東京朝日新聞社『ろせった丸満韓巡遊紀念写真帖』

『ろせった丸満韓巡遊紀念写真帖』
朝日新聞写真班撮影、東京、東京朝日新聞社明治39年10月

旅行者:ツアー応募者合計374名ほか
渡航先:満州、韓国
渡航時期:明治39年(1906)

<本文>

 日露戦争後、陸軍の斡旋の下、日本からの満洲・韓国における日露戦争の戦跡を巡るツアーがしばしば行われた。東京高等師範学校『遼東修学旅行記』のように学生の修学旅行としてのものもあったが、もちろん、民間のツアーもあった(この種の満洲旅行ブームは、大正末期から目立ち始め、昭和15年まで続いたという)。
 こういった、未だ硝煙燻る戦線の最前線へ一般の人々を案内することで、日本国民の意識を少しでも大陸経営に積極的に関わるように仕向けたかったという陸軍の意向が裏で働いていることは言うまでもないだろう。いわば、「国策的観光ツアー」である。

 本書は、朝日新聞社明治39年7月25日から8月25日にかけて催行した満韓戦跡巡拝ツアーの一部始終を収めた写真集である。
 このツアーは、ろせった丸という船を借り上げて、日本から374名にものぼるツアー客を募集し(中には、外国からの留学生もいたらしい)て、大々的に行われた。船は、神戸を出発し、プサン、ソウル、ピョンヤン、大連、旅順などに寄航している。

 「ツアー客」、「南大門」(先日焼け落ちた)、「仁川の韓国人街と日本人街の対比」、「旅順203高地」、「船中での福引」など、写真をツラツラと眺めているだけで十分に当時の彼の地の様子が伝わってくる、面白い一冊である。惜しむらくは、文章が全くないこと。旅行者たちの感想などがあると面白かったのだが・・・もしかしたら、当時の朝日新聞をめくれば、短信くらいは載っているのかもしれない。

ルート;
釜山仁川京城平壌大連営口撫順奉天遼陽旅順