- 作者: 小沢章友,君野可代子
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2015/02/13
- メディア: 単行本
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小沢章友は以前、死をテーマにした『不死』という短編集を出していました。そのなかで特に記憶に残っているは、「ガンダルヴァ―生命の素粒子」という作品です。この作品には、死者は香りだけを食べるガンダルヴァ(乾闥婆)という素粒子になって転生するのだという信仰が登場します。香りという具体的な感覚で死をイメージさせるのが印象的でした。
- 作者: 小沢章友
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 1998/10
- メディア: 単行本
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オルゴール博物館を見学したり、星を眺めたりといった、ゆりかとの思い出がリリカルに語られています。幼くして両親を事故で亡くしたゆりかは、自分の死期も悟っているようなふるまいをします。自分の生命力を試すために崖に向かってそりを滑らせるような危険な遊びをしたり、自分の短い生命線を笹の葉で傷つけて伸ばそうとしたり、こうしたちいさなエピソードがどれも痛切な哀しみを喚起します。
「いつも思うんだ。生きていたいって。もっともっと生きていたいって。ひとつひとつためすのは、まだ生きられる、まだ生きていられるって、自分に言い聞かせるためなんだ。」(p69)
そして最後に、タイトルにある「プラネット・オルゴール」という、生と死を円環に閉じ込める鮮烈なヴィジョンを提示します。「ガンダルヴァ」で香りを手がかりにしたように、この作品では聴覚と視覚を頼りに生と死のイメージを探ろうとしています。その壮大さと美しさには、ただただ圧倒されるばかりでした。