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2013-12-27 ドワンゴの川上会長との対談その後

[] ドワンゴ川上会長との対談その後  ドワンゴの川上会長との対談その後を含むブックマーク  ドワンゴの川上会長との対談その後のブックマークコメント


f:id:yaneurao:20131227093036j:image

ドワンゴ川上会長と私との対談記事が公開された。当日、緊張のあまり、うまくしゃべれていなかった私であるが、4Gamerの神編集によって素晴らしい対談記事へと昇華しており、twitterでの言及数はこの対談シリーズのなかで現時点ですでに過去最多を記録している。是非、ご覧いただきたい。


電王戦,なんで勝てたんですか?――「ゲーマーもっと経営者を目指すべき!」第15回は,「BM98」を開発した伝説的なプログラマーやねうらお氏がゲスト

http://www.4gamer.net/games/001/G000183/20131222001/

関連)

ドワンゴ川上会長に聞くべきだった『経営はなぜクソゲーなのか?』

http://d.hatena.ne.jp/yaneurao/20131126#p1


f:id:yaneurao:20131227093034p:image:w240

記事が公開されてから3日間は4Gamer.netの注目記事ランキング1位だったようだ。また、ニコニコ動画トップページからリンクが貼られている。(ここ、広告枠としての価値は相当なものだろうに…) ともかく、私にとって生涯最高のクリスマスプレゼントとなった。川上会長ドワンゴ様、そして電王戦関係者の皆様、ファンの方々に改めて感謝の意を表したい。


さて、上記の対談のときには私はうまく話せそうになくて、話題に出すのを見送ったものがあるので、それについて詳しく書いてみたい。


上の4Gamerに掲載された記事にもあるように私はラグナロクオンラインのなかで、「まいにちあゆみ」と名乗って商人キャラを使っていた。このゲームのなかで一番多くのプレイヤーと接する機会があるのは商人である。何故なら、あらゆるプレイヤーは狩りで得たアイテムを何らかの形で自分の欲しいアイテムに交換しなければならないが、それを媒介するのが商人からである


当時、商人として、他の商人をなるべくたくさん仲間につけ、私は商人としての巨大ギルド(組合のようなもの意味で、ゲーム内のギルドという意味ではない)を発足させていた。そのサーバーゲーム内で高額アイテムを扱う商人はすべて私のギルドに属していた。私の意志によって、特定アイテムを独占化することが出来る状態だった。


私は単なるレアアイテム転売により利ざやを稼ぐのではなく、超レアアイテム寡占化などを意図的に行うことにより、市場を掌握しようとしたわけである。そのため、商人の横のつながりを重視し、そして、新人商人を一人前の商人に育成することに尽力していたわけである。それはつまり市場をどこまで一人でコントロールできるかという経済学的な実験、そして、どこまで一人で自分ギルド(組合的な意味で)を大きくできるかという社会学的な実験をしてみたかったからである


から、当時、出会った商人にはともかく親切にすることを心がけた。そのためか、いまだに当時にゲーム内で出会った人から感謝されることがある。例えば、以下のツイートは、ASCII.jpライターである渡辺由美子さんのものである



私は自分実験目的のために他人に親切にしていたのだろうか?それは断じて違うのだ。他人に親切にすることで、仲間の輪が広がっていくのが単に心地良かったのだ。私は他人の世話を焼くのが好きなのだろう。


そうやって、ゲーム内でたくさんのつながりが出来た私であったが、しかし、一つだけ心残りがあった。それは、このゲーム世界にこのままずっといていいのか、ということだった。


オンラインゲーム世界では、運営会社こそが神であり、「神がお前は悪存在だ」と言えばゲーム内で処罰される。「MPK(Monster Player Kill = モンスターを大量に誘導し、他のプレイヤーを殺すこと)は迷惑行為であり、そのような行為を働いたプレイヤーはBAN(ログインできなくすること)する」と運営が言えば、プレイヤーはそれに甘んじなければならない。


まりゲーム内のルールとその運用を決めるのは運営会社なのであるルールは、基本的には明文化されている。「MPKは迷惑行為である」などと公式サイトなどに書かれている。しかし、何をもってMPKとみなすかは実際の運用上の問題であり、明文化されていない。また、「バグ利用は禁止」とも書かれているが、しかし、何がバグかは、明文化されていない。(その時点では見つかっていないバグもあるので) では、この運用部分が適切であるかをゲーム世界のなかから観測(検証)するにはどうすれば良いだろう?


f:id:yaneurao:20131227093035p:image:w240

当時、私は上図のようなものを想定した。上半分がEvil(悪い行動)で、下半分がGood(良い行動)だとする。当然、その境界がどこかにあるはずである。それが緑の曲線である。Goodでも図の下のほうは、かなり良い行動を意味していて、これは誰が見てもGoodである。逆にEvilでも図の上のほうは、かなり悪い行動を意味していて、これは誰が見てもアウトであるチートなどがこれに属する。オンラインゲームではやってはならない行動である


ところが、この中間らへんの緑の線が書いてある辺りは人によって(運営会社によって)解釈がわかれる部分である。このオンラインゲーム世界健全世界であるためには、自分はこうなっていて欲しい、こうなっているべきだという理想の線引きがある。


自分の考えている線引きが、この図の緑の曲線と完全に一致しているのが望ましいわけである。そのときに初めてその世界安心して棲んでいることが出来ると私は考えた。


これをなるべく少ない試行回数で検証するには、この境界らしきところの下と上の行動をしてみることである。つまり図で言うと青い☆と赤い☆のすべての行動をやってみて、赤い☆の行動をしたときにBANされ、青い☆の行動をしたときにBANされなければいい。そうすれば、はさみうちの原理により(?)、自分理想とする曲線が緑の曲線と一致するかが検証できる。


私はこれを、【世界確認行動】と呼ぶ。いま自分の棲んでいる世界自分が思い描いている世界と同質なのかをなるべく少ない試行回数で確認するための行動である


このようにオンラインゲームで遊ぶゲーマーは、ときどき無意識的であれこのような【世界確認行動】を行うことがある。つまり、この緑の曲線の境界付近だと思われる行動をすることが、この緑の曲線の存在範囲を確定させるために得られるエントロピー(情報量)を最大にするからである


そういうプレイヤーは、「これでBANされたらされたでいいわ」などと言いながら、赤い☆の行動を自ら進んで行い、そしてBANされれば、むしろそのことに安堵するわけである。「ああ、この世界自分が期待する通りの世界であった」のだと。


この行動は、一見するとプレイヤー自暴自棄に走っているだけのように見えるが、多少のリスクを犯してでも一発逆転したい(ゲーム内で金持ちになりたいだとか、最強の武具が欲しいだとか)という願望以外に、このようにゲーム世界自分が期待している通りであるのかを検証したいという心理と、また、エントロピーを最大化したいという情報学的な裏付けがあっての行為なのである


私の場合、BANされたくなかったので、赤い☆の行為はやらなかったが、しか世界健全性を証明するために境界線ギリギリにある青い☆の行為は進んでやったわけである。そしたら、運営にBANされたのである。それをもって、ガンホーが糞運営であることを理解して、ここは自分の棲んでいていい場所ではないと悟りゲーム引退したわけである


まあ、その話はともかく、上の考察で出てきた(その世界健全性を証明するために)「自ら進んで境界線ギリギリ行為をしてしまう」という一見不可解なプレイヤーの行動はきちんと論理的な説明がつくということである


さて、さきほどの図では、上をEvil、下をGoodと二分したが、上をRisky、下をSafetyと分けることも出来る。Riskyは、さきほどのEvilよりは広い概念で、BANされるようなものばかりとは限らず、一文無しになるだとか、キャラクターのレベルが上がらないだとか、そういうものも含まれる。


このRiskyとSafetyの分類で見たときにもやはりさきほどのような境界に緑の曲線のようなものがあって、「これ以上のリスクを抱えるのは普通駄目だろう」という境界存在する。


例えば、本対談シリーズで、川上会長ブラウザ三国志プレイしていたときの話があるが、これはどうだろうか。


ドワンゴ会社ぐるみでハマッた「ブラウザ三国志」。社員が“異様な空気”と口を揃える,当時の様子とは――「ゲーマーもっと経営者を目指すべき!」第7回

http://www.4gamer.net/games/089/G008929/20120708005/index_2.html

f:id:yaneurao:20131227093033p:image


「僕自身の領地は他の大きな同盟に囲まれていたんですけど放置していました」というのは、ゲーム上、本来、許容できない範囲のリスクのはずである。ところが、それによって同盟国の信頼を得ることが出来、結果として天下統一に結びつくわけである。なんとも心温まる話だ。


逆にこの同盟に囲まれている自分領地放置せずにここに手を入れていれば当然、この分だけ自国の戦力が減るので、勝利は遠のいたはずである。そう考えると、天下統一がもし可能だとしたら、同盟からの絶大な信頼を獲得する以外の方法はなかったのかも知れない。だとすれば、これが天下統一できる確率を最大化する上でベストな選択だったと言えるだろう。


まり天下統一できる確率を最大化することこそが重要で、そこに付随するリスクはもちろん低いほうが望ましいが、事ここに至っては、それはあまり意味のない尺度なのである


また、川上会長は「ゲームが長引くと仕事差し支えるので,裏切られて滅んでも全然良かったというか,それを期待していた」と、ゲームから引退を考えていたことが明かされているが、ゲーム上の引退を本当にしたいならば、本来はリスクを最大にすれば即ゲーム終了で、即引退となるはずである。ところが、川上会長に限らず、引退を考えているプレイヤー普通はそんな行動を決して取らない。リスクを最大にするのではなく、勝率を最大化しようとするか、あるいは、そのときに【世界確認行動】のようなことをして、そこから得られる情報量を最大化しようとする。


それは通例、アイテムのばら撒きだったり、他プレイヤーへの過度の奉仕だったりするのだが、そうやって、その世界自分の思っていた世界と一致することを確認し、「いままでこの世界に棲んでいて良かった」と再確認し、また、そのゲームワールドに棲んでいた自分のことを誇らしげに思うのである


将棋羽生善治三冠が全盛期(七冠時代)に、「(羽生さんは)悪くなった将棋を進んで駄目にしてしまうような脆さがある」(羽生さんの棋力からすればもっと粘れば逆転もありうるだろうにの意味)と評されることが多かったが、あれは「これで負けるなら、それこそが将棋なのだ」という、羽生さんなりの【世界確認行動】だと考えるのは私の穿ち過ぎだろうか。

yaneuraoyaneurao 2013/12/27 11:20 スマフォで見たときにデザインが崩れていたので修正しました。(2013/12/27 11:20)

はてなダイアリー、スマフォでアクセスすると勝手にモバイル用のページにリダイレクトされる。いまどきこんな画面にされても何も嬉しくないのに!おまけに「PC」用の画面に切り替えるボタンはページの一番下だ。何考えてこんなところに配置してるんだ…。1ページが長いとこんなボタンの存在に気づきもしないだろう。しかもモバイル用のページはURLが違うので、それをtwitterに貼られたりするとPCで開いたときにそのモバイル用のページが表示されてしまう。誰がこんな馬鹿な仕様にしたのだ。しかもモバイル用のページだと段組していたりすると画面レイアウト崩れる。はてなダイアリーはもともとCSSがとても書きづらいようになっているので、モバイル用にもきちんと段組が表示されるようにしようと思うと一般人には到底、不可能である。はてなはもう死んでくれ!

とこのように、自分が思い描く理想のブログサービス像と、はてなダイアリーとの乖離を嘆く行為も一種の【世界確認行動】として捉えられ、はてなダイアリーは自分が棲んでいていいところなのかというのをユーザーの視点から検証しようという心のありかたなのである。

fkmfkm 2013/12/27 11:30 はてなダイアリーって、はてな的には「修正困難なプロダクト」なのかもですね。はてなブログへの誘導もありますし。。

yaneuraoyaneurao 2013/12/27 11:33 ↑そうですね…。サービス終了が告知されたMMORPGのゲーム内でのざわつきに似たものを感じます。

yaneuraoyaneurao 2013/12/27 20:19 人気記事として、はてなブログのトップページにサムネイルごと表示されたのはいいが、そっちのブックマークのアドレスは、
http://b.hatena.ne.jp/entry/http://d.hatena.ne.jp/yaneurao/20131227%23p1
ではなく
http://b.hatena.ne.jp/entry/http://d.hatena.ne.jp/yaneurao/20131227#p1
になっていて、はてブが分散していて、全然ブックマーク数が伸びないっていうね…。

AQAQ 2013/12/28 00:49 ボンクラーズ・puellaαの作者、伊藤英紀さんが日本将棋連盟・マイナビ・内舘牧子を提訴を提訴しましたが、やねうらおさんどう思われますか。

yaneuraoyaneurao 2013/12/28 09:02 ↑今回のケースでは、内舘さんは週刊新潮の記事を情報源としてエッセイを書かれており、その週刊新潮の記事自体が少し書き方がおかしいんですよね。週刊誌なので当然の如く伊藤さん本人に確認とかなかったんでしょうけども。この点においては、内館さんに同情致します。

ただ、最近の民事裁判の判例からしても「二次ソースを信じて書いた(転載した)」みたいな子供じみた言い訳は通用しませんから裁判になれば内館さんは相当不利でしょう。

そもそも、ニコ生のタイムシフトという一次ソースに当たることは容易な状況なのに、それすらせず、二次ソースを全面的に信じて、しかも一部を歪曲して拡大解釈して間違った事実認識に基づいて伊藤さんを批判したわけですから。これは、まともな批評家のする行為ではありませんね。特に、内館さんは、作家なのですから、そのへんはきちんとして欲しかったです。

伊藤さんに対して「裁判するほどのことか?」という批判もありますが、しかし内館さんと話し合いの機会が得られないのであれば、裁判の場で話し合いの機会を持つというのも別にアリなのではないですかね。民事裁判ですと、裁判長も裁判が長引くと面倒くさいので事あるごとに和解をもちかけてきますし、内館さん自身は話せばわかる人だと私は思いますので第1回口頭弁論前に和解もありうるのでは。

Ta(ryTa(ry 2013/12/28 10:37 いちニャン去ってまたいちニャン

り 2014/01/04 08:04 floodgate(最近二週間)
1100_human 3262
NineDayFever_XeonE5-2690_16c 3189
YssF_6t_x1 3137

floodgate
1100_human 3231
ponanza-990XEE 3196
NineDayFever_XeonE5-2690_16c 3185

なんと、トップは humanです(10勝1負)。これは何が起きているのでしょうか?

yaneuraoyaneurao 2014/01/04 08:26 ↑それBonanza系の評価値を出力していることからBonanza系でしょう。また対局数が少ないソフトが最初に高いレーティングがつくことは珍しいことではありません。200局ぐらいすれば3000ぐらいに落ち着くと思いますよ。

トラックバック - http://d.hatena.ne.jp/yaneurao/20131227

2013-12-15 電王戦に向けて

[] 電王戦に向けて  電王戦に向けてを含むブックマーク  電王戦に向けてのブックマークコメント


記者会見後、私のコンピューター将棋熱が復活してきたのでいまからだらだらとコンピューター将棋のことを書きます。長文になると思いますが、お付き合いいただければと思います。


■ 電気代 vs PC


電王戦記者会見から戻ってきたら、部屋中焦げ臭い。原因を調べてみたところ棋譜から学習に使っているマシンの電源部分に使われているコンデンサーがポップコーンのように弾けたようだ。


性能の悪いPCだと電気代がもったいないので、長時間動かすための新しいPCが欲しかったところであるから、「こりゃちょうどいいや」と思い、新しいPCを新調することにした。


CPUはいさらIvy BridgeもないだろうからHaswellを選択。Core i7 4770(欲を言えば4771)でビデオカードは要らなくて、SSDは128GBとか64GB程度でも良い。HDD不要メモリは16GBぐらい欲しい。どうも、そういうアンバランスな性能のPCは売っていないようでBTOで15万前後する。部品だけ買って組み立ててれば7万円ぐらいで済むのに…。


f:id:yaneurao:20131215224937j:image


ということでAmazonさんで部品を購入。PC組み立て終わって、棋譜から学習が一段落したら、将棋倶楽部24にやねうら王を放流しますね。



■ プロ棋士は同系のソフトである理論


コンピューター将棋で同系のソフト同士の対戦は持ち時間わずかに多い側が大きく勝ち越す。これは、相手の読み筋をあらゆる変化において少しずつ上回るので、それが勝率として反映するのだと言われている。


やね「それからすれば人間なんてすべて同系のソフトとみなせるんじゃないの?」

山本(ponanza作者)「それはいくらなんでも乱暴でしょう。αβ探索をしているソフトが全部同系だと言ってるようなもんですよ。」

やね「そうかなぁ。人間って神経伝達物質信号をやりとりしている以上、生物学的な限界があるし(1秒間に読める局面はおそらく50局面ぐらいだろうし)、脳の学習アルゴリズムとか、生物学的には全員が同じ学習の仕組みなわけでしょ?そういう意味では、npsはすごく低く、評価関数馬鹿かいようなソフトとして分類できるんじゃないのかなぁ…。」


ともかく、プロ棋士がすべて同系のソフトとみなせるとすれば、本当は実力的にはわずかな差なのに(わずかに探索速度が速いだとか、わすかに大局観に優れているだとか)、勝率上の大きな差になっているというのはありえそうな話だと私は思うのだが、コンピューター将棋開発者のなかでもそのへんは意見がわかれるところである



■ 思考時間レーティング関係


Bonanzaで思考時間が倍になるとR150程度の上昇である。R2000〜R3000あたりまではだいたいそんな感じだと思う。R3000突破してからも思考時間が倍になるごとに同じようにR150ずつあがるかどうかはデータが少なくて何とも言えない。そもそも人間でもR3000以上のプロ棋士が一握りしかいないのでそのへんはよくわからない。


私は駒得のみの評価関数将棋ソフト(ひよこ将棋)を使ってfloodgateにて実験したことがあるのだが、持ち時間が倍になるとR50〜100ずつぐらいあがるのだが、R2100ぐらいのところに壁があり、そのあと持ち時間を数倍にしてもほとんどレーティングが上がらないことがわかった。たぶん、駒得だけでは押さえ込まれて負けるので、このあと何十倍かの思考時間にしたところで勝率にはほとんど変化がないだろう。


このように、大局観(評価関数)が悪いと長時間にしたときにどこかで勝率が伸び悩むというのはありうる。


このような理由から、15分の持ち時間でAに勝ち越すBというソフトがあったとして、これを2時間ぐらいの持ち時間にしたときに、今度はAの勝率のほうがあがってBに勝ち越すということはありえると私は思うのだが、これも開発者によって意見が分かれる。


例えば、NDF(というBonanzaから学習部分を改良したソフト)が長時間になったとき勝率が悪いのは何故なのか。


私は、NDFはBonanza6.0ベースであり、定跡部分もBonanzaそのままでBonanzaは定跡を抜けたときに悪くなっているような定跡が結構入力されているので、定跡を抜けたところで優劣がついているのではないかと考えている。


定跡を抜けたところで仮に先手が+300点だとしよう。ここからアマチュアのヘボ同士が指し継いだ場合勝率は5割ぐらいに落ち着くだろう。ところがプロ棋士同士ならば、先手のほうが7割以上勝ち越すかも知れない。このように、強くなればなるほど序盤での形勢の悪さをそのまま拡大して勝ち切ることが可能になるわけである


長い持ち時間ということは、双方のソフトにとって棋力は上がるわけであるから、序盤で形勢が傾いていればそのまま勝ち切ってしま確率は上がるわけで、同じ棋力同士のソフトであっても欠陥のある定跡が入っている側は長い持ち時間になれば勝率が落ちる、というのはありえる。


NDFが本当に上記の話に該当するのかどうかはわからないが、長時間floodgateの結果などから強さを判断するのはなかなか難しいということである



■ あと2,3年でコンピューター将棋はどれだけ強くなるのか


今回の電王戦PCスペック固定化したのは、川上会長いわく、「(強さに)再現性を持たせたかった。スペック固定化されていれば、何年かして、過去電王戦ソフトとの対局ということも可能になるじゃないですか」とのことだった。


ここ近年はコンピューターチェスのStockfishというプログラムの探索部を参考に、コンピューター将棋進化してきたが、Stockfishはもう以前ほど改良は進んでおらず進化のペースが落ちている。もうやり尽くされた感がある。


そういう意味では、コンピューター将棋はあと数年ではそうそう進化せず、3年後に「今年の電王戦の優勝ソフトと3年前の優勝ソフトponanzaと対局させてみました」みたいなエキシビションマッチをしても、3年前のponanzaに負けてしまうということは十分ありうる。


そんなことを私は漠然と思っていたのだが、電王戦記者会見後に今回電王戦に出場する開発者6人で話し合ったところ、2,3年あればまだR300ぐらいは伸びそうだと私は感じた。


NDFの作者がNDF学習アルゴリズムについての論文準備中らしく、これが発表されると、どのソフトR100ぐらい伸びそう。

・Stockfishの探索部分をコンピューター将棋向きにチューンすることでまだR50ぐらい伸ばせそう。

・評価関数の形が何か改善されてまだR50ぐらい伸びそう。

CPUの多コア化でR100ぐらい伸びそう。


■ 長時間になると人間有利なのか?


Bonanzaは思考時間が倍になるごとにR150程度上がるとして、人間側は思考時間が倍になるとレーティングはどれくらい上がるのだろうか?


これもデータがなくて何とも言えないが、人間の大局観(評価関数)は極めて優れているので、Bonanzaなんかの比ではないはずだ。つまり、R300ぐらい上がる…としよう。


このとき、仮に15分の持ち時間では人間側がコンピューターに負け越すとしても、持ち時間が5時間(20倍)になれば、話は違ってくる。


ちょっと計算してみよう。プロ棋士トップ集団将棋倶楽部24でのレーティングR3000〜R3200程度だとして、ponanzaはR3453。ponanzaは同じぐらいのレーティングの対戦相手がおらずRが伸び悩んでいた意味があるので、実際はR3700級であろう。


ところが持ち時間20倍になると、どうなるのか。ponanzaも持ち時間が倍になるとR150のアップだとすると、


人間レーティングは、R3200 + log 2(20)×R300 ≒ R4497

ponanzaレーティングは、R3700 + log 2(20)×R150 ≒ R4348


なんとほぼ互角ぐらいになるのである


ただし、コンピューター場合局面を覚えておくためのメモリとして60GB程度使えるが、人間場合、そんなに大量の局面を覚えていられないので、持ち時間5時間というのはほぼ限界に近いだろう。(例えば、持ち時間を8倍にしたからと言って、さらにR300×3=R900の上昇が見込めるかというとその辺は怪しい。)



■ 大晦日のツツカナVS船江恒平五段は、どちらが強いのか


プロ棋士間でのレーティングは1200〜2000のようですが、これが将棋倶楽部24でどのあたりに写像(数学的な意味で)されるかというのは、興味深いところです。


将棋倶楽部でのレーティングが既知であるいくつかの棋士(実名は伏せる)からその分布を調べると…

プロ1200 = R2300付近

プロ1500 = R2800付近

となり、船江五段はプロ棋士レーティングで1663らしいので、

プロ1663 = R3072付近

あたりではないかと推察されます。


ツツカナの強さですが、まず、ponanza将棋倶楽部24でR3450を記録しています。対戦相手がいなくてRが伸びないだけで、実際はもう少しRは高いと思います。しかしあの記録は8台ぐらいのクラスターで出した記録だったと思うので、そのへんを考慮すると1PCではR3300前後ぐらいかと思います。


次に、ponanza > ツツカナ > Blunderが成り立つとして、BlunderはponanzaよりR278ほど下らしいので(下山さん談)、ツツカナはponazaとBlunderの真ん中あたりだとすると、R3150あたりではないかと思います。


ただし、これは将棋倶楽部24の持ち時間でのレーティングでの話なので、4時間の持ち時間ですと…上で私が書いた「人間は2倍の持ち時間でR300上がる」説を信じると…。


・船江五段 : R3072 + log(2)16 ×R300 = R4272

・ツツカナ : R3150 + log(2)16 ×R150 = R3750


ツツカナのほう、持ち時間2倍ごとにR200ぐらい上がるとすると、

・ツツカナ : R3150 + log(2)16 ×R200 = R3950


人間のほう、持ち時間が2倍になってもR200ぐらいしか上がらないとすると、

・船江五段 : R3072 + log(2)16 ×R200 = R3872


まあ、いずれにせよなかなかいい勝負が期待できるのではないでしょうか。

私の見立てでは船江五段、やや有利と言うところです。

ジャックジャック 2013/12/16 01:46 大晦日のツツカナVS船江恒平さん 
どちらが勝つと予想しますか?
よかったら予想を聞かせてください。
条件は前の条件とまったく一緒らしいです。
船江さんはアップデートされてますが(笑)

yaneuraoyaneurao 2013/12/16 02:26 ↑本文に追記しました。私は船江五段を応援してます!

ジャックジャック 2013/12/16 02:54 予想ありがとう御座います。

BigHopeClasicBigHopeClasic 2013/12/17 08:27 将棋棋士レーティングサイトには早指し限定のレーティングもありますので、
もし24のレーティングと比較するなら、こちらと比較したほうがよいのでは
ないでしょうか。
http://homepage3.nifty.com/kishi/catR/kotoshi_3.html

特徴としては
・全棋戦レーティングよりも上下差が少ない
ということで、これはサンプル数の少なさと、早指しの方が紛れが出やすい
(早指しこそ実力差が出る、という見解もありますが、やはり前者の方が大きいかな)
ということなのかなと思います。

電王戦出場棋士でこの辺が極端なのが阿部四段と船江五段で、
阿部四段 トータル41位、早指し11位
船江五段 トータル32位、早指し70位
となっています。

棋士レーティング→24レーティングの分布で、早指しレーティングを用いる必要性は
あまりない感じでしょうか。所詮は推定にすぎないといえばそうですが。

浜居 双輪浜居 双輪 2013/12/17 22:40 「プロ棋士は同系のソフトである理論」
おお、面白い。逆に棋士から見たら、
「将棋ソフトは皆、同系の棋士である理論」
も成り立つかも。どれも早指しの神、終盤の鬼。
よく近づいて見ると、棋士もタイプに分かれ、ソフトも系統が違っているけれど、
棋士とソフトの違いが大きい分、個々の違いは小さく見えるのかもです。

yaneuraoyaneurao 2013/12/18 02:53 ↑*2 なるほど。早指しレーティングと長時間でのレーティングとでは個人ごとにレーティングの浮き沈みがあるのが興味深いですね。
↑*1 そうですね。ソフトはソフトごとに棋風の違いはありますが、それでも大別すると終盤型の棋士ということになりそうですね。

ぼくはおばけのQたろうぼくはおばけのQたろう 2013/12/19 00:03 何年後かにやねうら王が羽生さんを打ち負かす事を期待しています。

同系の話をするのなら「同系のソフトはどの程度「次の一手」の結果が一致するのか」みたいな事をした方がいいような気がしますね。

「15分の持ち時間でAに勝ち越す・・・」くだりは、ソフトBは、評価関数が優秀なのか、重いのか軽いのか。手の延長が素晴らしいのか。Stockfish的な所が素晴らしいのか。そのくらいの仮定をしてもいいと思います。

今後のコンピュータ将棋ですが、ソフト的には疎結合マルチプロセッサについてはまだまだ開発の余地があると思います。ハード的には30Mbyteのキャッシュを持つプロセッサや 128〜256GB/secのメモリ帯域のHBM(High Bandwidth Memory)も徐々に見えてきました。

蒼元蒼元 2013/12/19 22:25 先日の対戦カード発表の記者会見時に、
対策として、事後検討を行うとおっしゃっていたということは、
対局後に検討を行うことに、佐藤六段からも同意を得られたということでしょうか?

yaneuraoyaneurao 2013/12/20 08:31 ↑*2 疎結合マルチプロセッサは、置換表が共有できないので、ずいぶん探索効率が落ちるんですよね。疎結合マルチプロセッサ向けの探索技術自体はまだ現在の技術からかなり改良の余地があるとは思うのですが。個人的には密結合のままmany core(64コアとか256コアとか)になってくれたほうがコンピューター将棋は幸せになれると思うのです。とは言っても他のcoreと共用したいのは置換表だけですので、これがglobal memoryとしてそれぞれのcoreからそこそこの速さでアクセスできるならば疎結合と言えども実質的には密結合とみなせますし…。

↑*1 局後検討等の貸出期間中の学習に関しては電王戦トーナメント中に川上会長が「むしろ推奨」みたいなことをおっしゃっておりまして、その発言はニコ生のタイムシフトで見れるかと思います。また、やねうら王の学習設定・局後学習方法については説明文として書き、電王戦のスタッフにお伝えしました。佐藤紳哉六段の意向については私はわかりません。佐藤紳哉先生、どうも機械は苦手みたいなので対局はほとんどされないまま当日という可能性もありますし、私のほうはあまり局後学習にはこだわっておりません。

ぽぺぽぺ 2013/12/21 02:07 せっかくの対決ですし、オモシロ対決にも注目が集まってるんじゃないでしょうか。
是非、電王戦の後世に残るような超絶面白いギャグを期待してます。

っていっても、電王戦が毎年あるとすると、強いソフトは毎年出場することになるんですかね?
人がやって毎年挑戦者が変わるトーナメントに比べると、毎年出場ソフトがある程度固定になるのは、若干つまらない気も・・・

yaneuraoyaneurao 2013/12/21 06:04 ↑来年はまたガラッと勢力図が変わると思いますよ。Aperyは間違いなく入賞するでしょうし、NDFの学習メソッドを使ったソフトが出るかも知れませんし、Blunderの出場もありえますし。やねうら王もあと二回りは強くなってるでしょうし。来年の電王戦もまたドラマがあるんじゃないですかね。

.. 2013/12/24 03:35 当日の服は誰に買ってもらいますか?
お嫁さんが失敗したので、次はお母さんでしょうか
また滑り芸楽しみにしています!

ぽぽんたぽぽんた 2013/12/26 22:20 4Gamersの川上さんとの対談記事up読みましたー

一番驚いたのは「まいにちあゆみは」やねうらおさんだったんですね。
思わず画面の前で「お前だったんかーい」と思ってしまいました。

しかし、ROの解析系を全くされてないのは意外でした。
プロトコルが全く暗号化されてなかったので、0から解析しても(いい悪いはさておき)ユーザイベント用のサポートBOTとか結構簡単に自前で作れたりして、色々面白かったですけどね。

yaneuraoyaneurao 2013/12/27 09:58 ↑*2 当日ですか?当日も、もちろん例の“一張羅”ですよ?!
↑*1 ROのことは今日のエントリーでちょっと書いてみました。

蒼元蒼元 2014/01/10 11:40 電王戦もやねさん購入のPCもHaswellですが、AVX2を使用することで、強くなるのでしょうか?
プエラは、ソースコードを見る限り、AVXを使用しているみたいですが

yaneuraoyaneurao 2014/01/10 14:25 AVX2用のコード、私は書いてないですね。SSE4.2を使うコードは結構書いてあるのですが。

AVX2用に特化したコードでいくつかは最適化できる部分もあるのですが、この手の最適化による速度向上はせいぜい全体の数%程度にとどまるので、強さへの寄与からすると誤差と言えるのではないでしょうか。

こういう部分に手を入れるよりは、他に優先すべき課題がたくさんあるので、バグを産む可能性があったり、ソースコードの保守性を下げたりすることはせずに、なるべくソースコードを綺麗に保ちながらガンガン改良していくのが最近の主流なのかなと思っております。

dryCdryC 2014/01/14 19:54 AMDが推し進めている『HSA』は,GPGPUの敷居を下げるものになるような話を聞きましたが,『やねうら王』での活用は考えていますか?

yaneuraoyaneurao 2014/01/15 03:51 ↑HSAのアーキテクチャ自体はGPU/X86が統合されたSoCっぽいので、だとしたらコンピューター将棋で使えるかも知れませんね。今後が楽しみです。

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2013-12-13 3日でわかった!Unity入門

[] 3日でわかった!Unity入門  3日でわかった!Unity入門を含むブックマーク  3日でわかった!Unity入門のブックマークコメント


Unityで作るスマートフォン3Dゲーム開発講座 Unity4対応 (Smart Game Developer)

左のUnity本の著者の寺園さんは私と同い年でしか誕生日が1日違いだ。久しぶりに寺園さんに会ったので今日は一緒に新地(梅田)で飲み食いしてた。


それで、かなり酔ったところで、ちょっと実験的にニコ生で対談を配信したらどうかということになったので同席していたゲーム会社社長さんとサーバー会社の部長さんの協力のもと配信した。

http://live.nicovideo.jp/watch/lv162338374




10日でおぼえる Androidアプリ開発入門教室 Android SDK2.3対応

寺園さんは「10日でおぼえる Androidアプリ開発入門教室」の著者でもあるので、私が彼に「Unity10日で覚えられるの?」「Unity、3日で教えてよ」とか無茶ぶりしたところ、「やねさんなら3日で覚えられると思いますよ」とのことだったので、3日間、教えてもらうところをニコ生でそのまま配信し、あとでそれを本としてまとめればどうかという話になった。


題して「3日でわかった!Unity入門」である。3日で私が理解できなかったときは、「寺園さんの嘘つきー!」と叫んで本にはならずに終わり。


ニコ生での放送予定日はまだ決めてませんが、決まり次第このブログで告知します。


おまけ。


同席していたゲーム会社社長MacBook Airには荒木飛呂彦先生の直筆サイン。15秒ぐらいで描かれたそうな。

f:id:yaneurao:20131212131823j:image

ジャックジャック 2013/12/13 07:35 うわ、超いいな サイン 
羨ましい

yaneuraoyaneurao 2013/12/13 19:32 ↑他にもMabBookに荒木先生のサインをもらっている方がおられるうよです。(この方は、荒木先生にインタビューしたときにいただいたそうです。)

https://twitter.com/tatsuya_zias/status/411440463120322561/photo/1
> 山下達也(ジアスワークス) ‏@tatsuya_zias 8分 ただこのMacBook(ポリカーボネートの初期モデル)、流石にもうロートルというか……バッテリーパックも膨れあがっちゃっていて完全にオブジェ化しちゃってるんですよね(笑)。ノートPCは色紙に向かないな、とw

だそうで、なるほどノーパソはサインしてもらうのに向かないのかも知れません。

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