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Natureは、遺伝的性決定が絶滅海棲爬虫類の適応放散を可能にしたという話。「遺伝的性決定か、温度による性決定か」という形質は化石に残らないが、「胎生か卵生か」という形質との相関を考えると予測が可能になる(らしい)。現生の生物で相関をモデリングして、モササウルスなどの絶滅した爬虫類や、現生のウミヘビの性決定について考えている。温度性決定は陸上では適応的だが、わりと温度が一定の海中ではそんなによろしくない。また、卵は水中で呼吸できないので、胎生の方が良い、とのこと。


Scienceは、ハエの分布を決める生態学的な形質の進化的な制限。乾燥と低温への耐性は広域分布種の方が強い。熱帯の狭い分布の種は耐性が弱く、それらの形質に関する遺伝的多様性もない(中立っぽい形質の多様性ならある)。このように、種の分布域が遺伝的に制限されているならば、地球温暖化に対する反応は従来考えてこられたよりも大きいかも知れない。


PNASは、分布拡大後の近交弱勢の低下。アフリカからジブラルタル海峡を渡ってイベリア半島に分布を拡大した植物(トウダイグサの仲間)は、イベリア半島で近交弱勢が低下していた。このパターンは二次の非線形モデルで近似できる。要するに、アフリカですごく高くてイベリア半島ではだいたい一定なんだけど、これの理由として、分布拡大しているならばそうなるのか、それとの海峡の効果が大きいのか見るためにシミュレーションしてみると、より一般的な、ソース個体群から踏み石モデルで分布拡大する場合でも同様のパターンが見られた。この近交弱勢の低下は、分布周辺域で自殖が進化する際の手助けになるかもしれない。


PLoS Geneticsは、なぜインド亜大陸のトラ個体群は保全的に重要なのか。トラの糞からミトコンドリアとマイクロサテライトを読むと、他の生息域よりも遺伝的多様性が高かった。過去の個体群動態を推定すると、現在の個体数は過去の個体数の1.7%程度であること、ムガル帝国大英帝国によるインドの虎狩りが始まった頃(200年前)に個体群の減少が始まったことがわかった。したがって、今までの亜種レベルでの保全よりもインドを重点的に保全した方が良いのかも知れない、だそうです。


Molecular Biology & Evolutionは、人類の過去の個体群動態の推定。サピエンスがネアンデルタールやエレクトゥスやフローレシエンシスと交雑したかどうかは、古DNAと現生の人類を比較する方法もあるが、ここでは現生の連鎖不平衡のみで推定。Plagnol & Wallの2006年のPLoS Geneticsの論文よりデータを増やした。まず、図1の複雑なモデルのパラメータを推定。アフリカ集団で個体数増加、非アフリカ集団にボトルネックが存在したらしい。次に、古人類の混合率を調べると、ヨーロッパで14%、東アジアで1.5%ほど混じっていそう、との話。ただし、どの種が混ざったのかはわからないし、仮定に依存して混合率は変化するので注意が必要。