思いつきのメモ帳

2015-03-28

[][]日本政府は『帝国の慰安婦』における明らかな間違いに訂正を申し入れたりはしないのかな?

『帝国の慰安婦』で朴裕河氏は1993年8月4日に発表された慰安婦関係調査結果発表に関する河野内閣官房長官談話の全文を引用した後で次のように述べている。

 ここには、日本政府が「軍の要請を受けた業者」の存在を知っていたことが見えている。つまり、「甘言、強圧」を行ったのは「業者」であることを日本政府は知っていたことになる。「甘言・強圧」をしたのは業者だったことを知りながらも、「本人たちの意思に反して」集められたことを重視して日本軍の責任を認めたのである。この当時もインドネシアスマラン事件を参考にしていたかどうかは明らかでないが、いずれにしてもここでの応答が、「朝鮮」を相手にしたものであることは確かである。
 つまり「河野談話」が認めたのは、軍人が強制的に連れていったという意味での「強制性」ではない。この段階ではインドネシアでのような軍の要請も知らなかったようで、「募集」は業者がしたと言いつつも、業者たちがした甘言や強圧といった第三の「強制性」だけを認めていたのである。
 それは、「当時の朝鮮半島はわが国の統治下にあ」ったことの意味を考え、直接連れていかなかったと考えながらも、募集をめぐって起きた、間接的な強制性に関して責任を認めたことになる。「官憲等が直接これに加担した」というのは、慰安婦たちの証言を額面通りに信頼したか、言われているような政治的妥協ゆえのことかもしれない。*1
『帝国の慰安婦』p.237


これは明らかに間違いである。まず、日本でのスマラン事件の初報は1992年7月の第二次加藤談話(河野談話の1年前)直後に出ており、法務省も資料の存在を認めていたし、加藤官房長官(当時)もこの件でコメントしている。こんなの当時の新聞報道を調べれば分かる。さらに2013年には河野談話の原資料となった公文書資料が開示されたことも報じられている。

慰安婦記録「軍強制」の詳細開示 公文書館、河野談話の原資料

 戦時中、旧日本軍インドネシア捕虜収容所からオランダ人女性約35人を強制連行し、慰安婦としたとの記載がある公的な資料が6日までに、国立公文書館東京)で市民団体に開示された。資料は軍の関与を認めた河野官房長官談話(1993年)の基となるもので、存在と内容の骨子は知られていたが、詳細な記述が明らかになるのは初めて。


したがって河野談話に言うところの慰安婦関係調査には当然スマラン事件の資料は含まれており、日本政府はもちろん知っていたし、参考にしていたことも明らかである。なので、太字で強調した箇所のような憶測も明らかな誤りである。事実を踏まえておらず、日本政府の見解とも相容れない記述なので日本政府マグロウヒルの教科書同様に訂正を申し入れてはどうだろうか。

それにしても、“「官憲等が直接これに加担した」というのは、慰安婦たちの証言を額面通りに信頼したか、言われているような政治的妥協ゆえのことかもしれない。”は「慰安婦たちの声に耳を澄ませて」という筆者の弁とはとても思えない。

【追記】
このエントリを執筆した時に手元に資料がなかったので、根拠となる新聞記事の紹介を端折っていたが追記しておく。

1.スマラン事件初報を受けての加藤官房長官のコメント

慰安婦」判明ならオランダにも謝罪 加藤官房長官意向表明
読売新聞 '92年7月22日 東京朝刊 2面
 加藤紘一官房長官は二十一日夕の記者会見で、第二次世界大戦の終戦直前、旧日本軍ジャワ島オランダ人女性を慰安婦として働かせていたとの一部報道について、「調査の結果、事実関係が明確になった時点で、慰安婦の出身政府謝罪したい。それは国籍、出身のいかんを問わない」と語り、事実が判明すれば、オランダ政府に対しても、将来、政府として謝罪する意向を明らかにした。


2.資料が法務省にあったことを報じた'92年の記事

オランダ慰安婦問題の資料、法務省にあった 保存分の調査始める
朝日新聞 '92年7月22日 夕刊 15ページ
 第2次世界大戦当時、旧日本軍が占領下にあったインドネシアで、オランダ人女性に売春を強要していたことがわかったが、法務省は22日、同省司法法制調査部が作成した内部資料に、この裁判の結果が記述されていることを認めた。(後略)


3.河野談話の初報記事でオランダ謝罪対象に含めたとする箇所

朝日新聞 '93年8月5日 朝刊 1ページ
(……)報告書は「募集」のほか、「慰安所設置の経緯」「慰安婦の出身地」「慰安所の経営及び管理」などについてもまとめているが、昨夏発表したのとほとんど同じ内容だ。ただ「出身地」でこれまで挙げていた日本、朝鮮半島中国台湾フィリピンインドネシアのほかに、軍事裁判記録から明らかになったオランダを加えた。(……)

*1:太字による強調は私が施した。

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