児童書読書日記

2016-04-30

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アメリカ大陸の大部分が海底に沈んでしまったために多くの人々が海底への移住を余儀なくされてしまった世界を舞台とする冒険SF。海底人は発光性の魚を食べるため体が光るようになるとか、水圧の影響で超能力を持ったミュータントが生まれるとかいったホラが楽しいです。ただ、次々に繰り出されるSF設定はおもしろいのに、物語の魅力がそれに追いついていないきらいはあります。

平山夢明の実話怪談本からセレクトして児童向けにリライトした本。わざわざ平山夢明を起用するくらいですから、児童向けにマイルドなものを選ぶというようなことはなく、「蝶のバス」や「ロクちゃん」など、ファンであればタイトルを聞いただけで恐怖を思い出すようなインパクトの強い作品が収録されています。

ロシアの動物童話。著者が実際に子どもに語って聞かせた物語を本にしたものなので、ときどき作中人物がメタなことを言い出すのがおもしろいです。

中脇初枝が波多国(高知県南西部)四万十川周辺に伝わる昔話を再話した本。中脇初枝と同じく波多国で育った奈路道程によるイラストも味わい深いです。

中脇初枝が各話の解説で繰り返し、成功者のまねをして破滅するパターンの人に同情的なコメントをつけているところに、優しい人柄が出ていると思いました。

ミランダは古代ローマの貴族の飼い猫でしたが、戦乱の混乱の中で飼い主と離ればなれになり、保護しなければならない30匹あまりの子猫を抱えて厳しいサバイバルを強いられます。過去に生きず、後悔で時間を無駄にすることを嫌う猫らしい気質のミランダの、現実路線で問題を解決しようとする姿勢がかっこいいです。コロッセオの居住権を賭けて雌ライオンと対決する場面の緊迫感といったら。

子どもに身近な職業を題材にした創作童話シリーズの1冊。むかし近所に住んでいて仲良しだったお兄さんが交番勤務のおまわりさんになったので、その様子を目撃することになった主人公。しかしそこで見せられたのは、押し寄せるクレーマーたちにへいこらする過酷な感情労働の現場や、3日に1回は24時間勤務をしなくてはならないブラック労働環境でした。こういう、子どもに現実を突きつけていくスタイル、好きです。

ワンダー Wonder

ワンダー Wonder

顔に障害を持つ少年が普通校に入学したことによるあれやこれやを描いた作品、当事者やそれを取り巻く家族や同級生など多角的な視点から事態を描く手法で、感情の行き違いを感動的に演出する手つきはうまいです。しかし物語の最後で、ジュリアンというもっとも激しく主人公を差別していた生徒を退学させたことが、この作品の致命的な欠陥になっています。このことにより、「みんな本当はいい子、本当に悪いやつはあいつだけ、あいつさえ排除すればみんなハッピー」という結論になってしまい、ジュリアンを除く登場人物に感情移入してきた(ジュリアン視点で語られる章はない)読者を邪悪な差別者とは無縁な安全地帯に退避させてしまっています。この作品は、差別問題を自分のこととして考えたくない人向けの、よくできたエンターテインメントにすぎません。

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