望むような未来は決してこない(1)

ラーメンズ


私が好きなお笑い芸人にラーメンズが居る。ことラーメンズに限って言えばお笑い芸人という括り方自体がナンセンスで、ある種の劇団だと言ったほうが近いと思う。


ラーメンズの第12回公開公演に「ATOM」という題材がある。(この作品はASIN:B0006B9XSS に収録されている。ASIN:B00006G8UTめだ。)


この「ATOM」、ストーリーは、タイムカプセルに入って30年間眠っていた父と息子との再会シーンから始まる。父は、息子を鉄腕アトムにちなんでアトムと名づけた。父は未来に対して凄くあこがれている。目覚めた父は、「30年前に無かった未来を見せてくれ!」と息子にねだる。息子は携帯電話を見せる。最初は驚く父だったが、「へぇーコードなしか。キ・テ・ル・ナ未来!」「で、考えたことが自動的に文字になって送れるっと!なるほどキ・テ・ル・ナ未来!!」と言うのだが、息子にそんなのは無理だと言われて「それじゃタイプライターと変わらないジャン?」と返す。


30年分の新聞を読みたいという父に、パソコンのなかにデータとして入ってるから読みなよと息子が言う。それを聞いて父は感動してこう言う。

父 「そうかぁもう紙は使わない時代かぁ」
息子「使う使う。ノートだって本だって新聞だって」
父 「ははーん。レトロブームだな?本当は、コンピュータを直接脳につないでいけるけど、あえて紙という懐かしの媒体で!」


この父のズレっぷりが面白い。このコント自体はずっとそんな感じで進む。この父の描く未来像では、立体で浮き出てくるテレビがあって、街はすべて動く道路になっていて犯罪都市ネオ東京には宇宙暴走族が走っていて、人類の何割かは火星に移住している。だが、あまりに自分の思い描いていた未来と違うと知って落胆して「お前、未来、“出し惜しみ”してない?」「また30年(タイムカプセルで)寝るわ」と言い出す。(つづく)