春の鍵穴
朝ぐだぐだでギリギリで
なかなか思い通りに進まず
少しずつイライラしながらも
前には進む類いの仕事なのがさいわい。
夜になると研ぎ澄まされ
一区切り着くと達成感もあり
クールダウンの為に徒歩で帰宅する
一息着いたらホッとした気分で
ワインをちびちちびとなめるように飲むと
ソファに堕ちて
また朝がくる。
3#11
朝に近い夜更けのこと
気持ちよい脱力感で事務所を出る
徒歩帰宅
いつものようにエレベーターを降り
カードキーを我が部屋に差し込む
あれ
なんだ
ドアが開かない
カードキーも脱力かよ(ちぇっ)
何度かガチャガチャとやるが
ドア開かず
あれ
何やら中から人の気配
ハッとして
恐る恐る
左上の部屋番号を見上げる
わ
ま・ち・が・え・た
一階下でエレベーター降りてた
わ、ごめんなさい中の人
恐る恐るって
中の人
‘恐れ恐れ’てしまうシチュエーションですよね、、、
わざわざ謝るわけにもいかず
スッーとフェイドアウトして
ダッシュで階段を登り
正しい部屋の鍵穴には
正しくカードが滑り込む。
ごめんなさい、まだ見ぬ階下の人。
猛省、クールダウンのために
新しい赤ワインの栓を開けて
朝が、きた
どこか生活の鍵穴が
磨り減っているようにも思えるが
また一巡りして、春はもうすぐ来るようで
カチッとはまる瞬間も近い
それを信じながら、時間を重ねてみる。