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2012年02月24日

“偉人”の人間的な一面を知る☆☆☆☆

現代語訳 福翁自伝 (ちくま新書)
福澤 諭吉 (齋藤孝・編訳)
筑摩書房 (ちくま新書) (2011/7/7)
\819

齋藤先生が著書の中でたびたび触れられていたし、読むべき古典として挙げられることも多いので読んでみた。
「えっ、福澤諭吉ってこんな人?」とびっくりするような内容だった。

福澤諭吉と言えば慶應義塾大学を作った人で、『学問のすすめ』を書いた人、あとは1万円札でよくお目にかかるというくらいだろうか。“よくわからないがとにかく偉い人”というイメージしかなかった。


ところが、まず驚くのが若い頃の破天荒ぶり。まじめに勉強しているのだが、子供の頃から大酒飲みというエピソードや、お札を踏んだりお稲荷さんのご神体をただの石と入れ替えたり、適塾の塾生にさまざまなイタズラを仕掛けるなど、こんな人だったのか、と衝撃を受けた。
誰かが書いた伝記ならこうはならなかったかもしれないが、自伝なので包み隠さず書いている。そのあっけらかんとした明るさがさすがは大物、と思わされる。

また、現在の慶應のイメージから裕福でお金に困った経験などないのでは、と思っていたが父は中津藩(大分県)の下級士族*1、父や兄も早くに亡くなってお金の面では相当苦労したそうだ。
それでも借金はしない、卑怯なまねは絶対にできないなど「福澤スタイル」とでも呼ぶべき独自のスタイルがあったというのがすごい。齋藤先生は「はじめに」で

自分自身の気質をよく知っていて、それに合わせた自分の型を持っている。だから相手や状況に過度に振り回されずにすむ(P9)。

…一見覚めたように見える対象との距離の取り方が、福澤は抜群にうまい。それは、対象が自分自身であっても変わりません。自分の心とも過度にかかずらわない。それが「自分自身とうまくやっていく」ための最大の秘訣になっている(P10)。

と書いている。
それが日本人によくあるウエットさを感じない理由かもしれない。


もちろん勉強に関して学ぶことは多い。福澤は大阪の適塾で蘭学を学んでいたのだが、当時洋書は高価な貴重品。コピーももちろんないので本は基本的に手書きで写すしかない。辞書1冊をみんなで使いながら勉強していたり、あるところから借りた新しい本を返すまでの2日間に塾生全員で交代に寝起きして書き写したエピソードなどは、ものすごい熱意を感じて思わず我が身を反省してしまった。
なかでも印象に残ったのは、オランダ語を捨てて英語に乗り換えるくだりだ。(黒船来訪後、一部開放された)横浜に行った時にオランダ語がほとんどなく、看板などが自分にはまったく読めなかったことに衝撃を受けた福澤は、「これからは英語」だとオランダ語を捨てる決心をした。あれだけ必死に学んだオランダ語を捨てるには勇気が要ったと思う。実際、周りの蘭学仲間にその意志を伝えても、一緒に英語をやろうと言ったのはたったひとりだったという。ほかの人は「必要なものはみんなオランダ語に翻訳されるから自分はそれを読む」と言ったというから、この決断がいかに大きかったかがわかる。

その後さまざまな苦労をして英語を学び、それを買われて幕府で英語を読む仕事に就き、徳川幕府がアメリカに使節を送ると聞いて、つてを頼んでその一行に加わる。
決断が早く行動の人であり、世の中の流れを見る眼があったのだろう。そういう面でも勉強になる。


この本は完訳ではなく、いわゆる抄訳だ。「はじめに」によると、若き青春時代のドラマの部分を中心に採用し、後半の時代背景に基づいて語られているところはかなり略してあるという。
原文で読みたい人はこの本の底本である『新訂 福翁自伝 (岩波文庫)』などいろいろなものが出ている。

齋藤先生は『学問のすすめ』とセットで読むことを薦めているそうだ。確かに、私も先に『学問のすすめ』を読んでいたが、書いてある内容のバックボーンがわかって身近に感じたり、理解が深まったように思う。
私のアクション:勉強する時は一心不乱にやる
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読書日記:『現代語訳 学問のすすめ』

*1:今で言えば下級役人にあたる