日本の家電産業の消滅

ベランダから見える富士山

かつて世界の家電市場を席巻した日本の家電メーカーが、消滅しつつある。
三洋電機、日本ビクター、シャープ、そして東芝。経営破綻するか、他社から買収されるか、事業を売却するか、その対応はさまざまだが、要するに「弱体化」の結果である。

いや家電産業だけではない。
日本の産業は、「小さな物」消えていっている。
たとえば、半導体、PC、テレビ(家電)、そしてクルマの番が来る日も近い。

欧米から「もの作り」がなくなり、いまは日本が同じ運命を辿りつつある。
欧州は金融、アメリカはIT・通信へのシフトに成功したが、はたして日本に行く場所があるのだろうか。

「松下中興の祖」山下俊彦氏にインタビューしたあと、雑談になったことがあるが、そのとき、問わず語りに話されたことが忘れられない。

「松下も大会社になり、有名になると頭のいい人が入ってくるようになった。頭がいいから本社に配属される。彼らも有能であるところを見せたい、仕事をしているところをアピールしようとして現場に口出しをするようになる。現場は本社から言われたからと最優先で取り組むが、それで失敗しても本社にいる彼らが責任を問われることも、取るこもない。責任は現場に押しつけられる。もし成功すれば、果実は本社の彼らのものになる。それはおかしいから、口出しすれば、責任をとらせようとしても、うまく逃げる。頭がいいぶん、悪知恵が働くんだよなあ。困ったものだ。そんなことを許していたら、松下といえども潰れてしまう」

彼の予言は見事に的中し、松下電器は1兆5000億円を超える赤字を抱えるまでに凋落する。そして再建に着手するものの、かつて「家電の王者」と畏怖された面影なく、いまでは脱家電がスローガン。

結局、「人」がすべてなのだなと思う。
無能で無責任な人物が社長になると、どんな優良な企業であっても簡単に凋落してしまうものなのだ。

最大の権限を振るう者は最大限の責任を負う、が企業社会の原則だと思ってきたが、それがまったくウソだと分かるのにずいぶん時間がかかったなと自己嫌悪に陥る。

そんなことを考えて、今日も一日が終わろうとしている。