震源地を離れて 〜武蔵村山イオン〜


FM仙台のラジオを聞いてると

あまりのガチさにビックリします。

本当に生きるための情報(水とか携帯の充電とか)ばっかり。



今日から、放送内容が日常に戻ったとか

ラジオで言ってますけど

遠く東京からみると、それでもリアル過ぎて、驚きの放送内容でした。





何を考えても暗くなりますし

かといって

地元の人に有益なことを言えるわけではないので

日常レポート。



自分の分野っぽく

都市論&場所論に移ろうと思います。




武蔵村山市イオンモール

むさし村山ミューに行ってきました。



なんとなく

イオンモールと言うのは

商業施設ではなく

何らかの思想や機能を担うためにつくられた

「都市」のように見えます。

それを写真から追ってみたいと思います。



写真は基本、隠し撮りなので

ピンぼけしまくってます…。





まず外観から…

唐突に、郊外の風景のなかに


イオンが浮かび上がる。



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駐車場は全部で5200台分あるそうです。





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なかに入ると、いきなり

17歳、好きな場所、イオン

という強烈なキャッチフレーズが!



入り口でフロアガイドを受け取り


中に入ります。

100を楽に越える専門店があるようです。





【食品売り場】



まずは食品売り場。

トップバリュブランドの食品がずいぶん増えました。



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私も前、そんな会社にいたんですけど。

イオンではもはや、食品や洋服さえ、自分たちで作っています。

それを自前の店舗に並べているのです。



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生鮮、畜産関係の売り場では


レシピ提案がよくあります。

店員さんと話をする機会はないと思いますが

スーパーに行くと何気に、いつもこんな提案を受けますね



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どう感じるかは

人それぞれですが、この店は、外資が入ったSEIYUに近い感覚なのか

かなり無機質、工学的な

商品の並べ方をしているような気がします。

ショッピングを楽しむというか

何か、獲物を刈り取っていくような機械的な印象さえあります。





【ファッション】




イオンモールで最も多いのは

「ファッション」というカテゴリーに入る専門店です。

店はもちろんのこと

ここで目立つのは、華やかに着飾った「ショップ店員」です。

三浦展さんや速水健朗さんの調査では、地方都市では

ショップ店員とキャバクラ嬢が、割りと現実的に

憧れの職業になっているのだとか。

…それもそのはず、地方都市で暮らすことを考えると

公務員か、工場の職員か、どっかでアルバイト

という選択肢がリアルなわけだから

ショップ店員は、かわいいし、憧れになるのは実際だと思う。



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いつの間にか、女子力の提案を受けます。


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この辺の店は

ショップ店員らしき人が目立ってました。

春休み中なのか、手をつないだ中学生や高校生のカップルが多い。





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イオンスタイル。

ともかく、スーツがやばいぐらい安い。

最近は、食品や日用品を通り越し、衣類に力を入れている

イオンブランドです。






【映画】



いまや、地方都市には映画館がありません。

あるのは唯一、イオンの中だけ。



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なんか、やたらに

並んでて

何かと思ったら、プリキュアやってました。



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yamayuuriさん、見たくないもん!

プリキュアの映画なんて…、子どもじゃないんだからっ!




【グルメゾーン】



食事をする場所もたくさん。

大きく、フードコートと、専門料理店街に別れます。



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フードコートは、入るのは無料です。

水だけ飲んでる人もいます。

割りと郊外ロードサイドで見るような店が多いですね。

けっこう、騒がしい感じ。



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こちらは専門料理店。

本当に何でも揃ってます。

仮に何も買い物をしなくても、食事だけしにイオンに来る人も多そう。





【カルチャー・サービス】



雑貨屋とか、多いです。

内容、被ってんじゃない?って店もけっこうありますが

なぜか飽きません。

工学的な食品売り場はともかく

イオンは「買い物をする場所」というより

時間を消費する場所だと思います。

なので、何も買わずに、けっこうグルグルできるのです。


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ゲームセンターと言っても

中学生が楽しめそうなところから、本当の幼児向けまで、いろいろある。



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何か分からなかったら、とりあえず

インフォメーションセンターのお姉さんに聞く。

都市で言うと、役所みたいな存在?



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じつは、イオンと言えど

ものを売るだけではありません。

レッスンをやってる店や、ABCクッキングと言って

親子の料理教室をやってるところもあります。

まさに「消費と文化」を丸抱えしてしまおうという、イオン氏。





【構造・空間・意匠】



ようやく本題。

イオンが単に買い物の場所ではなく

時間消費型の施設であり。

なおかつ、商業施設ではなく、もはや都市だというのは

全体の構造を見ていると感じることです。



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広いので、走り回れます。

疲れたら休む場所もたくさん。植物もある。



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この建物は3階建てですが

とても開放感があります。

店が建ち並び、人が行き交う様子が見えます。

意識して、空中都市を作ったかのようだ…。



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2階、3階は、真ん中が「吹き抜け」のため

まるで道路を挟んだ歩道のように

右端、左端に店舗があります。

途中で、横断できるスペースが設けられています。


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フードコートのテラスから

外を眺めています。

外は物流工場と、パチンコ店、量販店。

典型的な「郊外ロードサイド」の風景です。

イオンにいると気づきませんが、現実にはかなり殺伐とした場所だったりします。





『理想都市・イオンについて』



イオンモール

たいてい、郊外の田園地帯に

唐突に登場してくるか

いわゆる国道沿いのロードサイドに混ざっているか

どちらかのパターンが非常に多く

基本的に車でしか行くことが出来ません。




それでも、上の写真で見たように

イオンモールは地方都市の若者たちにとって

ほぼ間違いなく

街でもっとも魅力的な場所です。

若者だけでなく、大人たちにとっても、もっとも現実的に

ライフラインを支えている場所です。



私が前の仕事で

東北のイオンモールを回っていたとき

秋田の農業高校の女子高生たちが

イオンのなかのスターバックスコーヒーで

楽しく談笑している姿を見ました。

イオンが地元にやってくるとは、「東京にあるような」消費文化の形態を

そのまま田舎に持ち込むことを意味します。



これに対抗するかたちで


中心市街地の衰退や駅前文化を語る方面から

「郊外ファスト風土論」

「大型店規制論」

「イオンが文化を壊す」

といった批判的な声が聞かれる、という構図になっています。





しかし、少し歩けば分かるように

イオンは

「都市のなかに唐突にやってきた大型店」

というよりも

もはや

「何もない田舎町の中に、都市をつくってしまった」

という存在なのです。



田舎のイオンの中には、街全体にあるより多いのではないか?

という数の店が集まり


しかもそれらが、シャッター商店街とは違い

連鎖的に「開いて」並んでいます。

このイオンに行かずして、若者が街の商店街で

回遊する理由はありません。





また、とても面白いのが

イオンのなかでは

子どもたちが「走り回ってもいい」ということです。



普通、駅前のデパートでは

そんなスペースはないですし

どこの店にいっても、周りの目を気にするので

「子どもが騒がないように」

「走り回らないように」

と親が気を遣います。


それが、イオンのような広いスペースでは

むしろ走り回ってください。

と言わんばかりなのです。

しかも凄いのが、イオンモールの床です。

この床は絨毯のように柔らかいので、転んでも大丈夫です。



走ってください、転んでください。

それが、イオンモールの空間です。



なおかつ

どこを走り回っても

車に轢かれることがないし、変質者に連れて行かれることもありません。

放置自転車もなければ、タバコを吸ってるオヤジもいない。

もはや、郊外地や田舎でさえ…

いや、郊外や田舎だからこそ

国道を車が行き交い、どこに行っても

車に気をつけなければ行けませんし


街中では、常に犯罪被害にあう危険があります。



しかし、車がなくて、絨毯で、警備員がいて

空調が利いているイオンは

最も快適な、最も殺菌された場所となっています。





イオンモールを商業施設として捉えると

なんだか、あまり本質をつけない気がします。



そう、たぶん

イオンは都市なんだと思います。



確かに、安心・安全・消費といった

人間の欲望に忠実になり

なおかつ、色彩豊かなデザインと、回遊空間、人々の賑わいを設計する。

これらを追求していくと


結局それは、理想都市のかたちになります。



震災の直後に言うのは

気が引けますが。

既にして「都市」は、我々の目の前にあるので

理想都市をつくるといっても

都市計画家は図面の上にしか都市を描けませんし

私たちもまた、シムシティの上でしか都市を描けないのが普通です。



しかし、そもそも

「都市」は屋外に、1から創造するものと決まっていません。

それならば…と田舎に土地を買い

東京ドーム何個分という敷地の上に

「理想都市」を作ろうとしたのが

イオンではないでしょうか。



その意味において


イオンは「都市設計」「都市デザイン」の会社となっています。



都市計画をやりたい人、理想都市に興味がある人は

役所に入所するんじゃなくて

イオンに入社するのも

本気でありだと思います。

(さすがに、もう郊外店は増えないだろうが)



わたしは今日のイオン巡りで

もはや地方都市の賑わいを復活させるには

古き良き商店街や駅前にこだわるよりも

「イオン的なもの」の精度や思想を

より高めたほうが近道だと思いました。

思想地図のショッピングモーライゼーションが

やはり本当に参考になるのではないか。



『いくつかの批判』


歩いていると

ちょっと不思議にも思えることもあります。



確かに、数多くの専門店が並んでいて

特にファッション関係の店は

とても多いです。



しかし不思議なことに

新宿や渋谷といった「雑踏」にあるような

「周囲の目」というのが

全く感じられないのです。



例えば、新宿や渋谷、原宿にも

服やアクセサリー、美味しそうな食べ物を

売っている店はたくさんありますが

あれは

「かっこいい服を着てる人」


「美味しそうなクレープを食べてる人」を

目の前で目撃することによって



なんか、あたしも欲しいな、食べたいな



とか思うものではないでしょうか。

人間が「意図せずに」お互いに影響を与え合っていて

都市が存在していると。



それが、イオンのような

だだっ広い空間に、店だけを並べられても

その間に「人」があまり介在しないのです。



誰かを見て

「あ、この店にいかなきゃ!」とか思わない。



ただ単純に


自分と商品(あるいはショップ店員)が

そのままダイレクトに繋がっているだけであり

あれはやはり、都市的な消費と

微妙に異なっているような気がするのです。



うまく言えませんが

その辺の空虚さに、あえて自覚的になり

これを越える仕組みや設計を、イオンが生み出すことを願います。





以上は、「空間」に関する

レポートのみなので。



もうちょっと人間的な、精神的な部分は

割愛します。

本当は、イオンとリア充問題は

とても深い関係があると思いますが…