would never have doneは“絶対ありえない”

今回は“推測のwould”の否定形を見ていきたいと思います。
wouldの否定形と言えば特にneverを使った形がよく出てきます。
このパターンも、“would=控えめな推量”だと思いこんでいるとneverという強い言葉とどうしても噛み合わず混乱しますので注意が必要です。

一見同じ形でも文脈によって意味が全く異なる

If節を使って、「そんなことはしなかっただろう」という表現を作ることができます。
このとき、If節の内容によって結論が全く変わってきます。

  • (仮にどんなことが起こっていたとしても)そんなことはしなかっただろう。
  • (仮に条件が異なっていたら)そんなことはしなかっただろう。
  • (仮に私がその人の立場だったら)そんなことはしなかっただろう。


このように、一見すると同じ「そんなことはしなかっただろう」でも、文脈によって全く異なる意味を持つことが分かります。
したがって、“would do”“would have done”だけに注目するのではなく、前後の文脈を捉えることが重要となります。
この文脈把握に失敗すると、実際に行為が行なわれたのか行なわれていないのかがわからなくなり、全く逆の意味で受け取ってしまう危険性があります。
次に紹介する分類は文法のための文法という感じでそれ自体はあまり意味がないのですが、同じwould have doneでもいろんなパターンがあるよという説明のために敢えてしてみます。






1.(仮にどんなことが起こっていたとしても)そんなことはしなかっただろう。
このパターンはいわゆる反実仮想ではなく、自分がそんなことをするという推測が成り立つ余地はこれっぽっちもない!という強い否定になります。
仮定法を見ると反射的に反実仮想が思い浮かぶ人は、裏の意味の「(しかし実際はやった)」という書いてもいないことを想像してしまうので要注意です。


(1)本当にその通りそんなことはしなかったパターン
話者の強い否定・確信が表れているパターンです。

  • I would never have signed for Manchester City, says Dimitar BerbatovTHE TIMES

「契約するなんてことは最初からありえなかった」
このパターンのwouldを“意志”として説明している場合がありますが、やはりこれは“推測のwould”です。
時制がずれていることもそうですが、下のようなケースが“意志”では説明できません。

「どうやっても勝つはずがなかった」


(2)少なくとも話者のなかでは本当にそんなことはしなかったパターン
これは上のパターンと似ていますが、実際に話者の確信が現実のものになっているかどうかが分からないパターンになります。


would never have gone through with‐ WordReference.com

Bishop Christensen said Father Willenborg told him he would never have gone through with forcing the woman, Pat Bond, to have an abortion, but admitted that abortion was a “passing thought” he had had out of panic.----taken from New York Times

「実際に堕胎を強要したりなんてことは絶対にしなかった」という主張。(本文を読むと女性の言い分とは食い違っていますが)
少なくとも、「条件さえ違えば堕胎なんてさせなかった(けど実際は強要して堕胎させてしまった)」ではありません。

  • David 'Would Never Have Committed Suicide' Says RepThe insider

「自殺はありえない」

  • Model's family say 'she would never have committed suicide'Telegraph

「自殺したはずがない」


Pilot was texting before fatal chopper crash‐nzherald.co.nz

Saxton texted his friend Jonathon Wallis about 6.20pm - when he would have been flying - but because the precise time of the crash was not confirmed, they would “never know” if the texting could have been a factor, said Wallis' brother, Toby.


He said Saxton was an experienced pilot and would not have been “playing around” in the aircraft. “It's so bizarre and tragic. There's no way he would have been playing around.”

「いいかげんに操縦するなんてありえない」
※2行目のwould have been flyingはもろに推測のwould。目撃者がいませんので。


(3)推測していないことが現実に起きたパターン
話者の覚悟・自信は変わっていなかったのですが、現実のほうが推測を上回ってしまったパターンです。
反実仮想だと文の内容全体が覆るわけですが、この場合話者の推測に対する自信自体は覆っていないところがポイント。
しかし“驚くべきことに”自信満々の推測を覆す事態が起こったのです。

「まったく思ってもみなかったこと」

「まったく予想もつかなかった」

「まったく予期していなかった」

  • something I would never have done before my strokeHealthBoards

「まったくしなかっただろうこと」


※would never do
would never doだと話者がいま持っている確信になります。
なのでこれからどうなるかは分からないとも言えます。

  • 'He would never have affairs': Carla Bruni talks about marriage to Nicolas Sarkozyhellomagazine.com

「浮気なんて決してしない」

「そんな安いことは決してしない」

  • David Hasselfhoff: 'I Would Never, Never Have A Gun In My House'Starpulse.com

「そんなこと決してしない」






2.(仮に条件が異なっていたら)そんなことはしなかっただろう。
いわゆる仮定法過去完了(反実仮想)です。
後悔もあれば、単純に仮の話をしている場合もあります。

  • Imam Faisal Abdul Rauf: 'I would never have done it'POLITICO.com

“I would never have done it,” he said when asked what he would have done had he anticipated what would happen. “I'm a man of peace. I mean the whole objective of peace work is not to do something that would provoke controversy.”

何が起こるか分かっていたらどうしてましたか?と訊かれて、「混乱をもたらすようなことは絶対にしなかった」

  • A top Cobb student says, “I would never have done half of what I have if it hadn’t been for these teachers.”ajc.com

「先生との出会いがなければ今の自分は絶対になかった」





3.(仮に私がその人の立場だったら)そんなことはしなかっただろう。
これも仮定法過去完了(反実仮想)。
下に挙げているのはぴったりの例文ではありませんが。

  • Murder of Meredith Kercher: Flawed evidence would never have been allowed in UK courtMirror

「そんな証拠はイギリスの法廷なら一蹴される程度のもの」





“No one would have done”

主語に否定が来るパターンもついでに紹介。


At one time, no one would have hesitated to...は仮定法過去完了か?教えて!goo

  • At one time, no one would have hesitated to light up at a station, in a restaurant, or in a hospital waiting room. Nowadays, however, smoking is banned or strictly restricted in public places.

明らかに仮定法(subjunctive)、でも大学受験でいうところの“仮定法”(反実仮想)ではない。
推測のwouldの否定なので、「よもや〜する人はいなかっただろう」。
これまで見てきたneverを使ったwouldの否定と変わりません。



would haveの使い方を教えてください。教えて!goo

  • No one would have predicted that within five years their complacent view of teh world would be shockingly upended, producing an entirely new conception of the universe and entirely new technologies that would transform daily life in the twenties century in unimaginable ways.

同様のケースです。






まとめ
“would never do”“would never have done”というのは強力な否定です。
この場合のwouldは控えめな推量ではなく、“話者の自信が感じられる推測”・“常識からいって当たり前”という推測のwouldになります。
「普通に考えてみろ!俺がそんなことするわけないじゃん!」「常識的に考えてあいつがあんなことしでかすなんて絶対にありえない!なにかの間違いだ!」という具合です。