教育という病 子どもと先生を苦しめる「教育リスク」 (光文社新書)
- 作者: 内田良
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2015/06/17
- メディア: 新書
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- 作者: 井上林子,新井陽次郎
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2015/09/30
- メディア: 単行本
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構成がわかりやすく、〈物語〉としてはたいへんよくできています。
しかし、2分の1成人式を題材に選んでしまった以上、〈物語〉としてよくできているということは欠点にしかなりません。そもそも2分の1成人式の問題点は、理想的な家族の〈物語〉という規範にすべての子どもを押し込めてしまうところにあります。そのため、家で日常的に親に殴られているような子どもも、2分の1成人式の場では自分は理想的な家庭に育つという〈物語〉を生きているという演技を強いられ、耐え難い精神的苦痛を味わわされることになります。
この作品の重要な登場人物であるのぞみは、それほど大きな困難には直面していないひとり親家庭の子どもとして設定されています。大人の期待する〈物語〉から大きく逸脱しない範囲の少数者をアリバイ作り的に登場させていることが、この作品を一層罪深くしています。2分の1成人式を題材として児童文学をこしらえるのなら、必要なのは〈物語〉ではなく、〈物語〉への懐疑です。
それにしても解せないのは、なぜこんな作品をあの井上林子が書いてしまったのかということです。いままでの井上林子作品では、多様な家族の姿が描かれてきました。デビュー作『宇宙のはてから宝物』は、精神疾患を抱える親やアルコール依存症の親を持つ子どもが主人公となっていました。『3人のパパとぼくたちの夏』には、ふたりのパパを持つ家庭が登場します。いままでの自作に登場した子どもたちが2分の1成人式を強いられたらどんな精神的苦痛を受けることになるのか、そこに想像力を及ぼすことがどうしてできなかったのでしょうか。井上林子には期待していただけに残念でなりません。ぜひ本来の自分の立ち位置を思い出してもらいたいです。