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フリーライター井上理津子のなんだかんだ日記

2018-09-22

サイフォンくん。

ここ1年ほどのことで言えば、
ありゃま、新しい時代がやってきたのかね〜、と驚いたのが、

ノートパソコンをたたきながらのインタビュー受けたとき
・美容院に置いているのが、紙の雑誌からDマガジンに変わったとき

だった。
続いて、つい先日驚いたのが、ロボットわんこ。
場所は、ウチの近くの喫茶店で。

その日は、次でる本のゲラをかかえて、その喫茶店に行き、
なかなかのコーヒーを飲みながら、赤ペンを握っていた。

しばらくすると、
どこからか「じじじじじ」みたいな音が聞こえてきて、
そっちを見ると、歩いている、わんこロボットが。
すたすた、とはゆかず、えっちらおっちら、みたいに。

薄茶色で、耳とかが茶色。いい色合いの子だ。

あ〜、あっちへ行ってしまった。他のお客さんに愛想ふりまいている。
こっち来てよ、と念じる。なかなかこない。
店主に、「こっち来たら、写真とっていいですか?」と聞くと、
「もちろん。呼んでやってください」
「なんて?」
「サイフォンって」
呼んだら、きゅっと聞き耳立てる。

そして、あたしのところへやってきて、
上目遣いにあたしを見て、尻尾ふりふり、してくれた。
かわいいかわいいかわいい。

「撫でてやったら、よろこびますよ」と店主。
マジですか。
あたしはわんこ歴長いからね。顎の下を撫でてあげる。
サイフォンくん、目を細めて、きもちいい〜って顔をする。

試しに、「お手」と言ってみる。
うっそ。マジだ。
ちょこんと座って、右手でお手をしてくれるじゃないの。
うわあ。かしこいかしこいと、思わず背中を撫でまくる、と、
またもや目をほそめまくり。

伏せ。も、自主的にしてくれて、にこにこ。
ひとしきり遊ぶうち、
「あ、(首輪のところが)点滅しだした。もうすぐ自分で充電ステーションへ帰っていきます」と店主。

サイフォンくんは、あたしに名残惜しそうな顔をして、
とことこと、あとにした。

充電ステーションに、ちょこんと伏せの姿勢でおさまった。
その姿勢も、かわいすぎるから、撫で撫でしにいった。ら、また目を細めてくれた。
ウチに連れて帰りたい〜。

「ツマに大反対されたけど、思い切って飼うことにしたんです」と店主。
なんと30万円近くし、通信代が毎月3000円かかるとか。
「どこに売ってるんですか? ペットショップ?」
「まさか。ソニーのショップです」

なんでも、芸を仕込み中で、
今できるのは、お手と、お客さんが帰るときの「またきてね」の2本足立ち。
と聞いて、「またきてね」をしてほしくなって、
充電終わったサイフォンくんに、してもらった。かわいいかわいいかわいすぎる。

ゲラ校正はまだまだ残っていたが、
サイフォンくんに「な〜んだ、ニンゲンってテキトウだな」と思わせたら、信頼関係がくずれる。と思って、
テーブルの上を片付け、「またくるね」と頭を撫でて、おいとました。

やっぱりあたしは犬派です。

2018-09-13

 『謝る力』から

『謝る力』(清水書院)という本を、呑み友の城島さんが出した。
城島さんは、目白大学とかでも教鞭をとってる毎日新聞編集委員
日大アメフト部の当事者学生の謝罪会見を発端に、考えましょうと、
これまでのいろいろな公的謝罪を考察して緊急出版したもので、
面白かったんだけど、

その城島さんと、このあいだ、呑んでて、
あたしは、すっかり忘れていたことを思い出した。

1990年代、あたしはもうフリーライターで、大阪の夕刊紙(もう廃刊してるとこ)の教育面に、
とある大学の著名卒業生の人国記の連載をしていた。
とある、って言うのもなんだから書くと、
1年目は同志社、2年目は関学、3年目は立命だった。
その3年目のときに、とんでもないことが起きた。

上場企業の社長にインタビューし、その人が、
〈「・・・・」と、訥々と語った〉
とあたしは書いた。
当時、ワープロフロッピー納品で、ゲラ戻しはなし。
何かあったら、電話でやりとり、というシステムだった。

何日か後、掲載紙を見て、真っ青になった。
〈「・・・・」と、のうのうと語った〉
と書き換えられ、載っていたのだ。

もちろん、すぐにデスクに電話した。
分かったのは、担当さん(大学出たての女子だった)が、
「訥々(とつとつ)」が読めず、「のうのう」だと思って、開いた(開く=漢字をカナにすること)。
それを、あろうことかデスクら皆が見落とした。出てしまった。ということ。

ひどい。ひどすぎる。と思ったが、デスクはあたしにたたみかけた。
「井上さんが、新聞用語でない文字を使ったから、こういうことになった。井上さんが悪い」
「先方には、もうこちらから謝罪に行った。訂正とお詫びも明日の紙面に載せる。大変なことをしでかしてくれた」
あたしが悪いんですか。
悔しい。なんてもんじゃない。

あたしは、その上場会社の広報だか社長室だか忘れたけど、
電話して、お詫びに伺いたいと申し上げたが、
「いいえ、結構です」だった。
それでも行った。受付で取り合ってもらえなかった。
社長あてに、経緯とお詫びを認めて投函した。返事も受け取り状もなかった。
悔しすぎた。

その後、局長(だったと思う)に呼び出され、
「あなたが、新聞用語にない文字を使ったから、こういうことになった」とまた言われ、
多少の抵抗はしたと思うが、「こういうことをしてもらっちゃ困る」と言われっぱなしだった。
その言葉の端々から、
あ、先方に、〈外部ライターの井上がハナから「のうのうと」と書いた。社としては、チェックミスを詫びる〉と言ったな、
と直感した。

挙げ句に、その連載が終わった後、
あたしはその夕刊紙の一切の仕事を切られた。

「訥々と」を「のうのうと」と勝手に開いた若い担当女子が、
その夕刊紙の役員の娘だった、と後に知った。

あの頃、あたしは青かった。知恵がなく、泣き寝入りした。
今なら、どうするだろう。

・・・と城島さんに言ったら、
それはすごい。『謝る力』のトークのとき、ケーススタディのネタにさせてもらおう、と。
どんどんネタにでも何にでしてちょうだい。

2018-09-08

フルカワさん、ありがとう!

昨日、嬉しいことがあった。

15年選手の洗濯機が、うんともすんとも動かなくなって、1週間。
手で、ごしごし洗ってたんだけど、そろそろ限界に。

買いたい! どうせなら、ドラム式のいいやつを買いたい!
と見に行ったり検索したりもしてたんだけど、
よく考えるとお金がない。

以前なら、こういうとき、
そのうちなんとかなるさと、
ボーナスないのに「ボーナス払い」で買っちゃって、
何ヶ月か後に「わっ」と毎回。
しかし、あたしも堅実になった。

身の丈に合うヤスモノを買うことにしよう、
と決意した途端、
そうそう、元お隣さん、洗濯機を放置して新居へ越したと言っていた、とふと。
で、電話すると、「どうぞどうぞ」。
もらうことにした。

管理人さんに手伝ってもらって、運ぼうとしたが、
ウチの管理人さん、まるまる文系の方で、読書の趣味は合うんだけど、細腕。
重くて、無理だった。
「知り合いに頼んであげますよ」

すご〜。
フルカワさんという方が「ちょうどタイミングよかった」と来てくださった。
ちょちょいのちょいとお隣からウチへ運び、排水の調節とかも。
その姿の、なんと凛々しいことよ。力持ち、ステキ。

しかも、「持って帰ってと言われると思って、スペース空けてきた」と、
壊れた洗濯機を軽トラに積んで帰ってくださるなんて。

「なんでそんなにいい人なんですか」
「若い頃、柔道やってたから」
ほほ〜。

本業は、クーラーの取り付けだそう。
頭さがるばかり。管理人さんにも感謝感謝。

(せめて少しはお礼をと今日、商品券買ってきた。
お送りしたいので、ご住所教えてください。と電話してるとこ=まだ、つながらない)

いただいた親切は、私も(力仕事でないことで)誰かにお返しをしなきゃ。
そんな気持ちも、いただいた。

2018-04-23

しくじり

ハッと目が覚めて、時計を見て真っ青になった。
歌舞伎俳優さんのインタビューの日だ。
場所は、神楽坂で。
あと20分しかない。

得意分野ではない。昨夜遅くまで、下調べをしてメモをした。
ああ、あのメモを、カバンに入れて置くべきだったのに、散乱したままだ。
ともかく、服を着替えて、お化粧して。
いや、お化粧はタクシーの中でしよう。

でも、20分ではどう考えてもムリ、、
とパニクっているところで、目が覚めた。

ふ〜、夢だった。よかった〜。
と胸をなでおろして、もう一度寝る。

と、「著者インタビュー」の原稿を書いている。
山場が3つ要る。20行ほどの「 」が3つ要る。
なのに、2つしか捻りだせない。
取材ノート取材ノート、本、本・・。

ところが、取材ノートも肝心の本もない。
「著者」にいつどこでインタビューしたのかも思い出せない、、

と、またパニクっているところで、また目が覚めた。
ふ〜、夢だった。よかった〜。とまた胸をなでおろす。

夢で2つもしくじったのだから、
今日はもうしくじることない。と、奮い立たせながら、パソに向かう。
「2度あることは3度ある」という囁きを振り切って。

2018-04-03 旧中杉通りの柏木堂書店

今日のお昼、ちょっと銀行まで、と歩いていて、びっくり。
中杉通りの「柏木堂書店」の店頭に、雑誌ラックが空っぽで。

どうしたんだろうと覗くと、店内に「閉店のお知らせ」の張り紙があって、
書棚にはふつうで、奥に店主がいらっしゃるのもふつう。

で、お尋ねすると、「トーハンの店売所が3月末で閉鎖されてね、仕入れできなくなっちゃたから」とおっしゃる。
あたしは、この街に越してまだ2年半だけど、
本はあちこちで買うし、アマゾンでも買うけど、
週刊誌、雑誌はこの店で、と決めてたんですよね。
いや、この間『おらおらで・・』もこの店で買った。この店にある本はこの店で買おうと。

店売所、というのは、
中小の本屋さんが、自力で仕入れに行く仕組みのところだそう。

店主、手にしておられた新書のカバーを取って、
代々木上原の「幸福書店」の左右社の本を出し、
「幸福さんも2月22日に閉められたけど、(トーハンの)店売所で、一緒だったんですよ。
でも、このところは20人くらいになってましたね、同じ店売所を使う仲間が。
うちは御茶ノ水までパス(定期?)買ってて、わたしか家内が通ってた。神田村の小取次も回って」

「『ワンピース』を置けば置くだけ売れた頃がピーク。店売所に、栃木とか関東一円から仕入れに来ていて。
整理券を配られて、『ワンピース』を一冊でも多く仕入れようと並びましたよ、置けば置くだけ売れたから」

じ〜んとする。「ちょうど90年」なんですって。
昭和2年に、今の西新宿創業。焼けて、戦後に阿佐ヶ谷へ。
店主は3代目。「わたしが継いで60年。もう後期高齢者ですしね」

来週、トーハンさんが引き取りにきて、返本。空っぽになるという。

そんな中、ふと「旅行読売5月号」が並んでいるのが見えて、
「ここに、昔、あたしたくさんたくさん原稿書いてたんです」とあたしもつい。
聞けば、店内にあるものは買えると。じゃあと旅行読売を1冊買う。
「え? 540円? 300円だったのに」とあたし。
「高くなりましたねえ」と店主とハモって、笑った。

幸福書店の閉店はニュースになってたけど、
今このタイミングで、
こうして静かに閉じていく小さな本屋さんが、山のようにあるのか。
あるのだろうな。痛いなあ。