リヴァでの楽しき音楽生活


(こんなに脱力して吹かないといけないよ)
 リヴァのフルート講習会は山ちゃんにとって本当に実りあるものだったのだ。レッスンはクルム先生がドイツ語で丁寧にしてくれたらしい。だけど他の人のレッスンは多くの人がイタリア人だったので何を言っているのかよくわからなかった。こんな事もあったらしい。あるイタリア野郎のレッスンで先生と話していたら急にしゃがんで号泣した。何があったんだろうと、隣のスイス人にドイツ語で訊いたら「先生の大学で学びたいと彼が言ったのだが、先生が断ったんだ。」とおしえてくれた。そのイタリア人は山ちゃんの事を「ジャップ」と呼んでいて気に入らなかったので、山ちゃんは内心「ざま〜みろ!」という気分だった。
 講習会の期間中、朝はレッスンで昼からは学生たちが小さなリヴァの町中の教会や広場などでミニ・コンサートやバカンスを楽しみ、夜は先生たちの演奏会がありそれが毎日行われた。まさに「ガルダ湖畔の町リヴァ音楽祭」の雰囲気に町中が包まれていた。
 夜のコンサートは本当に楽しかった。フルートのクルム先生は喉頭癌の術後で本来の音ではなかったらしかったが、それでも気品のあるその演奏は感動するに十分だった。ここの講習会はほとんどの楽器の学生が対象だったので先生陣多彩だった。特にトロンボーンのスローカーとクラリネットのライスターの演奏は圧巻だったそうだ。ロシアのピアノの先生が学生のレベルが低いと帰国してしまったとの噂があったりとにかく一週間毎日音楽三昧で夜の素晴らしいコンサートの後は深夜まで飲んでいた。その飲み仲間が山ちゃんにとって運命的な出会いだったそうだ。(ただの飲み仲 間ではないかとルナピンスキーは思っている。)