・中学殺人事件』を重要な作品として紹介するなど、正統的な児童文学史ではあまり取り上げられることのないものを拾い上げています。