Сивый Яр (Sivyj Yar):[Из тьмы вымерших деревень (From the Dead Villages' Darkness)]


Moonbloodみたいなモシャモシャのロン毛がいかにもモテないメタラー感バリバリ(褒め言葉)Vladimirによるロシア産独りアトモスフェリック・ペイガン・ブラックメタル、2014年4th。6曲37分半。
毎度通好みなリリースをしてくれるイタリアの変わり者Avantgarde MusicよりCDでリリース。
限定数は知らないがテープもリリースしているようだ。
またBandcampにてデジタル盤も購入することが可能。


勇壮さと悲壮感がブレンドされたエピックなメロディを携えた落ち着き目のアトモスフェリック・ペイガンでスタートし、Alcest1stPest Productions[The World Comes To An End In The End Of A Journey](通称白コンピ)期のポスト/シューゲイズ・ブラックでとてつもないカタルシスを迎える、なかなか想像し難い組み合わせが意外ながらドハマリしている異文化コミュニケーション・ブラックメタル
Drudkhなんかを思わせるゆったりしたリズムに乗せて、しっとりアコギなども絡めながら渋みの効いた哀愁メロディを奏でる、ウイスキーロックが似合うタイプのオトナサウンドがベース
ファ〜ファ〜したシンセの醸し出す荘厳な空気感の中、胸を打つトレモロが掻き鳴らされ、歪みの少ないベースがビコビコと色気を振り撒くあたりなんか、まさに夜景の綺麗な高層ホテルのレストランでロックグラスを煽りながら聴きたい感じ(ただし隣に美女はいない)。


そんなサウンド#1[Blackened Fields Cry in the Distance]〜#3[From the Dead Villages' Darkness]まで展開した後、#4[Distant Haze Was Arising]に突入するといきなりシューゲイジングなジャカジャカ掻き鳴らしと飛翔感のある幻想的なトレモロ/涙腺刺激の高音トレモロが炸裂!!
一旦静寂パートに入り、暖かく柔らかなアコギ・アルペジオからの儚げトレモロ爆走(4:00過ぎ当たり)以降の展開は全シューゲイズ・ブラック・ファンが歓喜の涙に溺れて笑顔でご臨終すること止む方なし!
続くアルバム後半は前半のペイガンな哀愁も滲ませながら琴線破壊系スタルジーを発散するポスト・スタイルへとシフトチェンジ。
特にこのポスト感が昨今流行りの激情系でなく、シューゲイズ・ブラック勃興期の有機的なノスタルジーに満ちているのがおじさんとしては嬉しいことこの上ない。
これこれ、シューゲイズ・ブラックつったらやっぱりこれよ!!
またヴォーカルがBurzumスタイルでアリながらアクの少ないヒョーヒョー泣き叫びであることが色味の違う前半と後半どちらにもマッチしている当たりが絶妙だ。


というわけで、あえて硬派な異教系ブラックメタラーよりも軟派なポスト・ブラック・ファンにオススメしたい作品
6曲収録ながら#1#6[Silky Grasses Wilted]はそれぞれイントロ・アウトロであり、ブラックメタル曲は実質4曲。
その中で前半はアトモス・ペイガン曲、後半はポスト/シューゲイズ曲という、このバランスの良さというか曲運びがニクイ。
いやもうこの#4マジで素晴らし過ぎるんだけど、アルバム冒頭からこのサウンドというわけではなく、前半でペイガンな哀愁をじっくりと紡いだ後、満を持してこの楽曲でノスタルジーを発散させるっていうこの展開がもうズルイ!
楽曲単体としての素晴らしさはもちろんながら、アルバムで一つの「作品」と感じられる点が一作聴き通しての確かな充足感を残してくれる。
Drudkhタイプや、最近だとEnisumWędrujący Wiatrあたりが好きであり、かつAlcest1stPest Pro.白コンピに拭いきれない憧憬を抱く人なんかはオムツ履いて聴くことを前提としてバリバリオススメだ!!


【お気に入り】
#4[Distant Haze Was Arising]:久しぶりに言う気がするけどロシアおそロシア
【レーベルサイト】
http://www.avantgardemusic.com/
【Bandcamp】
https://sivyjyar.bandcamp.com/merch


ちなみに今作を聴いたのち、1st2012年EP3rdと聴いてみたが、やはりそれらにはポスト感はあまり感じられず哀愁溢れるアトモス・ペイガン系(もちろん良い作品)ながら、前作3rd[Как прежде плыли зори (The Dawns Were Drifting as Before)]では今作に通ずる儚げなトレモロアルペジオなどもふわりと垣間見ることができ、なるほどなって感じ。
また今年9月リリースの新作[Burial Shrouds]もポスト感ある作品の様で今から楽しみ。
そういえばDrudkhも近作ではポスト系寄りなサウンドなんだっけ?
Old Silver Keyなんかもあるし、アトモスフェリック・ペイガン系とポスト/シューゲイズ系って意外に親和性高いのかしら。