白鳥のめがね このページをアンテナに追加 RSSフィード

2005-05-22 ポタライブ@吉祥寺「断」 (改稿版)

[]ポタライブ@吉祥寺「断」

岸井大輔さん*1のポタライブ作品、「断」を見に行った(ことわり、と読む)。これがなかなか面白かった。

ポタライブは「「散策しながら楽しむライブ」という意味の造語」だそうだ*2。今回は吉祥寺北口開発の隠された歴史がテーマなのだとか。午後7時スタートの夜のお散歩だった。

集合地点のガイダンスから公演はスタート。作演出の岸井さん自身が案内人としてナレーションしていく。

作品に向けて取材インタビューしているとき、街の人たちに「吉祥寺っていい街ですよね」と語りかけると、多くの人が「え、うーん。」とか、なにか口ごもっている様子だったとか。それで、何か隠しているな、と思ったという体験談を語りながら、その語りはすでに吉祥寺の歴史へと参加者を導いている。吉祥寺には大きな駅ビルが無くて、何故か駅から遠くにデパートがあるんですよね、なぜでしょう・・・・説明的な語りの中からドラマがはじまろうとしている。

そして、街のなかの様々なポイントをたどりながら、それぞれの場所が成り立ったいきさつや由来についての説明がなされてゆく。様々な事情から、栄えていく店もあれば、立ち退いていった店もある。それぞれの場所に隠された歴史が、ひとつひとつ語り明かされていく。その一方で、説明の途中や、その合間合間に、町の風景に紛れるように、建物の間にのこされたあいまいな隙間や、がらんと残ってしまったあてどないスペースで、ダンサーが踊っていたりパフォーマーが小ネタを披露していたりする。

そうしたパフォーマンスは、ちょっとした虚構を現実に紛れ込ませることで、街が秘めていたドラマを浮き立たせるように作用していた。普段街を歩いているときには気に留めない様々な情報が眼に飛び込んできて、街を歩く一般の人々の姿が、独特のパフォーマンスのように印象深く見えてくる。

市街地の情報を引き立てるように、あまり虚構が過剰にはならないようにしつつ、しかし、市街地の情報に埋もれてしまわない程度には目立つものでなければならない、その絶妙なバランスが達成されていた。

再開発がちぐはぐに、部分的に、実現していったために、街の真ん中に空き地が残されていたり、ビルの狭間に隠れて個人住宅があったりする。そんな街の裏側やビルの裏側に「ここは公道だから入ってもいいんです」と言いながら案内されて歩いていく。都市の裏側を探検するような気分だ。

吉祥寺の表と裏、再開発の物語りを経由しながら歴史の痕跡のうえに今ある市街地を歩いてきた一行は、最後に闇市の名残を通って出発点のバスロータリーに戻ってくる。ロータリーが完成したのは90年代初頭のことで、実現までに30年ばかりかかったのだ・・・・という話。地権者の思惑と行政の思惑が錯綜するなかで今の街の現実があるのだということが浮かび上がってくる。

吉祥寺編でも「断」のほかにいくつかの作品がつくられているそうだが、今のところ都市の再開発がテーマになっている作品はむしろ珍しいのだそうだ。

それぞれの場所に取材して作品を立ち上げていくので、その場所の個性によってより演劇的な虚構性が濃くなる場合もあるのだそうだ。ポタライブというのは、団体の名前ではなくジャンルの名前と考えている、と岸井さんはおっしゃっていて、来月には、田口アヤコさんが作・演出に挑戦するのだという。


街頭でパフォーマンスすることは様々に試みられてきているだろうし*3発想としては珍しくないと思う。だが、問題は、その発想を方法に高めることができているかどうかだ。岸井さんが進めてきた「ポタライブ」の試みには、町並みの歴史を掘り起こしてくる手法が蓄積されつつあるようだ。

その試みは、まだまだ模索の段階にあるのかもしれないが、ここから、現代の生き方に瑞々しいものを吹き込む可能性が、様々な仕方で、大きく広がっていると思う。


参考

・船橋でのポタライブの展開については、ここに記載がある。

http://communityart.cocolog-nifty.com/hato/2005/05/post_325f.html

http://kirayume.seesaa.net/article/3672161.html

*出演者情報

・木室陽一さん

http://kurumin.dyndns.org/potalive/biography/biography.htm#kimuro

http://www.theaterx.jp/05/050615.htmlにも出演予定とのこと。

・田口アヤコさん

http://taguchiayako.jugem.jp/

・鈴木順子さん(のページらしい)

http://megamaniax.exblog.jp/



追記:「断」を見た感動のあまり、ちょっと中身を書きすぎてしまった。やはり、あの場所で予備知識なく「断」を体験して欲しいと考えて、さらに磨かれた再演を期待しつつ、いわゆる「ネタバレ」になるところは削除したかたちで書き直した。また、そのあと他の一作を見てみて、この日の「断」の公演のクオリティが常に維持されるわけではないことにも気がついた。いくつかの評価を控えめなものに直した理由はそこにある。やはり、ポタライブというジャンルは、常にあやうい綱渡りを強いられるものでもあるのだろう。(2005/5/29)

*1:岸井さんのページを見るとhttp://plaza.rakuten.co.jp/kishii/なかなか多彩な活動をしていらっしゃる様子がうかがえる。

*2:ポタライブのサイトから引用http://kurumin.dyndns.org/potalive/。サイトの更新が滞っているのはもったいない。最新情報は上の岸井さんのページで。ポタリングの語源についてはこのページhttp://www.potterist.com/about_us/potterist.html#potteringやこのページhttp://onohiroki.cycling.jp/weblog200404.html?d20040410n1_#d20040410n1に解説がある

*3:寺山修司の名前とかすぐに連想するところだけど、たとえば石井達郎『ふり人間』で紹介されている「アメリカのゲリラ演劇」の事例なども参照すべきだろうhttp://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4093870314/qid=1116823959/sr=8-5/ref=sr_8_xs_ap_i5_xgl14/249-3021831-2553960

ありがとうございますありがとうございます 2005/05/24 00:21 岸井です。紹介と批評、ありがとうございました。
またあそびましょう。
「ふり人間」いい本ですよね。
ついでに、シャークナーのパフォーマンス研究もお勧め。
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4409100092/qid=1116861352/sr=1-10/ref=sr_1_10_10/249-8891066-5012308
演劇って、素敵だなあ、という思いを新たにさせてもらえるので大好きな一冊です。

yanozyanoz 2005/05/25 00:35 どうもです。シャークナーというか、シェクナーというか、石井さんも大いに依拠していたわけですが、不勉強で未読のままです。読まないとな。

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